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アルパカ通信 幻冬舎部

2022.06.25 公開 ポスト

第9回

越谷オサム『たんぽぽ球場の決戦』/井川意高『熔ける再び ~そして会社も失った~』―青春の煌めきに熱くなりたいか?社会の闇を覗きたいか?アルパカ内田(ブックジャーナリスト)/コグマ部長

幻冬舎営業部 コグマ部長からオススメ返し
井川意高『熔ける再び ~そして会社も失った~

創業家三代目であり大王製紙元会長・井川意高によるノンフィクション。カジノで106億8000万円を失い、会長を辞任、そして投獄された井川。その裏で画策されていた、現会長一派による“創業家排除”のクーデター劇のすべて。

一方こちらは、カジノで巨額のカネを熔かした男の物語。著者は、自身が社長、会長を務めていた時に、ギャンブルによる負債の返済に使う目的で子会社から55億3000万円を借り入れた。それが特別背任にあたるとして、懲役4年の実刑判決を受けた。

本書はその刑期満了後、韓国のカジノに向かうシーンから始まる。手元には3000万円の現金。「この種銭を元手に、今回はどこまで勝てるかな……」。懲りていない。またやった。韓国で4日間のギャンブルの果て、3000万円は9億円に。これで106億円の負けが取り戻せるのではないか……。著者の夢想は確信になり、時間をおきながら賭けを続けるが、結局全部熔かしてしまう。そして、その翌年にはシンガポールで1か月間カジノに明け暮れ、今度は4000万円を熔かす。「ギャンブルバカ一代」は、自分の身を危険極まりないエッジの先端に置き、脳髄がしびれるような勝負をしないと生きている心地がしないのか……。狂ったのはギャンブルだけではない。受刑時には獄中から手紙で指示を出し数千万円のフェラーリを次々と購入。買った車はただ停めておくだけにもかかわらずだ。本書はこんな人生を送った孤高のギャンブラーが自分を冷静に語った告白記である。そして、そのいわば放蕩記以上に面白いのが、著者の一族を大王製紙から追放しようとする一派の狡猾なクーデターの全真相。それはドラマよりも生臭く、ギャンブルよりも血がたぎる。

こんな、けっしてだれにも真似できない日々を生きる男の唯一無二の傑作ノンフィクションをぜひ!

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アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。

幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!

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アルパカ内田 ブックジャーナリスト

内田剛(うちだたけし)。ブックジャーナリスト。約30年の書店勤務を経て2020年2月よりフリーランスに。NPO法人本屋大賞実行委員理事で創立メンバーのひとり。文芸書をメインに各種媒体でのレビュー、学校や図書館でのPOP講習会などを行なっている。これまでに作成したPOPは6000枚以上で著書に『POP王の本!』『全国学校図書館POPコンテスト公式本 オススメ本POPの作り方(全2巻)』あり。無類のアルパカ好き。
Twitter @office_alpaka

コグマ部長

太田和美(おおたかずみ)。幻冬舎営業本部で販売促進を担当。本はミステリからノンフィクションまでノンジャンルで読みまくる。アルパカ内田(内田剛)さんとは同学年。巨人ファン。
Twitter @kogumabuchou

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