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スタンフォードの眠れる教室

2024.06.16 公開 ポスト

朝からシャキッとしたいなら、スムージーより「具だくさんの味噌汁」冷たい飲み物はむしろ眠気の原因に西野精治

睡眠不足から不眠症、夜ふかし、いびきまで、まさに現代病ともいえる睡眠のトラブル。スタンフォード大学医学部教授・西野精治さんの『スタンフォードの眠れる教室』は、そんなあなたのお悩みを科学的エビデンスをもとに解決へ導いてくれる一冊。睡眠の誤った常識をくつがえし、眠りの研究の最前線がわかる本書から、内容の一部をご紹介します。

「冷たい飲み物」はむしろ眠気を誘う

朝、すっきりしたいから冷水を飲む……。これは一見、良さそうですが、実験結果からは冷たい飲み物が眠気を誘い温かい飲み物が覚醒のスイッチをオンにすることがわかっています。

起床時の水分補給に水を飲むのは構いませんが、キンキンに冷えた水であれば少量にとどめるべきです。

体の芯を温めて覚醒するために、朝の飲み物は温かいものを選びましょう。コーヒーを飲む人が多いと思いますが、いい目覚めにしたいなら、アイスコーヒーよりもホットコーヒーを。

ホットコーヒーを飲む女性の写真

ちなみにコーヒーや紅茶などについては、午前中でも昼間でも、ホットのほうが覚醒効果が期待できます。味噌汁などはかなり体を温めますし、発酵食品由来の効果も期待できます。

 

シャワーを浴びたり入浴したりすれば確実に体温は上がりますが、思い出してほしいのは、体温は上がれば下がるということ。トカゲやヘビのような変温動物でない限り、ホメオスタシスには逆らえません。

ぬるめのお湯での入浴では、副交感神経を刺激して交感神経を抑制する効果もあります。だからこそ眠気が出て入眠には役立ちますが、午前中の入浴では、いったん体温が上がった後の、体温下降期に覚醒スイッチはオフになってしまいます。

温泉旅館に連泊して、「とことんのんびりするぞ!」という場合を除いて、朝の入浴はやめておきましょう。体温変化をあまり起こさず、目覚めを良くするには、「ぬるめのシャワーを短時間」というのをお勧めします。

 

また、冷水で手や顔を洗うことも有効です。入眠のためには皮膚温を上げて深部との体温差を「小さく」し、覚醒のためには皮膚温を下げ体温差を「大きく」するのが大切

早朝の起床前の時間帯から深部体温が上がってくるので、手や顔を冷水で冷やすことによって皮膚温を下げ、体温差をさらに「大きく」するという狙いです。冷たい水はリフレッシュにもなります。

 

運動も確実に体温を上昇させますが、これも入浴同様の性質があります。すなわち激しい運動をして体温を上げすぎると、一時的にはシャッキリ覚醒しますが、1時間半から2時間ほどで「元に戻そう」という働きで体温が下がり、眠くなってしまうのです。

朝ランニングをする習慣を持つ人は多いと思いますが、「良い目覚め」という観点からいうと、全力を出すのはやめておきましょう。汗をかかない程度が目安です。ただし、その習慣で問題がない人は無理にやめる必要はありません。

高齢者の場合はウォーキングにとどめておいたほうがいいでしょう。ヨガやストレッチのようなゆるやかな有酸素運動は、目覚めを良くする、ほど良い運動といえます。

朝食には「具だくさんの味噌汁」がいい

温かいものを摂取すると深部体温が上がります。ホットコーヒーだけでもいいのですが、できれば朝食をとりましょう。体温が上昇するだけでなく、代謝も上がります。

朝の太陽光は、体内時計に「朝だ!」と知らせてリセットさせるものですが、朝食も然り。ずれやすい体内時計を、太陽光と朝食でしっかりと合わせて体のリズムを整えれば、夜のより良い入眠につながります。睡眠と覚醒はコインの裏と表のように一体になっています。睡眠の問題を抱える人たちの話をうかがうと、その不眠は朝の生活習慣から始まっていると思うことが多いです。

  • 体温が上がる
  • 代謝が上がる
  • 体内時計が整う
  • 体にリズムが生まれ、自律神経も整う
  • 1日の始めにエネルギー補給ができる

こうした効能を考えれば、朝食は睡眠にとって「いいことずくめ」といえます。

 

アメリカでも日本でも美容と健康を謳うスムージーが流行しましたが、私がお薦めする朝食メニューは「具沢山の味噌汁」です。大きめに切った大根や人参など、しっかり噛む食べ物を入れるといいでしょう。

噛むというのは筋肉を使う「運動」。噛んで味わう咀嚼そしやくは、感覚神経の上行枝じようこうしへの刺激にもなり覚醒刺激を引き起こします。

具沢山の豚汁の写真

固形のエサを「よく噛んで食べたマウス」と、粉末状のエサを噛まずに食べた「丸呑 みマウス」を比較した実験があります。

「丸呑みマウスは昼夜のメリハリがなくなり、活動すべき時間に動かなくなる」「丸呑みマウスは1日中少しずつ食べるようになり体重が増える」という結果でした。さらに丸呑みマウスは、海馬の神経細胞が再生しにくくなっていた──つまり忘れっぽくなっていることがわかったのです。

ぽっちゃりして忘れっぽいネズミはキャラクターなら愛嬌がありますが、人間では微妙です。

 

味噌汁やスープなどの汁物で体温を上げ、大きめの具をしっかり噛んで朝食のメリットを最大化しましょう。

関連書籍

西野精治『スタンフォードの眠れる教室』

寝られなくても大丈夫! 科学的エビデンスで長年の悩みを解決 究極の覚醒を手に入れろ 睡眠の誤った常識を覆す、眠りの研究最前線

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スタンフォードの眠れる教室

睡眠不足から不眠症、夜ふかし、いびきまで、まさに現代病ともいえる睡眠のトラブル。スタンフォード大学医学部教授・西野精治さんの『スタンフォードの眠れる教室』は、そんなあなたのお悩みを科学的エビデンスをもとに解決へ導いてくれる一冊。睡眠の誤った常識をくつがえし、眠りの研究の最前線がわかる本書から、内容の一部をご紹介します。

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西野精治

スタンフォード大学医学部精神科教授、同大学睡眠・生体リズム研究所(SCNラボ)所長。医師、医学博士。株式会社ブレインスリープ最高研究顧問。

1955年大阪府生まれ。1987年、当時在籍していた大阪医科大学大学院からスタンフォード大学医学部精神科睡眠研究所に留学。突然眠りに落ちてしまう過眠症「ナルコレプシー」の原因究明に全力を注ぐ。

1999年にイヌの家族性ナルコレプシーにおける原因遺伝子を発見し、翌2000年には研究グループの中心としてヒトのナルコレプシーの主たる発生メカニズムを突き止めた。

2007年、日本人として初めてスタンフォード大学医学部教授に就任。睡眠・覚醒のメカニズムを、分子・遺伝子レベルから個体レベルまでの幅広い視野で研究している。

2019年、ブレインスリープを創業。現在は最高研究顧問を務めている。

1963年にウィリアム・C・デメント博士により創設された「スタンフォード大学睡眠研究所」は、世界の睡眠医学を牽引しており、数多くの睡眠研究者を輩出していることから「世界最高の睡眠研究機関」と呼ばれている。

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