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アルパカ通信 幻冬舎部

2022.10.27 公開 ポスト

滝川さり『めぐみの家には、小人がいる。』/花房観音『京都に女王と呼ばれた作家がいた』―秋の読書時間に、パンチの効いた2作!アルパカ内田(ブックジャーナリスト)/コグマ部長

幻冬舎営業部 コグマ部長からオススメ返し
花房観音『京都に女王と呼ばれた作家がいた 山村美紗とふたりの男

日本で一番本が売れた年、山村美紗が亡くなった。ベストセラー作家と持て囃された“ミステリの女王”。華やかな活躍の陰に秘められた謎とは。文壇のタブーに挑むノンフィクション

一方こちらは、大作家の知られざる事実を丹念に追ったノンフィクション。

その作家には多くの「噂」があった。パーティの度にドレスを新調し、高価な宝石を身に着けていた。執筆部屋には家族すら入れず厳重に鍵をかけ、その暗証番号も度々変えた。自分以外の作家が京都を舞台にミステリーを書くことも、新聞広告で自分より目立つことも許さなかった。隣宅には西村京太郎が住み、そことは地下で繋がっていた……。

その作家は山村美紗。昭和から平成にかけて、多い年には10冊以上の新刊を出し、どれもがベストセラーになった。原作にしたドラマは高視聴率を叩き出し、高額納税者として名を連ねた。

名だたる出版社の役員たちは、美紗に嫌われたら彼女以上に売れている京太郎の原稿も貰えないとあって、美紗の前にひれ伏した。まさに「女王」だった。

本書はその美紗の生涯を、一般には知られていなかった夫、作家仲間であった京太郎の2人の男との関係から迫ったド級の評伝である。

光がまばゆいほど、濃い影を落とす。花房観音は、その影の中でまるで息を潜めるように生きていた人物の「生」を優しく照らし、かつての文壇タブーに挑む。ただし、それはけっしてスキャンダラスな視線ではなく、みずからも京都に住む作家である花房から美紗へ寄せる羨望であり、敬愛であり、畏怖でもある。

作文は得意だったが、病弱だった少女時代。何歳まで生きるかわからないなら好きなことをやると決め、大好きな推理小説を書き乱歩賞に応募し、教師を辞した。流行作家になってもけっして筆を休めることはなく、起きている時間のほとんどを執筆にあて、その最期も執筆中のホテルで迎えた……。壮絶な生き様は凡百のミステリーよりも謎めき、本作は最高の評伝である。特に出版界の人間には必読の書である。

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アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。

幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!

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アルパカ内田 ブックジャーナリスト

内田剛(うちだたけし)。ブックジャーナリスト。約30年の書店勤務を経て2020年2月よりフリーランスに。NPO法人本屋大賞実行委員理事で創立メンバーのひとり。文芸書をメインに各種媒体でのレビュー、学校や図書館でのPOP講習会などを行なっている。これまでに作成したPOPは6000枚以上で著書に『POP王の本!』『全国学校図書館POPコンテスト公式本 オススメ本POPの作り方(全2巻)』あり。無類のアルパカ好き。
Twitter @office_alpaka

コグマ部長

太田和美(おおたかずみ)。幻冬舎営業本部で販売促進を担当。本はミステリからノンフィクションまでノンジャンルで読みまくる。アルパカ内田(内田剛)さんとは同学年。巨人ファン。
Twitter @kogumabuchou

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