スティーブ・ジョブズやイチローなど、世界的な著名人も実践していることで知られる「瞑想」。心にも身体にもいい影響があることが科学的にも実証され始めていますが、とはいえ毎日、時間をとって座禅を組むのは少々ハードルが高いですよね。
そんな忙しいあなたにオススメなのが、テレビでもおなじみの齋藤孝さんが書いた『疲れにくい心をつくる すすっと瞑想スイッチ』。ハミングをする、鏡に映った自分を見る、バッハの曲を聴く……。スキマ時間で簡単にできる、気持ちを鎮めて意識を整える方法を、本書からいくつかご紹介します。
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おすすめは「無伴奏ソナタ」
音楽を演奏したり聴いたりすると、普段の意識から解き放たれ、高揚した気持ちになります。とくに抽象度が高いクラシック音楽の場合、人によっては退屈に感じるかもしれませんが、瞑想をするにはうってつけです。
クラシックの中でも、ベートーヴェンの第九交響曲や第五交響曲「運命」などは、あまり瞑想的ではありません。主題がはっきりしていて、日常に対して強い意思を送り込んでくるからです。聴く人が受け取る感覚が同じになりがちなので人気はありますが、瞑想からはその分遠ざかります。
その点、J. S. バッハの曲はスケールが大きく、宇宙的です。
「マタイ受難曲」などは、キリスト受難の物語なので感情を揺さぶられてしまい、あまり瞑想に向きませんが、「平均律クラヴィーア集」「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」「無伴奏チェロ・ソナタ」のようなシンプルな系統の器楽曲は瞑想のお伴にぴったりです。
とくに無伴奏ソナタは音楽文法の極限といえるほど透明感があり、日常の感情とは違ったレベルに誘ってくれます。
世俗的な感情よりも、神に対する敬虔な祈りといった抽象的な音の宇宙が構築されているため、瞑想に入りやすいのでしょう。
一日に何分か、バッハの音楽を聴く。
たったそれだけで、自意識や日常から解放され、心を一新できるでしょう。
「即興演奏」も瞑想にぴったり
昔キース・ジャレットがやっていた即興演奏も瞑想に向いています。
私もコンサートに行ったことがありますが、プログラムが決まっていません。それどころか、そもそも「曲」があるわけではありません。たまたまその日、キース・ジャレットが演奏する、それだけなのです。
即興演奏ではあるけれど、彼の中では必然として次の音が出てくる。CDなどでコンサートの音源を何度も聴くと、最初はぎこちなくて曲に聴こえないのですが、何回か聴いていると、だんだん心地よくなってきます。
この「普通の曲じゃない感じ」が、メロディともいえないメロディとして自分の中に入ってきて、偶然が必然に感じられてくるのです。
ジャズ・ミュージシャンのマイルス・デイヴィスもよく即興演奏をしました。とくに有名なのはフランスのヌーヴェルバーグを代表する、ルイ・マル監督の映画『死刑台のエレベーター』を観ながら吹いた曲を集めたアルバムで、これはCDにもなっています。
このアルバムは、映画のシーンごとに何テイクもあって、テーマは同じなのに、演奏するたびにマイルスのトランペットの吹き方が変わっている。「そのときの気分なのかよ」と思いますが、まさに「インプロヴィゼーション(即興)」の本領発揮で、湧き上がってくる感じがあります。
何かが湧き上がってくる瞬間とは、新しいものが立ち上がってくる瞬間です。「次にどんな音を出しても自由」という条件は、きわめて高い緊張感を伴います。
当人も計算しているわけではないので、次の音がどうなるのか自分でもわかりません。ひとつの音を吹いたら、また次の音が呼ばれる、という感じで音楽が進んでいくので、次の間がどのくらいなのかもわからない。
そうした即興性に意識を傾け寄り添う時間が瞑想です。
疲れにくい心をつくる すすっと瞑想スイッチ
スティーブ・ジョブズやイチローなど、世界的な著名人も実践していることで知られる「瞑想」。心にも身体にもいい影響があることが科学的にも実証され始めていますが、とはいえ毎日、時間をとって座禅を組むのは少々ハードルが高いですよね。
そんな忙しいあなたにオススメなのが、テレビでもおなじみの齋藤孝さんが書いた『疲れにくい心をつくる すすっと瞑想スイッチ』。ハミングをする、鏡に映った自分を見る、バッハの曲を聴く……。スキマ時間で簡単にできる、気持ちを鎮めて意識を整える方法を、本書からいくつかご紹介します。