「痛いの痛いの、飛んでけ」は言わない、やる気スイッチより「楽しさスイッチ」、絵本を「1万冊」読み聞かせる、すべての基礎は「1けたの足し算」……。4人の子どもを全員、東京大学に合格させたことで注目を集めた佐藤亮子さん。著書『一点集中 ムダ取り勉強法』は、そんな佐藤さんが実践してきた子育て法、勉強法を一挙公開した一冊です。その中からぜひ実践したいノウハウを、みなさんにご紹介します。
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言葉を子どもの体に入れる
これまで何回も、「3歳までに絵本を1万冊読み聞かせする」ことを提唱してきました。講演などでお目にかかる方から、「私も1万冊読み聞かせています」と言われるのはうれしいことです。
ただ、1万冊という数字が独り歩きをしてしまっているような気がするので、ここでもう一度、その目的と方法を紹介しておきます。
絵本を読み聞かせする目的は、言葉を子どもの体に入れることです。
人は他の動物と違って言葉を使って考え、コミュニケーションを取って生活します。子どもは耳に入った言葉をすぐに話すことはできませんが、自分の耳に入った言葉しか口から出すことはできません。人は聞いたことのない言葉で話すことはできず、聞いたことがある言葉でのみ話し、考えるのです。
お母さんはお子さんが生まれてすぐから、抱っこして散歩しながら、「空が青いね」「寒くなってきたね」などと話しかけます。そのとき子どもの反応はないのですが、言葉は耳に入り脳に蓄積されてやがて言葉となって出てきます。
私は言葉の多い子どもほど物事をしっかり考えることができると思ったので、なるべくたくさん読み聞かせをして言葉を耳に入れようと思ったのです。
1万冊という数字は、夫が「司法試験は1万時間勉強したら合格すると言われている」と言ったのを聞いて、1万という数字には意味があると思ったからです。
また、長男が生まれた時期、私は家で子どもと1対1で過ごしていて、ただ1日が過ぎていくことに多少の不安を感じていました。そんな生活に具体的な目標になるものが欲しかったので1万冊という数字を設定したのです。
ちなみに1万冊というのはのべの数字で、1万種類の本を読み聞かせることではありません。同じ本を10回読んだら10冊と数えていいのです。
このようにして言葉の力を育てると国語力に繋がります。どの教科も国語の力が基になるので語彙の多さは学力の基になると思います。
親の肉声で童謡を聞かせよう
本の読み聞かせとともに、童謡を歌って聞かせていました。童謡とは子どもが歌うために作られた歌のことで、教科書にのせるために作られた唱歌やわらべ歌などがあります。
私は小さいころ、母に童謡を歌ってもらっていました。私が母になったら子どもに童謡を歌ってあげようと思っていたので始めたのです。
これも絵本と同じように3歳までに1万曲を目標にしました。最初はくもんの「母と子のうたカード」と別売りのカセットテープを購入して車の中でかけて子どもたちに聞かせ、次に童謡を集めた本を買って、その中から気に入った曲の歌詞カードを作ってそれを見ながらアカペラで歌いました。
現在は、「CD付き童謡カード 1~3」(くもん出版)などがあるようです。最近書店で見ましたが、イラストが昔のままで懐かしかったです。
絵本の読み聞かせは子どものそばにいなくてはいけませんが、童謡を歌うときは子どもが少し離れた場所で遊んでいても歌うことができます。遊びに夢中になっていても、耳には届いていますから大丈夫。子どもが聞いているのか聞いていないのかわからなくても、親が歌って楽しければいいと思います。
最近ではスマホに歌のアプリがあるようですが、大事なのは親の肉声で歌うことです。歌手の方の声はあまりにも上手すぎるせいか、なぜか子どもの耳を通り過ぎてしまうようです。下手でもいいので親の肉声で歌うと子どもの心に響くと思います。
童謡が作られた時代の言葉と現在使っている言葉は違う場合もあるので、小さい子どもたちには理解できない言葉が使われているかもしれません。また、昔と今では生活様式が違うので歌詞の意味がわからない部分があるかもしれません。
でも、童謡が今の時代にはそぐわないとは言えないと思います。それは童謡に込められた感性は今も昔も不変だと思うからです。
童謡には春は小川のせせらぎの音を聞き、初夏には稲の苗を植え、秋になると紅葉が真っ赤になり、冬は雪が降る情景が歌われています。
成長した後にふるさとを思い出す感情は時代を問わず不変です。小さいときには何も感じなかったとしても、大きくなったときに紅葉を見て、「本当に真っ赤だな」としみじみと感じ、曲を理解することがあると思います。童謡を歌うことはその基盤を作ることです。
童謡の歌詞には含蓄があります。そして一つひとつの言葉に深みがあり品格があります。その歌詞がメロディーにのせて歌われるので頭に残りやすいのだと思います。
一点集中 ムダ取り勉強法
「痛いの痛いの、飛んでけ」は言わない、やる気スイッチより「楽しさスイッチ」、絵本を「1万冊」読み聞かせる、すべての基礎は「1けたの足し算」……。4人の子どもを全員、東京大学に合格させたことで注目を集めた佐藤亮子さん。著書『一点集中 ムダ取り勉強法』は、そんな佐藤さんが実践してきた子育て法、勉強法を一挙公開した一冊です。その中からぜひ実践したいノウハウを、みなさんにご紹介します。