英会話、資格の勉強、ダイエット、禁煙など、始めたいのにできない人には共通の傾向がある……! 行動科学マネジメントの第一人者、石田淳さんが誰がやっても成果を出せる実践的メソッドで「始めかた」を指南する幻冬舎新書『始める力』より、一部を抜粋してお届けします。
折れ線ではなく、累積グラフで評価する
曖昧さを徹底的に排除する行動科学マネジメントでは、物事の評価に「数値化」が欠かせません。
当然のことながらグラフも多用します。しかし、いわゆる折れ線グラフではなく、累積グラフを好んで用います。
たとえば、ある営業スタッフの成績が、「先月は7件の契約が取れたけれど、今月は3件だった」としましょう。
そのときに、ただの折れ線グラフなら、「今月は先月よりダメだ」となります。
これだけ経済が冷え込んで、右肩上がりの成長など望めないのですから、前の月より成績が振るわないことがあるのは当然です。にもかかわらず、「今月は先月よりダメだ」という思いは、その営業スタッフに重くのしかかります。まるで、自分がどんどん悪い方向へ向かっているように錯覚してしまうのです。
グラフをつくっている上司は、それで部下が発奮してくれると考えるのでしょう。しかし、結果は逆で、部下を潰すことになっていきます。
でも、行動科学マネジメントで用いる累積グラフなら、そうはなりません。
「先月7件取れたうえに、今月もう3件が加わった」と、グラフは伸びる一方。そこには成長を続ける自分を見つけることができます。言うまでもなく、自己効力感も高く保つことができます。
あなたが始めようとしていることについて、その進捗具合を正しく知ろうと思ったら、数値化は必須です。そのときに、できる限り累積で評価していきましょう。
「昨日よりもできなかった」
「ここのところ不調だ」
などとネガティブな感情を増幅させるのではなく、累積グラフを使って全体量が増えていることを評価してください。
もし、累積グラフが一目盛りも伸びていかないというのであれば、それはあなたにまったく向かないのですから、すぱっとやめればいいのです。
チェックリスト活用法
行動科学マネジメントでは、「チェックリスト」をかなりの頻度で活用します。それによって、さまざまな認知のゆがみや曖昧さが排除されるからです。
これまで何度も述べてきたように、私たち人間は「事実と違う思い込み」でさまざまな判断をしています。それは人間の特性であり、しかたのないことです。
でも、チェックリストがあれば、そういう状況にあっても、自分をより客観的に計測したり、観察することができます。
あなたが始めようとしていることが、本当にあなたに適しているかどうかも客観的に判断できます。
具体例を挙げましょう。
私の知人男性の目下の悩みは、「恋人が資格魔だ」ということです。
仕事に熱心な彼女が、少しでも自分の将来に有利になればと、次から次へと資格を取るのですが、どれ1つ、実際には生かし切れていません。そのため、彼女の焦りは募り、また意味もなく新しい資格に挑戦するということを繰り返しています。
デート中も「勉強しなくちゃ」とイライラしている彼女に、いつの間にやら2人の関係もぎくしゃく。会っていても楽しい気持ちになれないのだとか。
おそらく、この女性は「始める内容」を間違えているのです。
もちろん、間違えること自体は誰にでもあることで、どうということはありません。問題なのは、間違っているのに続けてしまっていることです。
フットワーク軽く、いろいろ始めることは素晴らしいことです。向くも向かないも、始めてみないことにはわかりませんから。
しかし、始めたからには自分で答えを出さなければなりません。
すなわち、続けるべきか、やめるべきかという答えを。
前述したように、人は一度手にしたものを手放したがらない生き物です。その特性は、上手く作用すれば「良い行動を継続する」ということになります。しかし、間違ったものを手放さずにいれば、本当に必要なものをつかめません。
なにかを始めようというとき、あるいは、始めたいことがいくつもあって整理がつかないとき、チェックリストで客観的に自分を見つめてください。
- これを始めるべきだと思う理由は?
- 始めるメリットは?
- 始めたことによるデメリットは?
- どんな環境が必要か?
- 邪魔するライバル行動はなにか?
- 行動分解するとどうなる?
- まずはどんな行動を取るべきか?
チェックリストの項目は自由に決めて結構です。
本書の巻末に、チェックリストの例をいくつか載せておきました。それらを参考に、あなたが始めたいことを上手にサポートする「自分流チェックリスト」をつくってみてください。
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始めかたや行動科学マネジメントについてもっと詳しく知りたい方は、幻冬舎新書『始める力』をお求めください。
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