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アルパカ通信 幻冬舎部

2022.03.25 公開 ポスト

第5回

藤岡陽子『空にピース』/ 伊東潤『虚うつけの舞』₋ 様々な方向から、生き方について考えたくなる2作!アルパカ内田(ブックジャーナリスト)/コグマ部長

幻冬舎営業部 コグマ部長からオススメ返し
伊東潤『虚うつけの舞』

天下人となった豊臣秀吉によって、すべてを奪われた織田信長の次男・信雄、関東の覇者を誇る家門を滅ぼされた北条氏規。二人の落魄者の流転の日々を、哀歓鮮やかに描ききる感動の歴史小説。

一方こちらは徹頭徹尾不穏な空気が漂う、まったくピースじゃない1冊。

本能寺の変から10 年、天下人に上り詰めた秀吉は朝鮮、明の征服を目指し、まさに絶頂にあった。しかし、この小説の主人公は秀吉ではない。織田信雄と、北条氏規の物語だ。

信雄は本来であれば、父・信長から受け継ぐはずだった地位も名誉も家禄もあったが、秀吉の企みによってすべて奪い取られた身。氏規はかつて関東の覇者と言われ、その後秀吉に滅ぼされた北条一族の生き残り。ともに秀吉によって大きく運命を変えられ、今では秀吉にひれ伏す立場にある。

狡猾で幼稚、時には狂気をまとい我が世の春を謳歌する秀吉。

世が世であればと思いながら、屈辱に耐える信雄と氏規。

勝者と敗者が織りなす残酷なコントラスト。

読み進めるにつれ、読者は敗残者の無念に寄り添っている自分に気づくはずだ。そして、いつしか身体中が熱くなるに違いない。

歴史の片隅に追いやられた男たちの物語を堪能してほしい。

 

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アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。

幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!

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アルパカ内田 ブックジャーナリスト

内田剛(うちだたけし)。ブックジャーナリスト。約30年の書店勤務を経て2020年2月よりフリーランスに。NPO法人本屋大賞実行委員理事で創立メンバーのひとり。文芸書をメインに各種媒体でのレビュー、学校や図書館でのPOP講習会などを行なっている。これまでに作成したPOPは6000枚以上で著書に『POP王の本!』『全国学校図書館POPコンテスト公式本 オススメ本POPの作り方(全2巻)』あり。無類のアルパカ好き。
Twitter @office_alpaka

コグマ部長

太田和美(おおたかずみ)。幻冬舎営業本部で販売促進を担当。本はミステリからノンフィクションまでノンジャンルで読みまくる。アルパカ内田(内田剛)さんとは同学年。巨人ファン。
Twitter @kogumabuchou

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