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アルパカ通信 幻冬舎部

2023.09.27 公開 ポスト

織守きょうや『隣人を疑うなかれ』/相場英雄『サドンデス』- 現代社会の闇を描いたミステリ2作!アルパカ内田(ブックジャーナリスト)/コグマ部長

幻冬舎営業部 コグマ部長からオススメ返し
相場英雄『サドンデス

金銭面で厳しい生活を送ってきたが、ある
女性との出会いを機に人生を好転させてい
く21歳の理子。墓穴を掘って会社に解雇さ
れた元バイヤーの小島は、彼女のSNSを
覗く度に嫉妬心を募らせ、やがて殺意をも
抱き始めるのだが……。

一方、こちらは現代の暗部に光をあてた傑作ミステリ。

主人公は女子大生・理子。うつ病の母の世話をしながら場末のガールズバーで働き、金銭的に厳しい暮らしを強いられている。ある日、客の女から誘われ、条件のいいラウンジへ転職。すると収入も急増し一気に暮らしぶりは好転、そのキラキラした日常をアップするSNS には数万人のフォロワーも付いた。

反面、理子を一方的に妬むアンチも急増。会社をクビになったばかりの小島という中年男(かつては老舗百貨店のバイヤーで、今は日々の暮らしにも困窮している)も、理子に勝手な憎悪を募らせる。そんな折、都内では無差別殺人が相次いだ。各事件の容疑者に関連はなく、模倣犯のしわざと思われたが……。

成功していく者と落ちていく者。富む者と貧しい者。両者を区切る境界線は細くて脆い。そのわずかな線上で両者はもつれあい、一歩足を踏み外せば即座に深い谷に落ちる。その姿はまさに「サドンデス」なのだ。

SNS の功罪。格差と分断。著者は現代社会の底に横たわる問題を抉り出し、スリリングな小説に仕上げた。

これは誰かの物語ではない。今を生きる我々全員が抱える現実なのである。

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アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。

幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!

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アルパカ内田 ブックジャーナリスト

内田剛(うちだたけし)。ブックジャーナリスト。約30年の書店勤務を経て2020年2月よりフリーランスに。NPO法人本屋大賞実行委員理事で創立メンバーのひとり。文芸書をメインに各種媒体でのレビュー、学校や図書館でのPOP講習会などを行なっている。これまでに作成したPOPは6000枚以上で著書に『POP王の本!』『全国学校図書館POPコンテスト公式本 オススメ本POPの作り方(全2巻)』あり。無類のアルパカ好き。
Twitter @office_alpaka

コグマ部長

太田和美(おおたかずみ)。幻冬舎営業本部で販売促進を担当。本はミステリからノンフィクションまでノンジャンルで読みまくる。アルパカ内田(内田剛)さんとは同学年。巨人ファン。
Twitter @kogumabuchou

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