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アルパカ通信 幻冬舎部

2022.01.27 公開 ポスト

第4回 

一穂ミチ『砂嵐に星屑』/宮内悠介『かくして彼女は宴で語る~明治耽美派推理帖~』₋ 読み始めたら抜けられないほどハマる2作!アルパカ内田(ブックジャーナリスト)/コグマ部長

一日一冊読んでいるという”本読み”​​​​​​のアルパカ内田さんが、幻冬舎の刊行作品の中から「今売りたい本」を選び、そして“POP職人”としての腕を振るって、手描きPOPも作ります。

そして、アルパカ内田さんへの「オススメ返し」として、幻冬舎営業部の人気者・コグマ部長からも、一冊ご紹介。

*   *   *

元カリスマ書店員でPOP職人のブックジャーナリストが売りたい本
第4回 一穂ミチ『砂嵐に星屑

旬を過ぎ、社内不倫の"前科"で腫れ物扱いの40代独身女性アナウンサー。娘とは冷戦状態、同期の早期退職に悩む50代の報道デスク。好きになった人がゲイで望みゼロなのに同居する20代TK(タイムキーパー)。向上心ゼロ、非正規の現状にぬるく絶望している30代AD。世代も性別もバラバラな4人を驚愕の解像度で描く、連作短編集。

こんにちは。本のミチを極めたいアルパカ内田です。

ままならない運命を刻みつけた一穂ミチの文学は、上質な演劇のように鮮やかに光と影を映し出し、華麗なマジックのように瞬時に時の流れを止めてみせる。日常を赤裸々に見せつけると同時に、目には見えない世界を眼前に差し出してくれるのだ。

物語は哀愁漂う中堅テレビ局が舞台である。過酷な業務のなかで夢を追いかけ、懸命にもがき続けるスタッフたち。世代を超えて絡みあう人間模様はあまりにも際どい。そして四つのストーリーからメディアの仕事の裏側が分かるばかりか、登場人物たちのむき出しの感情が心臓の鼓動とともにヒシヒシと迫ってくる。

映像的な視点にも注目してもらいたい。大阪駅北側の再開発地区からは「砂嵐」が感じられ、あべのハルカス上層階から鳥瞰すれば雄大な平野が眺められる。地を這う目線から空を見上げればまさに「星屑」が降ってくるようだ。垂直ばかりでなく水平にも視線は流れていく。震災直後に家から会社まで3時間の道のりを歩くシーンでは、街の空気、匂いや風とともに、人生も走馬灯のように駆け巡る。なんとドラマティックなのだろう。

生と死。男と女。偶然と必然。虚構と現実。相反した要素がいつしか溶けあい調和する。細やかな描写と大胆な設定によって、当たり前の景色が崩壊して新しい価値観が生み出されるのだ。研ぎ澄まされた感性はどこまでも透明で、発せられるメッセージはとてつもなく雄弁。読み始めたら決して抜け出すことのできない底なし沼のような魅力がここにある。

アルパカ内田さん作のPOP!

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アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。

幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!

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アルパカ内田 ブックジャーナリスト

内田剛(うちだたけし)。ブックジャーナリスト。約30年の書店勤務を経て2020年2月よりフリーランスに。NPO法人本屋大賞実行委員理事で創立メンバーのひとり。文芸書をメインに各種媒体でのレビュー、学校や図書館でのPOP講習会などを行なっている。これまでに作成したPOPは6000枚以上で著書に『POP王の本!』『全国学校図書館POPコンテスト公式本 オススメ本POPの作り方(全2巻)』あり。無類のアルパカ好き。
Twitter @office_alpaka

コグマ部長

太田和美(おおたかずみ)。幻冬舎営業本部で販売促進を担当。本はミステリからノンフィクションまでノンジャンルで読みまくる。アルパカ内田(内田剛)さんとは同学年。巨人ファン。
Twitter @kogumabuchou

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