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青天の霹靂 情報

2014.05.12 公開 ポスト

劇団ひとりの「映画のつくり方」

最終回 劇団ひとり、映画づくりに没頭する

撮影開始1週間で「早く2本目が撮りたい」と思った

――撮影に際して思い出深いシーンってありますか。

ひとり 終演後の雷門ホールで晴夫が狼狽するシーンですね。カット割りも撮影場所も事前に決めていたんですが、前日になって別の場所で撮りたくなってしまいまして。それでスタッフさんにおそるおそる相談したら、わかりましたと言って突貫工事で全部準備してくださったんです。「お前が撮りたいっていう場所を作ってやったのに、なんで使わないであっちを使うんだ」って言われても、きっと文句は言えないのに。

――たしかに(笑)。

ひとり しかも無謀にも、ワンカット撮影に変更したいと撮影監督に相談したんです。そうしたら、事前に何のシミュレーションもしていないにもかかわらず、一応動いてみましょうかって何回かトライしてくれて、うまくいかなかったら絵コンテどおり元に戻すということでやらせてもらったら、これがもう、期待以上のものが撮れたんですよ。全編通じて、これが一番好きなシーンかもしれません。

――映画スタッフの対応力ってすごいんですね。

ひとり 彼らは滅多なことじゃノーって言わないんです。お世辞じゃなくて、すごい人ばっかりですよ、当たり前なんですけど。あの人たち、そこそこ高給取りじゃないですか。

――それは知りませんが(笑)。

ひとり 厳しい世界でしのぎを削り合って、生き残っているわけですから、優秀な人たちしかいない。個性も強いし、それぞれ自分の仕事の流儀がある。だから僕の「こうやってください」って依頼に対して、必ず何かひとつ乗っけて提案してくれるんです。撮影中は助けられっぱなしでした。

――そんなすごい人たちばかりだと、畑の違うお笑い芸人という立場で現場入りする際、気負いのようなものを感じたりするのでは。

ひとり 正直、最初はこっちも「なめられちゃいけない」みたいな気持ちで挑んだんですよ(笑)。でも、撮影前のロケハンでスタッフさんに何かと相談を持ちかけてたら、僕が思ってた以上の答えを次々出してくれて、それが何回かあるうちに、すっかり心を開いてしまいました。

――聞けば聞くほど、理想的な現場だったみたいですね。

ひとり 本当に。でもこの感じって、僕が普段出ているバラエティ番組と同じなんです。自分だけが面白くやればいいやって気持ちだと、大体うまくいかない。自分以外の、隣にいるタレントの長所もなるべく引き出した方が、結局自分も助かることになる。笑いも映画も、結局そこなんだなと。映画でも、スタッフさんたちにいい「フリ」を出せば、必ずいい答え、お笑いで言うと「リアクション」を返してくれます。だから現場では、なるべくいろんな人に「どうしたらいいですか」ってフリまくりました。

――映画とお笑いの意外な共通点ですね。

ひとり もっと深いところでも、根は一緒です。映画の現場って、ものすごく準備して撮影に挑む、皆が石橋をたたいて渡っている感じなんですけど、一方で自分たちが想像していた以上の何かが生まれるのを、いつも期待していなくちゃいけない。バラエティ番組も同じで、台本はとりあえずあるんですけど、現場では化学反応が起こる瞬間を、演者とスタッフ一同がずっと待っている状態です。思っていた以上のものが生まれる瞬間の本質は、笑いも芝居も変わらないと感じました。

――じゃあ、今お笑いの現場でも、映画のことを想わずにはいられないんじゃないですか。

ひとり というか、撮影が始まって1週間たった頃に、早くも2本目が撮りたいなと思ってしまったくらいです。あんなに楽しいことはなかなかないですよ。ただ、撮りたいからって撮れるものじゃないというのは、よくわかってます。2本目が撮れるかどうかは、今回の数字次第ってことで(笑)。
 

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