収まる気配を見せない、円安と物価上昇。「伝説のトレーダー」の異名を持つ経済評論家で、参議院議員もつとめていた藤巻健史さんは「これからが本番」と警鐘を鳴らします。やがて来るかもしれない「日本経済が大混乱に陥る日」に、私たちはどう備えればよいのか? 近刊『Xデイ到来 資産はこう守れ!』より、一部を抜粋します。
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借金が積み上がった結果……
バブル崩壊以降、日本は毎年30兆~40兆円の赤字を重ねてきました。それも発行されている国債の大部分が、財政法第4条で「建設国債は、どうしても必要ならしょうがない。でも赤字国債などとんでもない」と定めて発行を禁止されている赤字国債なのです。
一般法の上位にある「特例公債法案」を作って、財政法第4条を骨抜きにしてしまったからです。先人の知恵をないがしろにしてきたのです。
その結果、借金が積み上がってしまいました。途中で、「それはまずい」と気がついた橋本龍太郎首相(当時)は、1997年、第2条に「国及び地方公共団体の財政が危機的状況にあることを踏まえ」とある「財政構造改革の推進に関する特別措置法」を成立させました。
ところが1997年は山一證券が自主廃業し、北海道拓殖銀行、三洋証券が破綻した大変な年。財政再建どころではないと、この法案は骨抜きになり、小渕内閣のときに実質廃案となってしまいました。
そのときの国の借金は369兆円(1997年12月末)、現在の借金は1218兆円(2021年12月末)ですから、3.3倍になってしまいました。
それでもGDPが3.3倍であれば、危機度は変わらないはずですが、名目GDPのほうは1997年度の542.5兆円から2021年度の541.8兆円と減ってしまっているのです。
その結果、日本はG7どころか世界最大の赤字国家となってしまいました。
財政破綻危機で騒がれたイタリアやギリシャよりもはるかに悪い状態ですし、戦後のハイパーインフレ時よりも悪い状態です。ちなみに、このときは預金封鎖と新券発行がありました。旧円紙幣は無効になったのです。
もう税収では借金を返せない
財政の危険度は、借金額をGDP(国内総生産)と比べて判断します。大雑把に言って、GDPが2倍になれば、(もし人口が変わらなければ)国民は2倍豊かになり、国も2倍豊かになります。税収も2倍になるということです。
よく、日本人の給料が上がっていないという話を聞きますが当たり前です。日本はGDPが過去30年でほとんど増えていないのですから、賃金だって上がりようがないのです。
話を元に戻します。借金額が対GDP比で世界断トツに悪いということは、もう税収では借金を返せないということです。上のグラフにある債務残高の国際比較とは「税収で借金を返せる難易度ランキング」と言えます。
世界中にインフレが広まっていくと、今後、どこが借金過剰国かが話題になっていくと思います。
今までは、ほとんどの国でゼロ金利、またはごく低金利だったので、借金に対する支払金利の額は話題になりませんでしたが、インフレで金利が上昇すると、借金額が大きい国ほど支払金利の急増によるデフォルトが懸念されるからです。
このあたりが為替マーケットのメインテーマになっていく可能性も否定できません。
今の借金額、GDP比260%とは、戦後より高い数字です。戦後はハイパーインフレになり、その鎮静化のために預金封鎖と新券発行を行いました。旧券は銀行で新券に切り替えたのです。旧券はその後、流通不能になりましたから、タンス預金もあぶりだされたのです。
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