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勝手に!裏ゲーテ 街場の旨いメシとBar

2024.07.18 公開 ポスト

#52

キミも一緒に痺れてみないか? 高田馬場編相場英雄

<使用機材>RicohGR3,SonyRX0M2

私が高田馬場、早稲田エリアに仕事場を構えて二〇余年経過した。ラーメン激戦区、そして新しい商業ビルが建ったことで、大量のランチ需要を賄おうと同エリア周辺は新規店が増加中だ。

そんな中、いつものようにランチはどこにしようかと悩んでいると、地元の友人から有力情報が寄せられた。

〈アイバさん、痺れ系好きだよね?〉

 

もちろん、クイ気味にその通りと即答した次第。しかし、教えられた屋号に聞き覚えはない。聞けば昨年出店したばかりだとか。

閑話休題。人間が感じる味覚には大きく分けて五つの基本味があるという。〈甘味〉〈酸味〉〈塩味〉〈苦味〉〈うま味〉とされる。私はここに〈痺れ味〉を加えたい。そう、新たに足を運んだお店は、痺れに痺れるのだ。

前置きが長くなった。お店の推しメニューは〈担担面〉。辛くて痺れる中華の人気メニューだ。おいおい、ちゃんと推敲したのかと言うなかれ。大半の日本のお店での表記は〈担々麺〉だが、こちらは中国語表記の〈担担面〉(大事なことなので指摘しておく)。

こちら汁あり担担面。絵面見ているだけで汗が出る。
定番・四川麻婆豆腐。辛さ以上に痺れがくる(滝汗必至)。

担担(担々)は四川の名物料理で、六〇年近く前、赤坂の超有名レストラン創業者が日本人向けにアレンジして発売した汁あり担々麺が有名だ。こちらのお店に倣い、芝麻醬(胡麻味噌)と花椒(はなさんしょう)、辣油を使った汁ありの一杯(本場は汁なしが主流)が日本全国に広がったという。

 

定番となれば、食材を提供するメーカーも商機を逃すまいと業務用のペーストやら他の調味料を製作し、店舗に提供する。これは個人的な意見(偏見)だが、こうした業務用食材を使うことで劇的に原価が下がるため、〈どこに行っても同じような味〉が生まれ、日式中華の担々麺が均一的なテイストになったのでは、と推察していた。

早速店を訪れてみた。店の扉を開けた瞬間から、この店、タダモノではないと悟った。芝麻醬や花椒の香りが鼻腔を刺激し、食べてもいないのに薄っすらと汗をかく感じなのだ。

実際に〈汁あり〉を初オーダー。着丼した瞬間から浮き出た汗の粒が大きくなり、食べ進めるうちにハンカチで何度も顔を拭く事態に発展した。

そう、実に辛いのだ。そして最初の辛味のパンチの後に、痺れ味がとめどもなく追い打ちをかけてくる。こうなると箸が止まらない。そしてスープを掬うレンゲもノンストップだ。

卓上には〈辣油〉〈花椒〉のボトル。お好みでもっと刺激を(自己責任で)。

お店によれば、芝麻醬は白胡麻とピーナッツを長時間焙煎したものだとか。辣油や花椒にしても、独自に素材をチョイス、ブレンドした自家製だとか。業務用の味に慣れた私の舌は完全にノックアウトされたのは当然の帰結だった。

こちらのお店、最近急増中の〈ガチ中華〉とは一線を画す。近所には中国各地の地方料理の専門店(日本語メニューなし、日本人客少ない)が急増しているが、こちらは中国人オーナーと日本人シェフの強力タッグで運営している。中国各地の料理を本物の調味料と確かな腕で調理し、提供しているのだ。担担面以外にも麻婆豆腐や涎鳥、水餃子など中国各地の定番メニューが楽しめる。

担担面と双璧、鉄板の涎鳥。いくらでもビール飲めちゃう危険物。
映えの側面ではちょっと弱め。だけど、モッティモティの皮が最高の水餃子。
夜メニューの一つ、キャベツの炒め物。シンプルだけど、滋味深い一皿。

聞けば、お二人は広尾の超有名中華料理店の出身とか(私は未訪問)。そりゃ、ウマいわけだ。こんなテキストを書いていたら、また痺れたくなってきた。いや、大袈裟ではなく、常習性ヤバ目の一杯なのだ。

例によって屋号は記さない。高田馬場駅から徒歩で三分ほど、だが、ややわかりづらい場所にある。だがこのエリアで担担面(もう一度、ここ大事)と表記するお店は少ないので、少し調べれば辿り着けるはず。

さあ、キミもおじさんと一緒に痺れてみないか?

もちろん、お酒も充実。紹興酒、白酒飲み過ぎ注意(膝にきます)。
期間限定ランチメニュー。桜エビの葱油和え麺。奥行きのあるタレが病みつきに(原稿公開時提供されているかは不明)。
夜の限定メニュー。宫保虾球(なんて読むのかは不明=筆者いい加減)。四川の唐辛子、花椒等々、伝統料理とか。文句なしにウマい。
夜のコース、〆の麺(限定)。白湯面。発酵した漬物と数多の出汁素材のミックス。人生初めての味、もちろん昇天。

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勝手に!裏ゲーテ 街場の旨いメシとBar

食い意地と物欲は右に出るものがいない作家・相場英雄が教える、とっておきの街場メシ&気取らないのに光るBar。高いカネを出さずとも世の中に旨いものはある!

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相場英雄

1967年新潟県生まれ。元時事通信社記者。主な著書に『震える牛』(小学館文庫)、『血の轍』、『KID』(ともに幻冬舎文庫)、『トップリーグ』  『トップリーグ2/アフターアワーズ』(ともにハルキ文庫)。近著は『血の雫』(幻冬舎文庫)、『レッドネック』(ハルキ文庫)、『マンモスの抜け殻』(文藝春秋)、『覇王の轍』(小学館)、『心眼』(実業之日本社)、『サドンデス』(幻冬舎)、『イグジット』(小学館文庫)『ゼロ打ち』(角川春樹事務所、2月下旬発売)。

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