アクティブな高校時代
高校時代、演劇部のお話しも伺います。
「高校に入ったら、あたしより成績のいい人ばっかりだし『よっしゃ!もう勉強はいいや!やりたいことをやるぞ!』ってなりました。高校デビューですね(笑)。念願の演劇部にも入ったし、バンドもやってたし、チアリーダーもやったし、頼まれたら合唱部にも参加したし、ダンス部でヒップホップ踊ったりもしてたし、もうやりたい放題でした。演劇部は、高校入って最初の部活紹介で、サングラスをかけたお兄ちゃん二人がアコースティックギターを持って登場して、おもむろにフリッパーズギターかなんかを歌いだしたんです。歌ってるだけで終わっちゃって一抹の不安はよぎったんですけど、高校入ったら絶対演劇やるんだって決めてたから、入部しようと部室に行ったんですね。そうしたらさっきのお兄ちゃん二人がいて『ウソ!?入んの!?』みたいに言われて。それで聞いたらその二人以外はいないんですよ、部員が。その二人が3年生で、2年生は0人、その年の入部希望者はあたしだけ……要するに基本演劇は作ってなかったんですね(笑)。でもそのお兄ちゃん二人がとても良い先輩で、せっかく入ってきてくれたんだから演劇を作ろうって言ってくれて、先輩の一人がオリジナル台本を書いて、7、8人出る芝居を作りました。演劇部じゃないラグビー部の人とか引き入れて友達にも手伝ってもらったりしながら、学校の多目的室を借りて公演したんです。はちゃめちゃでしたけど『演劇やった~!』って気持ちになれましたね。そうこうして1年生は終わったんですけど、3年生が卒業しちゃうから、部員はあたし一人だよと(笑)。と思ったら一人だけ同級生が入ってくれて二人になったんです。でも二人じゃ出来ることも限られるしどうしようと悩んでいたら、札幌には合同公演というシステムが存在していることを知りまして、札幌中の高校の演劇部の人たちが集まって一緒に作品を作って公演するという、素晴らしいシステムなんです。部員の少ないあたしたちには、ちゃんと本格的にお芝居が作れるまたとない機会ですから、やってみよう!って参加しました。他の学校の人と仲良くなって、素敵な時間を過ごしましたね。3年生になるときには、あたしたちみたいに部員の少ない演劇部が4校集まって一つの作品を作って、新入生歓迎公演でその4校を毎週ツアーで回ったりもしました。学区も違ったりする4校なのに、先生方もすごく協力してくれて、今思えばとても感謝ですね。そんな普通の演劇部じゃ体験できないようなことばかりさせてもらった高校時代でした」
大学時代もやっぱりアクティブ!
大学時代のお話しも聞いてみます。
「大学はやっぱり演劇がやりたくて、早稲田に行くって決めたんです。高校3年間はまったく勉強してなかったから、一年予備校行かせてくれって親に頼んで、一日も休まず勉強しました。それで無事受かって演劇サークルに入ったんです。あたしの入ったサークルは体育会系なところがあって、新入生の根性試しにひたすら走らせたりするんです。みんな吐きながらやってたし、逃げだす人も多いんですけど、あたしはやるって決めたらやんなきゃいけないって思う性格なので、辛いとも思わず続けてましたね。ほんとに演劇漬けのサークルで、単位が取れずに卒業できない人も多いんですけど、あたしはちゃんと卒業するって決めて、しっかり単位も取って卒業しました。とにかく自分の決めたことに関してはきっちりやりきろうっていう思いがあるんです」
敬江さんはすごいガッツの持ち主なんです。15年くらい前、敬江さんと僕が共演したbird’s-eye viewの公演でも、敬江さんのガッツに驚かされるエピソードがありました。
「そうそう、あのときは仮退院で舞台に立ちましたね。劇場に入って仕込みの途中に胃が痛くなって、その頃たまに胃痙攣おこしてたんですけど、耐えられずに近くの病院で注射を打ってもらったんです。それでも痛みが治まらずに、衣装合わせの途中に意識を失ってしまったのね。そこから記憶がないんだけど、救急車で運ばれて、そうしたら腸閉塞おこしかかっていて、腸の動きが止まってそれで胃が痛くなってたみたいで、胃に原因がある訳じゃないから注射も効かなかったんですね。超高熱が出て点滴とかされながら、あたしは『明日本番が~』みたいなことを言うんですけど、お医者さんには『腸閉塞は一歩間違えたら死ぬかもしれないんだよ!』と怒られて。次の日、様態が回復して意外と行けるかもってことになって、お医者さんのOKも出たんですけどね。奇跡の回復でした(笑)」
敬江さんはmiel[ミエル]というレーベルをやっています。これは数名の劇作家にテーマに沿った短編テキストを依頼して、敬江さんが構成・振付・演出、出演もする企画なのです。その第三回公演が7月の終わり頃からあるのですが、僕もテキスト提供で参加させていただいています。最後に敬江さんにそのmiel[ミエル]のことについて伺いました。
「それまで振付の仕事もたくさんやってきて、ボツネタみたいなものが自分の中に溜まってきてたんですね、このアイディア面白いんだけどなぁと思っているけど日の目を見なかったネタがたくさんあったんです。あとそれとは別に自分のやってみたいアイディアも頭の中にストックされてて、これ発表しないともったいないな、と思っていたんです。それで『あ、自分でやればいいんだ!』って思って始めたのがmiel[ミエル]なんです。自分の頭の中にいっぱいになったイメージを一旦クリアーにしないと次に行けないような気がしたんですね。あたしは台本書けないし、あたしが好きな劇作家に好きな言葉をもらって、構成と振付と演出に専念しています」
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