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すごい酪酸菌

2022.01.29 公開 ポスト

「ビフィズス菌を腸内で死なせない…」健康長寿のカギを握る「酪酸菌」が医学界で注目される理由江田証

腸内環境は私たちの健康に大きな影響を与えます。「長寿の町」として知られる京都・京丹後市の人々を調査したところ、腸内細菌、とくに「酪酸菌(らくさんきん)」を多く腸内に持っていることが明らかになりました。

さらに最新の研究で、酪酸菌は新型コロナや花粉症にも驚きの効果をもたらすこともわかってきました。なぜ酪酸菌が免疫力を高めるのか? どうすれば悪玉菌を減らして酪酸菌を増やすことができるのか? テレビ出演多数の「腸のカリスマ」、消化器専門医・江田証さんが腸から元気になる秘訣を解説。新刊『すごい酪酸菌 病気になる人、ならない人の分かれ道』から一部を紹介します。

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注目される腸内細菌「酪酸菌」とは?

近年、さまざまな方面で話題になっているワードに「腸内細菌」「腸内フローラ」「腸活」というものがあります。生死に直結する心臓や脳だけでなく、腸が注目を集めてきているのです。実は、この腸こそが私たちの健康に大きな影響を与えているのだと、だんだんわかってきました。

日本人の腸は、小腸が長さ平均5~6メートル、大腸が約1.5メートルあり、内部の総面積を計算すると、なんとテニスコート1.5面分に相当する広さになります。これだけのものが体の中にあって、影響がないわけがありません。

そして、この腸内の環境を左右するのが、1000種類以上、100兆個以上も存在するといわれる腸内細菌なのです。彼らは宿主であるヒトと共生関係にあり、ヒトが毎日食べる食物の栄養素をエサにして増殖し、彼らがさまざまな代謝物を生成することで、人間の体に大きな影響を与えているのです。

腸内細菌は腸壁の粘膜にびっしり生息し、その総重量は約1.5キログラム。それがフローラ(花畑)のように見えるので、腸内フローラ(腸内細菌叢)と呼ばれているわけです。この腸内フローラを正しくコントロールし、改善するのが腸活なのです。

近年、世界中の研究者からこの腸内フローラに熱い視線が送られており、研究論文の数もここ10年ほどで急激に増えています。その成果もあり、腸内細菌の研究は大きく前進しました。

なかでもいま、とくに医学界で注目を浴びているのが「酪酸(らくさん)」なのです。

ビフィズス菌が腸内で死なないのは酪酸のおかげ

「酪酸」は、腸内細菌の「酪酸菌(酪酸産生菌)」が食物繊維を発酵・分解して作り出す「短鎖脂肪酸」の一種です。短鎖脂肪酸には、酪酸のほかにも「酢酸(さくさん)」や「プロピオン酸」などがあり、代謝や免疫、メンタルなどの働きをサポートしています。

短鎖脂肪酸のうち、酢酸やプロピオン酸の一部は大腸で消費されますが、大部分は大腸の粘膜から吸収されて、血流を通して全身に運ばれ、筋肉や肝臓、腎臓などでエネルギー源や脂肪を作るための材料になります。

一方、酪酸はそのほとんどが、直接、大腸の粘膜上皮のエネルギーになることがわかっています。大腸の粘膜上皮が必要とするエネルギーの約60~80%は酪酸でまかなわれているのです。

一般的に、ヒトの細胞は血液中の栄養素をエサに生きています。しかし、大腸の粘膜の細胞は、腸内細菌が作り出す酪酸をエネルギーに生きているのです。

それにはどんな意味があるのか? 大腸の粘膜上皮には、水分やミネラルを吸収し、腸のバリア機能として働く粘液を分泌する機能があります。つまり、大腸を正常に機能させるために酪酸は重要な役割を担っているということです。

さらに、最近の研究によって、酪酸は腸内フローラを健康な状態にするためにも役立っていることがわかってきました。

腸内細菌は、種類によって酸素を必要とするタイプ、必要としないタイプなどに分かれます。

たとえば、「悪玉菌」といわれるブドウ球菌などは、酸素があってもなくても生育するタイプ。「善玉菌」の代表であるビフィズス菌や酪酸菌は、生育に酸素を必要としないタイプです。

大腸内に酸素があると、それを利用して活動する悪玉菌(プロテオバクテリア門の大腸菌やキャンピロバクター菌など)が増えてしまいます。大腸内は酸素が少ないほうが健康なのです。もし人間が大腸をかぶったら窒息してしまいます。

つまり、大腸内の酸素が少なければ、酸素を必要としないタイプのビフィズス菌や酪酸菌などが活動しやすくなるということになります。酪酸は、大腸の粘膜上皮細胞の代謝を促して酸素を消費させ、「酸素を腸管内に行き渡らせなくする」ことが報告されています。この働きによって、健康な腸内フローラが保たれるといってもいいでしょう。

酪酸が腸内環境を整えてくれるからこそ、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が生きていけるのです。

関連書籍

江田証『すごい酪酸菌 病気になる人、ならない人の分かれ道』

免疫力がアップし、筋肉がつく。がん、サルコペニア、糖尿病、花粉症が改善する。さらに新型コロナの重症化にも驚きの予防効果! テレビ出演多数の「腸のカリスマ」、消化器専門医・江田証さんが酪酸菌で腸から元気になる秘訣を解説する一冊。人生100年、健康寿命は腸活でのびる。酪酸菌を増強するオリジナルレシピも掲載。

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すごい酪酸菌

「腸内環境」は、私たちの健康に大きな影響を与えます。なかでも、「酪酸菌(らくさんきん)」を多く腸内に持っている人は、長生きであることがわかっています。さらに最新の研究では、新型コロナや花粉症にも驚きの効果をもたらすこともわかってきました。なぜ酪酸菌が免疫力を高めるのか? どうすれば悪玉菌を減らして酪酸菌を増やすことができるのか? 「腸のカリスマ」の異名をもつ消化器専門医・江田証先生の『すごい酪酸菌』より一部をご紹介します。

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江田証

1971年、栃木県生まれ。医学博士。自治医科大学大学院医学研究科修了。江田クリニック院長。日本消化器病学会奨励賞受賞。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。米国消化器病学会(AGA)インターナショナルメンバーを務める。毎日、国内外から最新の治療法を求めて来院する、お腹の不調をかかえた患者を胃内視鏡・大腸内視鏡で診察し、改善させることを生きがいにしている。著書に『医者が患者に教えない病気の真実』『病気が長引く人、回復がはやい人』『おなかの弱い人の胃腸トラブル』『腸内細菌の逆襲』(すべて幻冬舎)などがある。

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