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勝手に!裏ゲーテ 街場の旨いメシとBar

2024.11.18 公開 ポスト

♯56

遠くたってかまわない ひたすら食って笑う旅もいいじゃないか 南部編相場英雄

<使用機材>SonyRX100M5,BMW220iCoupe

九月の当欄で港町の旅に触れた。今回はその第二弾であり、二年前のバイク旅の続編でもある。

二年前の東北バイク旅は、天候の急変という抗えない事情で後半日程を泣く泣くキャンセルした。今回はリベンジとばかり、前回行けなかったエリアを訪れ、いつものように食べて飲んで、地元民とじっくり膝を交えて話し込んできた。

目的地は青森県東部の大きな港町、八戸市だ。港町を舞台にした小説の構想を練り、人情や風土を肌で感じることが最大の目的だ(いや、遊びではないので)。

東京都心の仕事場を早朝に発ち、常磐道、三陸道をひたすら北上すること約八時間半。昼過ぎに目的地である八戸市に到着した。

たった二行で説明したが、行程は約八〇〇キロもある。ベクトルを西方向に向けると、広島市くらいになる。車好きの筆者でも疲れを感じる距離のため、一般の方は飛行機か新幹線での旅をお勧めする(当たり前だ)。

前回、旅を中断した三陸の海岸線を見たかったので、自家用車で走り続けた。二〇一一年の東日本大震災以降、私は東北の沿岸を訪ね続けてきた。ここ数年、コロナ禍や仕事の忙しさにかまけ、沿岸に行く機会が激減した。今回は何度か高速道路を降り、港の風景や逞しく復興を果たした町を歩き、あの日の事、そして復旧から復興への過程を思い出しつつ、地元の人たちと言葉を交わした。

さて、今回の旅のメーンイベントは、二年前の旅で訪れた名居酒屋だ。市内中心部にある〈れんさ街〉という小さな飲食店がひしめき合うエリアにあり、地元客でほぼ満席だ。大盛りのお通しを食べながら、抜群の海鮮をオーダーした。

養殖物は一切使わないという女性店主が捌く魚介類は、お世辞抜きで抜群(しかもべらぼうに安い)。例によって店名は記さないが、どうしても行きたいという向きは、ネットで検索の上(ほとんど載っていないけど)、事前の予約を強く推奨する。

お任せお刺身盛り合わせ。右前段から鯖の炙り、イカ、タコの白子、ホタテ、マス。上段右からカンパチ、中トロ、ヒラメ(エンガワも)。 市内の商業施設で食べた海鮮丼とは、全く段違いのレベル感(個人の感想です)。
宮古産の天然ホヤ。もはやフルーツ。嫌な匂いなど一切なし。海水を含んだ〈汁〉まで完飲。ホヤの概念が変わった。
説明書きにある通り、ガチ昭和感満載の横丁。酔っ払いが飲み込まれる街。
 

八戸には全国、いや世界から観光客を吸い寄せる魚介類販売メインの大型商業施設や、週に一度開催される名物朝市がある。

今回の旅では朝市を覗いてみようと考えていたが、カウンター席で隣り合わせになった地元水産加工会社の若社長によれば、〈人が密集しすぎて歩くことさえ困難〉、〈駐車場待ちで一時間はザラ〉〈海産物はたいして=以下自粛〉……等々の情報をいただき、訪問を取りやめた。

ちなみにこの居酒屋のあと二軒スナックをハシゴしたが、ママさんや常連さんたちも若社長と同意見。八戸ならではの海産物を楽しみたいなら、地元民向けの居酒屋が最強だと強く推薦された次第だ。

名居酒屋の近隣もこの通り。こういう小径、ついつい歩いてしまうんだなぁ。
刺身でもいける新鮮なイカを丸ごと。ワタを炙った名物〈ゴロ焼き〉。日本酒があっという間になくなる。お隣はここに白米をダイブさせる荒技を披露されていた。

あちこち旅して感じるのは、港町は一見さんでも快く迎えてくれるという点だ。〈来る者拒まず去るもの追わず〉の気風なのだ。

さてタイトルに南部と記したのは、今回の旅は八戸から十和田市、そして岩手県の盛岡市へと転戦したから。南部とは、江戸時代の南部藩のことで、大まかに言えば現在の岩手県の中部から北部、そして青森県の右半分が南部エリアとなる(左は津軽)。

盛岡は第二の故郷であり、友人がたくさん住んでいる。南部ツアーのシメは、盛岡の老舗で。総走行距離は約一六〇〇キロ。車ならあちこち立ち寄れるし、市街地から離れたお店への移動も楽ちん。まあ、万人にはお勧めできませんが。

二日酔いの強い味方、朝ラー(午前7時から営業)。カツオ、サバ、イワシと三種類の節を惜しみなく使ったスープ。荒れまくった胃に染み渡る一杯。
2年前、悪天候で行けなかった十和田市現代博物館にて。モダンアート大好きおじさんは私です。
盛岡の友人たち(書店員さん、ラジオのDさん)と市内で一番古い焼肉店へ。かれこれ十年以上のお付き合い。当然、お酒がガンガンなくなるわけで。
この肉質で超お手軽価格。いやはや、盛岡クオリティ恐るべし(精肉店のレストラン)。

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勝手に!裏ゲーテ 街場の旨いメシとBar

食い意地と物欲は右に出るものがいない作家・相場英雄が教える、とっておきの街場メシ&気取らないのに光るBar。高いカネを出さずとも世の中に旨いものはある!

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相場英雄

1967年新潟県生まれ。元時事通信社記者。主な著書に『震える牛』(小学館文庫)、『血の轍』、『KID』(ともに幻冬舎文庫)、『トップリーグ』  『トップリーグ2/アフターアワーズ』(ともにハルキ文庫)。近著は『血の雫』(幻冬舎文庫)、『レッドネック』(ハルキ文庫)、『マンモスの抜け殻』(文藝春秋)、『覇王の轍』(小学館)、『心眼』(実業之日本社)、『サドンデス』(幻冬舎)、『イグジット』(小学館文庫)『ゼロ打ち』(角川春樹事務)、『マンモスの抜け殻』(文春文庫)。『フェイク・フィクサー』(小学館ストーリーボックス連載中)、『ブラックスワン』(小説幻冬連載中)。

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