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ストレスと適応障害

2024.07.17 公開 ポスト

肯定・応答・共感 心の「安全基地」をつくる3つの習慣岡田尊司

会社に行きたくない、不安やイライラが増えた、自信がなくなった……。そんなあなたの心のトラブル、もしかしたら「うつ」ではなく「適応障害」かもしれません。精神科医・岡田尊司さんの『ストレスと適応障害』は、いま急増している適応障害の特徴と、すぐに実践できる対処法をわかりやすく紹介。一部を抜粋しますので、心が疲れていると感じている方はお早めにご覧ください! 

「安全基地」な関係を維持するために

あなたは、安全基地をおもちだろうか。安全基地というのは、外から与えられるもの、努力しても自分ではどうしようもないもの、と思われるかもしれない。小さな子どものときは、確かにそうだろう。親があなたの安全基地であったかどうかは、あなたのせいではなく、親の性格や事情に左右される。

しかし、大人になると、誰かのせいにばかりはしていられない。安全基地というのは、自分で育て、手に入れていくものであり、一度手に入れてもメインテナンスをしていく必要があるからだ。

幸運にも、あなたをすべて受け入れ、愛してくれるパートナーに恵まれたとしても、その幸運に甘えてばかりいると、そのうち愛想を尽かされることになる。

パートナーシップとは、相互的な、もちつもたれつの関係である。一方的に、「私の安全基地になってよ」と要求するばかりでは、相手は嫌気がさしてしまう。

ではどうすればよいだろうか。安全基地となってほしかったら、自分も相手の安全基地になる必要がある

「安全基地」になる条件1. ポジティブな反応

安全基地の第一条件は、まず相手の安全を脅かさないということである。安全を脅かす最たるものは、攻撃だ。相手の非を責めたり、感情的に怒ったりすることが多すぎると、その関係は「安全基地」ではなくなっていく。いくら本人のためにいっているつもりでも、結果は同じになってしまう。

ポイントは、ネガティブな反応を減らし、ポジティブな反応を増やすということだ。

ネガティブな反応をするクセがある人は、相手がいったことに7まで同意でき、3だけ違っても、「違う」と考えてしまう。相手から何かいわれると、まず「いや、違う」と反応する。何かアドバイスや注意をされると、「でも」と言い訳を考えてしまう。

「いや違う」「でも」といった思考が、その人の幸せや可能性を邪魔している。そこを変えてみると、まるで違ってくる。「いや違う」といいそうになったら、同意できる点のほうに、まず目を注ぐようにする

「確かにきみのいう通りだ。あなたがこういったのは、まったくその通りだと思う」と、肯定的な同意から入るということが大事だ。

 

「でも」とすぐ言い訳をしてしまう人にとって、人生を変えるいい方法がある。それは、「武装解除法」と呼ばれる方法だ。その方法は実に簡単で、効果抜群だ。誰かから何か気にくわないことをいわれたら、「でも」といわずに、「私もそう思っていたんだ」と答えるだけでよい。

もう昼の12時よ。いい加減起きたら」と文句をいわれたとしよう。その場合、「うるさいな。休みの日ぐらい寝かせてくれよ」という代わりに、「僕もそろそろ起きようと思っていたんだ」と答える。

それだけで、対人関係や気分、意欲や生き方まで変わっていく。実際、これはうつの人を治療するのに使われる認知行動療法の技法の一つでもある。

条件2. 応答性

もう1つは、応答性を高めるということだ。応答性とは、相手が求めてきたら、応えるということである。相手が何かしたら、こちらもリアクションする。相手がしていることに、まず関心を向け、一緒に反応する。これが基本だ。 

子どもを育てるときも、応答性は非常に大事だ。反応を増やすだけで、子どもとの関係は安定しやすい。子どものあしらいが上手な人をみればすぐにわかることだが、応答が豊かで、回数も多い。子どもを相手にするときは、無口ではダメなのだ。

もう1つ忘れてはならないのは、応答性とは、あくまでも相手が求めてきたときに応えることだということである。

求めてもいないことを、こちらから一方的に押しつけたり、やらせたりすることは応答性ではない。それは支配やコントロールだ。そうなると相手は窮屈に感じ、安全基地として機能しなくなってしまう。

条件3. 共感性

3番目は、共感性を高めるということだ。共感性とは相手と気持ちを共有し、相手の立場になって感じるということである。共感性を高める秘訣は、結果ではなくプロセスに目を注ぎ、プロセスを評価する言葉を使うように心がけることだ。

「100点はすごいな」ではなく、「一生懸命勉強していたのは、すごいな」のほうが共感的な言い方なわけだ。たとえ60点と結果が振るわなくても、共感的な言い方は、変わらずに使える。それは、結果に左右されないということであり、逆境から守ることにつながる

関連書籍

岡田尊司『ストレスと適応障害 つらい時期を乗り越える技術』

うつの患者は百万人以上いるが、実はその多くは「適応障害」である。環境の変化になじめなかったり、対人関係がうまくいかずに生じる心のトラブルで、自信や意欲がなくなったり、体調不良、不登校、出社困難、依存症などの問題として表れる。過敏な人だけでなく、人一倍前向きな人もかかる、もっとも身近な精神疾患だ。「うつ病」と誤診されて治療すると余計に悪化し、長引く場合も。ではどうすれば改善するのか? どうにもならない問題や悩みを抱え込んだとき、いかに対処すればいいのか。すぐに実践できる方法を、百戦錬磨の専門医がわかりやすく紹介。

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岡田尊司

1960年、香川県生まれ。精神科医、医学博士。東京大学哲学科中退。京都大学医学部卒。同大学院高次脳科学講座神経生物学教室、脳病態生理学講座精神医 学教室にて研究に従事。現在、京都医療少年院勤務、山形大学客員教授。パーソナリティ障害治療の最前線に立ち、臨床医として若者の心の危機に向かい合う。 

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