幻冬舎営業部 コグマ部長からオススメ返し
伊東潤『虚うつけの舞』
一方こちらは徹頭徹尾不穏な空気が漂う、まったくピースじゃない1冊。
本能寺の変から10 年、天下人に上り詰めた秀吉は朝鮮、明の征服を目指し、まさに絶頂にあった。しかし、この小説の主人公は秀吉ではない。織田信雄と、北条氏規の物語だ。
信雄は本来であれば、父・信長から受け継ぐはずだった地位も名誉も家禄もあったが、秀吉の企みによってすべて奪い取られた身。氏規はかつて関東の覇者と言われ、その後秀吉に滅ぼされた北条一族の生き残り。ともに秀吉によって大きく運命を変えられ、今では秀吉にひれ伏す立場にある。
狡猾で幼稚、時には狂気をまとい我が世の春を謳歌する秀吉。
世が世であればと思いながら、屈辱に耐える信雄と氏規。
勝者と敗者が織りなす残酷なコントラスト。
読み進めるにつれ、読者は敗残者の無念に寄り添っている自分に気づくはずだ。そして、いつしか身体中が熱くなるに違いない。
歴史の片隅に追いやられた男たちの物語を堪能してほしい。
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アルパカ通信 幻冬舎部
元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。
幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!
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