幸せとは、今(プロセス)が充実している状態
何かを成し遂げるのに、苦労や嫌なことがあるのは当たり前です。ぼくは会社経営やサービス作りをしているわけですが、その活動のうち7~8割はやりたくないことや憂鬱なこと、面倒なことです。
しかし、「この先にきっといいことがあるから今は我慢する」という感覚で取り組んでいるわけではありません。どちらかと言うと、「日々、嬉しいことや喜びも、嫌なことや苦労も、どちらも無数にある」ことを、そのまま受け入れているような感じです。
プロダクト作りで言えば、日々、大変なことが起こり、苦しみ続けている一方、商品が売れたことや、お客さんが喜んでくれることに伴う、ものすごく大きな嬉しさを感じられる瞬間もあるわけです。
そして、そのような喜びと苦しみが混ざり合った日常こそが、もっとも充実感があり、幸福度の高い過ごし方だと、ぼくは捉えています。
「1年間ずっと嫌なことをやり続けて、なんとかゴールにたどり着いたら、その先はずっと幸せ」みたいに、パチッと切り替わるものではないんです。
つまり、何が起ころうとも「今が充実している」と感じられる状態こそが、目指すべきものだと思っています。
この本では、「物語思考」の考え方をインストールしてもらうことで、ゴールにたどり着くかどうかよりも、「今の状態が楽しい」「今やっていることが充実している」と感じられる人が増えるといいなと考えています。
これは、単に快楽を得るための手法とはまったく異なる話です。おもしろい作品を観たり、ゲームを楽しんだり、おいしいものを食べたり、好きなものを買ったりすることで、人間は快楽を得られます。
そういった快楽はお金で買えますが、「一人のお客さんが5000円の商品を買ってくれた」という喜びは、お金では買えません。それが、仲間と一緒にがんばって、知恵を絞って得られた結果であれば、なおさら嬉しいんですね。
そういう「今」があるからこそ、幸せを感じられるわけです。
成功者ではなく、幸せな人を多くする本
その意味で、この本は一般的な「成功本」ではないですし「自己啓発本」ともちょっと違います。
本書で言いたいのは、自分を高めたり成長させたりする、というよりも「思考の組み立て方を少し変えるだけで、人生が生きやすくなるし、幸せな状態に移行することができる」ということです。
成功する人を増やしたりするのは大変かもしれませんが、幸せは自分の状態を変えるだけなので、実現しやすいと思っています。また、不幸を感じている人がいきなり自分を100%の幸せに持っていくのは難しくても、100の不幸が80になって、最終的に50くらいになるのも、立派な前進だと思っています。
ということで、まとめると、『物語思考』は、
- 今に充実感を持てるようになり、幸せになる人を増やす
- そのための方法を紹介する
- その方法とは、考え方をずらしたり、生きやすい道を見つけたりすること
- 実践しやすいように具体的な内容にする
という本だよ……という話でした。少しでも、やりたいことを見つけたい人や、行動できないと悩んでいる人の参考になれば幸いです。