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髪を明るく染めると伸びてきた時に根元が黒くなる。その状態のことをプリンになってきたなんて言い方をする。

最後に髪を少し明るくしたのは昨年だったはず。
そこから髪が伸び、根元に暗い色が出てきても、明るくした色が明るすぎる訳ではなかったのと、私の地毛がもともと真っ黒ではないことが合間ってか、なんとなくグラデーションのような雰囲気になっていた。
4月期の連続ドラマに入る前に、綺麗に染め直した方がいいなと思っていたけれど、そのグラデーションが逆にいいね! とメイクさんの判断で、髪は染めずに撮影に入った。
連ドラとなると2.3ヶ月は髪型を変えることは出来ない。むしろキープしなければいけないので、クランクインと同じ髪型を保つため、前髪は伸びやすいのでメイクさんに切ってもらったり、根元が伸びてきたら染めに行ったり、毛先を整えたり、髪の成長スピードと撮影スケジュールを天秤にかけて対応したりする。

 

昨年から放置のプリンを通り越したグラデーションの評判が良く、ここまできた。昨年から半年以上経っているけれど、どの作品も今の感じで! となるところをみると、グラデーションはなかなか使い勝手がいいのかもしれない。メイクさんは演者の髪型が被らないように考えるし、俳優部からするとキャラクターに合った髪型を提案するし、監督のイメージも大切だ。グラデーションで通ってきたのは偶然なのか、被らなくて重宝されるのか。面白いこともあるものだ。

衣装合わせに行くと、メイクや髪型、ネイルの確認もする。
次の役は回想シーンもあるので、根本的に変えるかどうかは撮る順番にもよる。例えば現代が明るい髪色の場合、回想時代はアレンジして雰囲気を変えるか、黒スプレーで対応するか、かつらをかぶったり、ウィックをつけるか、そのあたりになる。
撮影スケジュールで時間をかけられるかも重要になってくるので、イメージとスケジュールとのにらめっこ。臨機応変に考えていくことになる。

そんな中で次の作品ではまたまたメイクさんが「今の色の感じいいですねぇ。」と気に入ってくれた。すると監督は「この感じはいいけど、でも全体を明るくしてもらいたいですねぇ。ロケ場所暗いし。」とのこと。
要するに明るくしたいけど、プリンがいいってことですね。了解しました。ではそのように美容師さんにオーダーしようではありませんか。

クランクインはすぐなので、あらかじめ衣装合わせの翌日に予約しておいたいつもの美容院へ。
「愛美ちゃーん!今日はどんな感じ?」
「このプリンの感じのまま全体はもっと明るくしたいのですが、、」
「・・・なるほど。綺麗に染めないほうがいいってことね」
「はい。自分にかまってない感じがよくて」
「了解! いいかんじにするから安心してね!」

いつも役に合わせたオーダーをするので、リクエストの中で人物像を伝える。ここ数年ずっとお願いしているNさんは毎回必ず、「いい感じにするから安心してね!」と言ってくれる。
Nさんがオーダーを整理して、アシスタントさんに伝える。アシスタントの方が2人がかりで髪に薬剤を塗ってくれた。

「プリンにするってオーダーは初めてです!」
「あはは。そうですよね。スマホの画面が割れてもなおさない人だそうです。」
「あーーーなるほど‼︎」
キャラクター像を話したときに監督から出てきたワードをそのまま伝えると、みんなすぐにイメージを持ってくれた。
「スマホの画面が割れてもなおさない人」はどうやら共通認識を持ちやすいようだ。

15年ほど前にも、役に合わせてプリンをオーダーしたことがある。地方での撮影で、クランクイン直前に監督の意向でプリンにすることになった。
ホテルの近くの美容院に行きオーダーするも、完成系はあまりうまくいかなかった。
プリンに見えないということで、さらに根元を黒く染めることにした。
「大丈夫です! やっちゃってください!」
役の為と思い何の懸念も持たずにオーダーしたけれど、それからその根元の暗くした部分は明るい色が入りにくくなってしまい、綺麗に染められるようになるには2年ほどかかってしまった。
それはそれで困ったもので。その後の作品に合わせたキャラクターをつくるために支障が出てしまった。Nさんは、そういう今後のこともちゃんと考えて応えてくれるので、とても有り難い。

美容院の皆さんのお陰で綺麗に仕上がったプリン。
「新しい挑戦をありがとう!」なんて言ってくれて、私の仕事である役作りって、外見に関しては本当に皆さんに支えてもらって出来上がるものだなぁと改めて思いました。

【喜】夕方になるとみんな川辺に集まって夕涼み。カップル越しのスカイスリーを眺めて「いい景色だわ〜」っと思いながら歩く仕事帰り。

現代の役に合わせていたジェルネイル。
回想シーンではナチュラルな爪に戻したい。撮影スケジュールの都合で、今夜現代パートを撮り終わり、明日の回想シーン撮影は早朝集合。ネイルサロンに行ける時間がないので、今から爪を削って除光液にひたして、アルミホイルに巻いて、、自分で頑張ってみます。

俳優の仕事って細かいことが色々あるのでした。

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いつまで自分でせいいっぱい?

自分と向き合ったり向き合えなかったり、ここまで頑張って生きてきた。30歳を過ぎてだいぶ楽にはなったけど、いまだに自分との付き合い方に悩む日もある。なるべく自分に優しくと思い始めた、役者、独身、女、一人が好き、でも人も好きな、リアルな日常を綴る。

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佐津川愛美

1988年8月20日生まれ、静岡県出身。女優。
Instagram http://instagram.com/aimi_satsukawa

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