マニュアルどおりやれば誰でもうまくいく
どうしてぼくがこんなにハウツーが好きかというと「マニュアルどおりにやれば、誰でもうまくいく可能性が高い」からです。料理の素人がハンバーグを作るなら、まずはレシピを参考にすべきでしょう。
レシピ本を読まないまま、「ハンバーグの作り方がわからない……」と言って悩んだり、失敗して「自分には料理の才能がないんだ」と落ち込むのはムダなんです。
また、本を参考にするにしても、「食べてくれる人の笑顔がいちばん大事」という心得について書かれた本や、「レシピどおりに作るだけじゃなく、自分で考えるオリジナリティが大事」という応用的な本を読んでも、意味がないわけです。
それらも大事ではありますが、今の課題解決に適した本を読まなければ、現状は変わりません。
何かを成功させるためのコツは、「最初は自分の頭で考えない」ことです。多くの場合、すでにノウハウは存在するので、まずはそのとおりにやってみるんです。本当に自分の頭で考えないといけない領域までは、なるべくハウツーを使って最短距離で進むのがおすすめです。
まずはハンバーグのレシピを覚えて、作れるようになってから、本質的な価値を見出すことや、自分の頭で考えることをしたほうがいいんです。どこかで絶対に、自分の頭で考えないといけないシーンはやってくるので、そこまでは最短距離で人の知識に乗っかったほうがいいはずです。人類はそうやって進化してきたので……。
というわけで、「やりたいことを見つけて、行動できるようになりたい」という人向けのレシピみたいなものを目指して、この本を書きました。
具体的に、本書『物語思考』を読んでほしい人は、
- 「行動したほうがいい」のはわかるけど、なかなか行動できない人
- やりたいことは特になく、あったとしても自信がない人
- 何をやればいいかわからないけど、情熱的で充実した人生を送りたい人
みたいな感じです。
そういう人のために、構成としては、以下のステップで説明していきます。
(1) 自分を制限している頭の枷をとる
(2) なりたいキャラクター像を設定する
(3) そのキャラを実際に動かす
(4) そのキャラが活きる環境を作る
(5) そのキャラで「物語を転がす」
もちろん、こんな本を書くからには、「『物語思考』を多くの人が実行して、こうなってほしい」という理想像があります。それは、シンプルに「多くの人がプロセス自体を楽しめるようになっている状態」です。
幸せ=成功、ではない
ぼくは、人生で目指すべきは「自分が幸せな状態であること」だと思っています。これに関して、異論を持ち出す人は少ないはずです。みんな、幸せなほうがいいはず。
ただ、多くの人は、幸せになる=成功する、と考えがちです。
「成功する」とは、辞書的な意味だと、「普通では困難な目的が成し遂げられること」を指します。たとえば「お金持ちになる」とか「大きな会社の社長になる」とかですね。
それはそれで素敵なことではあるんですが、それ自体が幸せにつながるかどうかはわかりません。というのも、その状態は「ゴールを達成した」だけだからです。
極端な例を出しますが、たとえば会社で出世して社長になるのが夢だという人がいたとします。毎日激務で、プライベートも犠牲にして、同僚から疎まれながらも出世街道を突き進み、いろいろな人を蹴落として社長になったとして……、それが「幸せか」と言われると、ちょっとわかりません。
しかしぼくらは、「成功は、苦労して努力して、苦難の道を乗り越えて、たどり着くもの。だからこそ幸せなんだ」というふうにイメージしてしまったりします。なんとなく「苦労の対価として成功があり、成功すると幸せがくる」みたいな図式をイメージしているのかもしれません。
しかし、「いい大学に入るぞ」とがんばって合格したにもかかわらず、受験で燃え尽きてしまって精神的に落ち込み続けた大学生活を過ごす人もいますし、一生働かなくていいほどのお金を手に入れたはいいものの、日々の退屈が苦痛で仕方がない、という人もいます。
つまり、ゴールに到達し、ある意味で成功したとして、それが必ずしも幸せにつながるわけではないということです。
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