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アルパカ通信 幻冬舎部

2023.12.27 公開 ポスト

重松清『はるか、ブレーメン』/伊東潤『一睡の夢 家康と淀殿』- 2023年を振り返り「なんとしても勧めておきたい!」小説2作アルパカ内田(ブックジャーナリスト)/コグマ部長

幻冬舎営業部 コグマ部長からオススメ返し
伊東潤『一睡の夢 家康と淀殿

時は「大坂の陣」の数年前―。宿命と因縁
に翻弄され、矜持と野心の狭間で揺れ動く
家康と淀殿は、やがて雌雄を決する最期の
戦いに、それぞれ活路を見出そうとするが
……。先に尽きるのは家康の寿命か、豊臣家
の命脈か

一方こちらは、その結末は知っているのに、読み終えるのがもったいないと思える人間ドラマの傑作。関ケ原から数年後。将軍職をすでに秀忠に譲った家康は六十代半ば。その生涯最後の仕上げとして徳川幕府を未来永劫続く盤石な体制にしようと策を練っていた。最大にして唯一の敵となる豊臣側には今は亡き秀吉の側室・淀と、まだ十三歳の嫡男・秀頼。

子供の頃、人質だった家康は、明日の命すら危うい身からのしあがっていく中で、信長や秀吉といった「巨星」が墜ちるのを目にしている。どれだけの栄華を極めてもすべては「一睡の夢」とその儚さを自分に言い聞かせてきた。そして今ようやく手にした天下だが、ここで誤れば元来豊臣側についていた有力大名たちが秀頼を担いで幕府の存在を危うくする可能性があった。

一方の淀もこれまで祖父(信長)、実父(浅井長政)、継父(柴田勝家)と、肉親が次々と非業の死を遂げ、今は秀頼を生かすことだけが、最後の希望だ。両家とも血脈を息子に繋がなければ、家名は即座に絶たれる。大坂城に籠る淀に、じりじりと迫る家康。ともに知恵を絞り、相手に見えない刃を突き付ける……。そして、誰もが知る最終幕。

両者の思いに多くの読者は涙するはずだ。ドラマではここまで深くは描けない家康と淀の内奥。あらためてこの大河小説をこの年末年始に読んでほしい!

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アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。

幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!

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アルパカ内田 ブックジャーナリスト

内田剛(うちだたけし)。ブックジャーナリスト。約30年の書店勤務を経て2020年2月よりフリーランスに。NPO法人本屋大賞実行委員理事で創立メンバーのひとり。文芸書をメインに各種媒体でのレビュー、学校や図書館でのPOP講習会などを行なっている。これまでに作成したPOPは6000枚以上で著書に『POP王の本!』『全国学校図書館POPコンテスト公式本 オススメ本POPの作り方(全2巻)』あり。無類のアルパカ好き。
Twitter @office_alpaka

コグマ部長

太田和美(おおたかずみ)。幻冬舎営業本部で販売促進を担当。本はミステリからノンフィクションまでノンジャンルで読みまくる。アルパカ内田(内田剛)さんとは同学年。巨人ファン。
Twitter @kogumabuchou

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