コロナ禍で早期退職の募集が急増している昨今。業績良好な企業の「黒字リストラ」も少なくないといいます。長年、尽くした会社から、もし突然「戦力外通告」を突きつけられたら……あなたならどうしますか? 小林祐児さんの『早期退職時代のサバイバル術』は、そんな大リストラ時代を生き残るための術がつまった一冊。会社にとどまる人も、転職する人も、懐にしておきたい本書から、一部をご紹介します。
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中高年は「変化適応力」を身につけよ
さて、中高年からの活躍には、こうした環境変化への備えであり自己効力感である〈変化適応力〉が鍵になりそうだ、ということを見てきました。しかし、〈変化適応力〉と言われても、具体的にどんな力なのかイメージしにくいと思います。もう少し解像度を上げ、変化適応力の背景にある心理を見ていきましょう。
解析の結果、変化適応力の背景には、3つの促進心理があることもわかっています。
1つ目の促進心理は、自分なりの目指すべき目標を見つけて進んでいく「目標達成の志向性」です。常に自分で目標を作っていく力と、その定めた目標に向かって集中して行動していくことが含まれます。同じ仕事をするにも自分なりの目標をセットするかどうかによって、取り組み方は大きく変わってくるものです。
仕事における「目標」の重要性は、学術的にはアメリカの心理学者ロック(E. A. Locke)やカナダのレイサム(G. P. Latham)といった研究者によって提唱された「目標設定理論」が明らかにしてきました。
目標設定理論に関する研究では、曖昧な目標を立てるよりも、明確で具体的な目標を立てたほうが人の動機づけは強くなることなどが明らかになっています。目標を持つことの習慣づけが、変化への効力感にもプラスに作用しているということです。
逆に、変化適応力とマイナスの関係にあった心理が、「現状維持志向」です。これは右記の「目標達成志向」の裏返しとして見ることができるでしょう。
自分が思っている目標や負っている責任を果たせないのではないか、と「失敗」のほうに目がいってしまい、現状維持で「失敗を避ける」ということがいつのまにか目標にすり替わってしまっている、そうした状況です。
日本の中高年は怠け者なのか?
2つ目の促進心理は、「新しいことへの挑戦や学びへの意欲」です。職業人生において、ますます「学び」の大切さは増しています。そのこと自体に意義を唱える人はおそらく少ないでしょう。環境変化と技術発展の速度が速くなれば、新しいことを学び続けることの必要性は高まり続けていきます。
しかし、下の図に示したとおり、中高年になるにつれ、全く学ばない人も増え、平均の学習時間も目減りしていきます。
さらに、国際的な水準から見ても、日本の社会人は圧倒的に学習活動が少ないことが知られています。例えば、アジアの中で比べてみましょう。下の図は、パーソル総合研究所が実施した調査の結果です。
これを見ると日本はアジア・APACの中でもとりわけ学びを行っていないことがわかります。読書、研修、語学学習などあらゆる学習行動がAPAC諸国の平均よりも低く、学習行動を「特に何も行っていない」人の割合が5割近くに上っています。
中高年の「変わらなさ」の背景には、先進各国の中で最低クラスの学習習慣のなさがあるということです。
世界でも学ばない大人が圧倒的に多い日本、さらにその中でも、中高年が最も学びから離れているということを確認してきました。こうした結果を見て、「日本の中高年はなんと怠け者なんだ」と感じる人もいるでしょう。
しかし、このことを「怠惰さ」といった個人特性のせいにするのは一面的な見方です。問題の根源を「心理」に求める心理還元主義に対抗するのが本書の方針でもありました。日本人の学ばなさは、そのキャリアの歩み方によって、「学びが職場に偏っている」ことが一因です。
早期退職時代のサバイバル術
コロナ禍で早期退職の募集が急増している昨今。業績良好な企業の「黒字リストラ」も少なくないといいます。長年、尽くした会社から、もし突然「戦力外通告」を突きつけられたら……あなたならどうしますか? 小林祐児さんの『早期退職時代のサバイバル術』は、そんな大リストラ時代を生き残るための術がつまった一冊。会社にとどまる人も、転職する人も、懐にしておきたい本書から、一部をご紹介します。