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ジェーン・スー『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』×東浩紀『弱いつながり』刊行記念対談

2014.08.14 公開 ポスト

「私たちは、『男と女の違い』をもっと知るべきじゃなかろうか」

最終回 “若さ”に価値を置かない社会にしていこうよ東浩紀/ジェーン・スー

若さに価値を置くと人生の末路は悲惨になる

ジェーン 一方で、女性のほうも「若くてかわいければチヤホヤしてもらえるはずだ」という考え方が、“呪い”のようにつきまとっています。この前、麻布十番でご飯を食べていたら、隣のテーブルに、自分の給料では買えないようなバッグを持った、沢尻エリカの劣化版みたいな20代の女性2人がいたんです。もちろん働き続ける気はないようで、何人かいる彼氏の中で誰と結婚するかで今後が決まる……みたいな話をしていたんですが、だんだんと「本命の彼が連絡くれない」とか「最近会ってくれない」とか、西野カナみたいな話になってきた。自分の若さをレバレッジに男を天秤にかけているつもりで、自分が天秤にかけられていることには気付いていない。そして、異性からチヤホヤされることが自分の価値だと思っているんだなと感じました。

 僕が一番苦手なタイプの女性ですね(笑)。

ジェーン で、そのあと深夜のTSUTAYAに行ったら、今度は隣に座ったひと目で富裕層とわかる50代の女性2人が、結婚して中2の子供もいるんだけど、旦那がかまってくれないから年下の男の子と不倫をしている。私を女として扱ってくれるから……という話をしていたんです。その口調はさっきの20代の女の子たちと同じで、チヤホヤされることが自分の価値だと感じているようでした。50代になって旦那と子供がいてもそうなのか……と、愕然としたんです。“異性からチヤホヤされること=自分の価値”だと見誤ってしまうと、いつまで経っても満たされないのかなと思いました。

 第1回でも言った通り、“歳を重ねるほど価値が低くなる”とされてしまう状況が、女性の人生設計をすごく複雑にしていますよね。解決策を端的に言うと、“若くてかわいい子がチヤホヤされる状態”をなくしたほうがいいと思います。特に日本では、少女文化やアイドル文化が発達しすぎていて、女性の価値のピークを早めに設定しすぎている。下手すると10代がピークと言われる。それをもとに人生設計しろというのはあまりに酷ですよ。

ジェーン 男性でも、最近はその傾向がありますね。

 だから、これからは男性もますます“若くてかっこいいイケメン”が性的に消費されて、それが男性の行動や人生設計を狂わせることになるでしょう。僕は基本的に、男性も女性も、若い人が不当に高い価値を持つのはよくないと思っています。若いというだけでレバレッジが利いちゃうと、努力しなくなるし、ものを考えなくなる。社会をうまく回すためには、若いときは価値を低くしておかないと。

ジェーン 自分がそういう価値基準から外れているなと思う人は、容姿や女子力ではない他の力を磨いておくと、40代くらいで形勢逆転できるので、「気を長く持て!」と言いたいですね。若さとかわいさがなくなったときに、胆力を鍛えておかなかった女性たちの末路はわびしいものになっています。

 

別学出身者ふたりからの究極のアドバイス

 あと、若い世代の人たちに言っておくとしたら……“男女共学に通っておけ”ということかな(笑)。

ジェーン それは私も思います。私は高校と大学が女子校だったんですが、社会に出て共学出身者との差を思い知らされたのは、彼女たちは男性に対してある意味幻滅していて期待がないので、男性のあしらい方をよく知っているんです。私たちが「男子が掃除しませーん!」という中学生のメンタリティで止まっている間に、彼女たちは“どうしたら男子に掃除させられるか”の方法を身に付けていた。この違いは大きいと思います。

 僕も、中高が男子校で、東大も男女比が10:1くらいなので、男性集団のコミュニケーションルールしか知らずに生きてきてしまった。女性をモノとして見るか、逆に神格化してしまうかのどちらかで、生身の対等な存在として接することができなかったんです。男性と女性では、コミュニケーションのルールがまったく違うんだということは、お互い知っておかないといけないと思いました。

ジェーン 私も、「男性社会は、男性に有利なことばかりの社会なんだ」と絶望していても仕方がないことにこの歳になって気付きました。とりあえずマジョリティのルールに従わないと、通る話も通らなくなる。大切なのは、たとえば仕事のシーンであれば、男性有利とされている仕事社会に女性たちがなるべく長く居座ってその数を増やすこと。そうやって、少しずつそのルールを変えていくこと。でも、そのためにはまず彼らのゲームのルールを知ることが絶対に必要なんです。

 もしかすると、ここまで話してきたことって、男女の問題というよりは、僕たちが男子校/女子校出身者であるがゆえのすれ違い、というだけなのかもしれませんね(笑)。
(おわり)

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ジェーン・スー『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』×東浩紀『弱いつながり』刊行記念対談

7月24日に『弱いつながり』と『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』を刊行したばかりの東浩紀さんとジェーン・スーさんが「男と女の生き方」について語り合いました。意外な初顔合わせの対話は、お互いを探り合いつつ、始まりました。(構成:福田フクスケ 撮影:牧野智晃) 

 

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東浩紀

一九七一年東京都生まれ。作家、思想家。株式会社ゲンロン代表取締役。『思想地図β』編集長。東京大学教養学部教養学科卒、同大学院総合文化研究科博士課程修了。一九九三年「ソルジェニーツィン試論」で批評家としてデビュー。一九九九年『存在論的、郵便的』(新潮社)で第二十一回サントリー学芸賞、二〇一〇年『クォンタム・ファミリーズ』(河出文庫)で第二十三回三島由紀夫賞を受賞。他の著書に『動物化するポストモダン』『ゲーム的リアリズムの誕生』(以上、講談社現代新書)、『一般意志2.0』(講談社)、「東浩紀アーカイブス」(河出文庫)、『クリュセの魚』(河出書房新社)、『セカイからもっと近くに』(東京創元社)など多数。また、自らが発行人となって『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド』『福島第一観光地化計画』「ゲンロン」(以上、ゲンロン)なども刊行。

ジェーン・スー

1973年、東京生まれ東京育ちの日本人。作詞家/ラジオパーソナリティー/コラムニスト。音楽クリエイター集団agehaspringsでの作詞家としての活動に加え、TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」をはじめとするラジオ番組でパーソナリティーとして活躍中。

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