日記、手紙、エッセイ、物語……。人生経験を積んだ今こそ始めたい、「書く」ことへの挑戦。でも、何をどうやって書いたらいいのかわからない、という方も多いでしょう。そんなあなたにオススメなのが、ジャーナリストで毎日新聞客員編集委員の近藤勝重さんによる『60歳からの文章入門』。テーマの設定から、文法、構成、自分らしい表現まで、読めばスラスラ書けるようになることうけあいの本書から、一部をご紹介します。
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心に響くメールの文面とは?
離職後の方も、再就職することがあるかもしれませんので、ビジネスでの必須ツールであるメールの基本フレーズは覚えておいてほしいです。
書き出しとか、お礼の文例集はすでにいろいろ出回っています。ですからここでは僕の著書についてのインタビュー取材の「お願い・依頼」のメールをいただいて、快諾したケースを紹介しておきましょう。
「ご一考願えますでしょうか」とか、「~していただけると幸いです」などと、作法通りのフレーズがあるものでも、その前にこういった文面があると心が動きますね。
「〇章の~のくだりは、とりわけ印象に残りました」
ちゃんと読んでもらえている。しかも僕が一番力を入れて書いたところに反応してくれている……。いや、こういうメールには弱いものです。
実際に高倉健さん(1931~2014)の追悼本を書いたときには、取材依頼のメールを各メディアからたくさんいただきましたが、先に紹介したような文面には即OKしていました。
メールは手紙に比して、時候の挨拶などはなじみませんし、美辞麗句より依頼や案内の趣旨を明瞭に伝えるべきでしょう。
ただ、そうは言っても誠意が伝わり、好印象を与える文面が望ましいのはメールも同様です。
とくに次の3点は心得ておくべきかと思われます。
(1) 美しく飾った言葉より、誠実さを込めた文面であれ
(2) 誤字、脱字はもちろん、紋切り型の表現は要チェック
(3) 自分のことより、うかがうべきは相手の近況
とりわけ先方の力を頼みとするようなメールの場合、細心の注意を払ってほしいですね。
変換ミスにも気をつけよう
一般にメールは書き言葉なので、日常の会話の言葉よりきつく響く感があります。そこで、「どうですか」は「いかがでしょうか」、「よければ」は「よろしければ」とか「さしつかえなければ」に直し、「すみませんが」は「申し訳ありませんが」などとすべきでしょう。
誤字に関しては、僕が毎日新聞の専門編集委員をしていたとき、パソコンで変換ミスをして、専門変種委員と原稿に打ってしまい、部下の女性から「これでいいんですか」と笑われたことがありました。
熟語などでも、正しいと思い込んでいる漢字の一字が違っていた、なんてことありますよね。ここも問答形式でちょっとためしてみましょう。
問 次の熟語を正しく直してください。
・個別訪問
・出所進退
・上位下達
・人口呼吸
・現状回復
答 戸別訪問/出処進退/上意下達/人工呼吸/原状回復
パソコン上での打ち間違いもあるでしょうから、タイプミスのチェックは怠らないでください。
使い古され、すっかり衰弱した言葉もあります。常套句に多いですね。
・黒山の人だかり
・冷水をあびせられたような
・抜けるような青空
・雨がしとしと降る
・太陽がキラキラ輝いている
あるいは、
・子どもは正直だ
・スポーツマンはさわやかだ
など、社会通念化した決まり文句も避けたほうがいいですね。それが文章を書く際の共通の感覚でしょう。
60歳からの文章入門
日記、手紙、エッセイ、物語……。人生経験を積んだ今こそ始めたい、「書く」ことへの挑戦。でも、何をどうやって書いたらいいのかわからない、という方も多いでしょう。そんなあなたにオススメなのが、ジャーナリストで毎日新聞客員編集委員の近藤勝重さんによる『60歳からの文章入門』。テーマの設定から、文法、構成、自分らしい表現まで、読めばスラスラ書けるようになることうけあいの本書から、一部をご紹介します。