幻冬舎営業部 コグマ部長からオススメ返し
黒木亮『マネーモンスター』
一方、こちらは金融の世界でのスリリングな攻防に息をのむ1冊。
「カラ売り」とは株主から借りた株式を売り、当該株式の株価をシビアな財務レポートの発表などで下落させたのち株式を買い戻し、現物を元の持ち主に返して差益を得る投資手法。本作はその専業ファンドを運営する男たちが主人公の金融エンタテインメント小説だ。
3話あるが、圧巻は「地銀の狼」。元来は優良地銀であるあかつき銀行の支店で、行員の自殺が発生。同支店では行員の鬱病や退職が相次いでいた。しかも、新興の住宅メーカーと組んだ高リスクの不動産融資も多く、支店長の指示のもと違法行為も横行していた。情報をつかんだファンド側は丹念な調査を重ね、数々の詐欺行為を白日のもとに晒す。一気に株価は下落するが……。
儲けたい客に巧みに付け入るモンスターたち。常に被害に遭うのは知識がない者や高齢者。一度獲物を手にしたらすべてを吸いつくす様子はまさにアリジゴクだ。本書では巧妙な騙しのテクニックがいくつも明らかにされ、読者はいつの間にか十分な金融リテラシーが身に付くという最高のおまけもある。
現在、書店店頭で売れている投資関連書籍との並売も期待できる。東証の高値更新に沸くのもいいが、まずはこの小説で現実を知ってほしい。
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アルパカ通信 幻冬舎部
元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。
幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!
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