デフレ、デフレと騒がれていた頃は、リフレーション(緩やかなインフレを起こし景気回復へ導く)が注目されていました。しかし気がつけば景気回復もしないまま、今度は物価高と円安が迫り、生活が苦しくなる事態に――。なぜリフレ政策はうまくいかずに終わったのか。『Xデイ到来 資産はこう守れ』(藤巻健史著/幻冬舎)から一部を抜粋してお届けします。
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2012年1月、私が『なぜ日本は破綻寸前なのに円高なのか』(幻冬舎)を出版したとき、後に安倍政権のブレインになられた浜田宏一イェール大学名誉教授が、この本を書店で偶然見つけて読んでくださったそうです。私と会いたいとおっしゃってくださり、すし屋で2人で盛り上がりました。
浜田先生は「この30年間の日本経済低迷の原因を円高だと主張しているのは、君と僕だけだ」とおっしゃったのです。そして、円高修正の手段として「リフレが必要だ」とおっしゃいました。ですからその意味では、異次元緩和を推進した浜田先生はリフレ政策で円安に誘導し、経済回復につなげたかったのだと思います。
しかし、私は「先生は米国に住み、米国で教えているからリフレが自国通貨安を生み、景気回復につながると思われるかもしれませんが、準社会主義体制で市場原理が発達していない日本では、リフレでは通貨安になりません。それにリフレ政策は、『ジリ貧から脱しようとして、ドカ貧に墜ちる』政策ですので、私は反対です」と申し上げました。
リフレ政策をやれば、インフレをコントロールできなくなり、ハイパーインフレになってしまうという主張です。あのとき、浜田先生に申し上げた通りの道を日本は歩んでいるような気がします。円安は前述したような政策(税制改革、日本国債のドル建て発行、マイナス金利政策)で導けばよかったのです。
なぜ日本はリフレ政策で景気を回復できなかったのか
市場原理の発達している国でリフレをやれば、国内から高い金利を求めて海外に資金が出ていき、自国通貨を売るので自国通貨安が起こって景気は回復、デフレから脱却できていたはずです。
しかし日本は、市場が効率的でないため円が国内にとどまり、円安による景気回復が起きなかったのだと思います。
仮にゆうちょ銀行が外資だったら、預金として大量のお金が流入した場合、為替リスクをとって海外に投資したはずです。そうしないと高いリターンが得られないからです。株主の力が強い株主資本主義の国の銀行なら「高い給料を取っているのに、ほぼゼロ%の運用とは何事だ。経営者は全員クビだ」となってしまいます。
会社が株主のものとは言い切れない日本企業では「損しなければ、低いリターンであっても他社と同程度なら、経営者は安泰」なのです。だったら、あえて為替のリスクなどとろうとしません。
その結果、日本で起きたのは、円を外貨に換えての外貨投資ではなく、外貨を調達しての外貨運用だったのです。したがって、リフレをしても日本の景気回復、デフレ脱却にはつながらない。私の主張した方法で円安を導くべきだと言っていたのです。
※気になる続きはぜひ本書にて――
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続きは書籍『Xデイ到来 資産はこう守れ!』をご覧ください。
Xデイ到来 資産はこう守れ!
収まる気配を見せない、円安と物価上昇。「伝説のトレーダー」の異名を持つ経済評論家で、参議院議員もつとめていた藤巻健史さんは「これからが本番」と警鐘を鳴らします。やがて来るかもしれない「日本経済が大混乱に陥る日」に、私たちはどう備えればよいのか? 近刊『Xデイ到来 資産はこう守れ!』より、一部を抜粋します。