■世界中の猫好きたちに伝えたかったこと3つ。
リ)時間の都合もありますので、話を戻します。
廣瀬さんがこのフォトエッセー『へぐりさんちは猫の家』を通して、世界中の猫好きたちに伝えたかったことが3つあると伺っています。正確にいうと、インタビューを始める前に、同じ話を何回も何回も聞かされました。非常にうざかったのですが、幸い内容を理解することはできました。1つ目は、「環境エンリッチメント」。つまり猫の生得的行動に対して、どのように環境を整えるべきか。飼育上のテクニックや動物行動学に沿った仕組みやカタチの話ですよね。
2つ目は、綺麗な写真をこれだけ載せているわけですから、美的な部分で、デザイナーとしての役割を果たしていきたいということでしょう。きちんとした作家性が見られて、そこは好印象でした。
3つ目は、言いにくそうにしていましたが、「殺処分ゼロ」という運動に対して、デザイナーとして縁の下の力持ちになりたいというお話でしたよね。普通の家だと3匹しか飼えなくても、廣瀬さんの設計した家なら、猫にストレスが無いので、あともう2匹飼うことができるという理屈です。そして、行き場のない子猫たちの受け皿が増えるはずだと。
広)1つ目と2つ目はそうです。あなたのおっしゃるように天才なんです。ただ、3つ目が本当に言いにくいんだよ。僕は決して「多頭飼育」を勧めているわけじゃないのね。すでに多頭飼育をしている人の家があまりにもひどいことになっているから、建築家として大急ぎで治療してまわっている最中なの。そのなかで、多頭飼育がスムーズに行なえる仕組みをある程度確立できたから、そのノウハウを広めて、家のカタチそのものを変えたいと思っています。そして多頭飼育ができる条件が、具体的には金銭的な部分や人的バックアップが整っている家庭なら是非、多頭飼育をして欲しいと思うし、現実に、行き場のない子猫を受け入れるために、家を改造したいという人が最近増えているんですよ。そんな方々に、何かしらのメッセージやノウハウが届けばいいなぁと思っています。
リ)綺麗にまとめましたね。
広)綺麗にまとまりました。じゃあこのへんで終わりにしましょう。
リ)では、ここまで忍耐強く読んで下さった皆さんに、何かメッセージを。
広)ぜひこの本を買っていただいて、猫のことを深く理解してください。だって猫には人間どもにこの本を買わせる、進化論的に合目的的な理由があるのだから。
リ)はい。ありがとうございました。
広)ありがとうございました。
聞き手:リサ・ローゼンバーグ(33・写真家・浪速区)
「へぐりさんち」の様子はここでも見られます
「The Cats’House」
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