<使用機材>Fujifilm X100V,VespaGTS300supertech
最近の当欄で触れた港町編、今回は第三弾である。締め切りを守って原稿を送り、ゲラの類いも全て送り返した十月下旬のとある平日、天候は晴れ。酷暑でバイクでの遠出をほぼ諦めていたので、早朝から自宅を出て、一路房総半島へ向かった。
なぜ早朝なのか。そこには明確な理由がある。東京湾アクアラインを通って、目指したのは内房の君津市。ここには早朝五時から営業をスタートさせる大好きなラーメン屋さんがあるのだ。
なぜ五時なのかは後述するとして、片道六〇キロあるお店になぜ通うようになったのか。単純にウマいからだ。鶏の出汁が効き、濃口の切れ味鋭い醤油ダレ、分厚いチャシューと店主自ら研究を重ねた自家製麺が醸し出す旨さの虜になり、本業である作家業の始業前(朝型人間なので通常は九時くらい)に赴くようになった。
さて、なぜ早朝五時なのか。同市には国内有数の規模を誇る製鉄所がある。製鉄所の命ともいえる高炉は、絶対に火を落とすことができない。よって多くのスタッフがシフトを組み、二四時間体制で働いている。要するに、朝番勤務の人は出勤前に、あるいは夜番が終わった人は帰路の途中で絶品のラーメンをいただけるという寸法なのだ。
いつも行列に並んでいる際、製鉄所勤務の方々の話を聞くことができる。地域密着のお店っていいなあ、などと考えながら至極の一杯を待つのだ。
さて、ツーリングへ出かけた日は、ラーメンを完食完汁したあと、房総半島の一番南を目指した。食べ終えた時刻はまだ午前六時すぎ、たっぷりと時間があった。
内房から半島の先端へ、そして外房へとぶらり旅しようという算段だ。当欄でたびたび触れてきた港町を舞台にした小説を綴るため、漁港や工業港の姿をファインダーにおさめ、ときに地元の人たちと言葉を交わしつつ、のんびりと走り続けた。
この日は南端の千倉から鴨川市、勝浦市、御宿町と外房を北上し、九十九里の海岸もゆっくりと堪能した。地域ごとに表情を変える海を愛でつつ、潮風を浴びて走るのは最高の気分転換だ(取材もちゃんとしている)。
そして最終目的地は半島の東端にある銚子市だ。犬吠埼の近くに外川漁港という小さな町がある。キンメダイの名産地として知られ、とりわけ同地で水揚げされる〈釣りキンメ〉はブランド魚としても有名だ。
港町といえば、新鮮な魚介を食べないわけにはいかない。これまで何度かお邪魔した小さな鮨店があり、今回もお邪魔してブランドキンメをたっぷり堪能させていただいた。
キャプションでも触れているが、決して安価なランチではない。だが、銀座や六本木、麻布界隈の高級店で外川キンメをオーダーしたら、間違いなく一貫一五〇〇円はする(それ以上かも)。
ブランド魚が四貫、しかもアカムツ(別名ノドグロ)まで入っているのだ。お値打ちどころか、破格である。店主は地元産の魚介にとりわけこだわりが強いので、サーモンやイクラなど定番のネタはない。
ああ、取材を兼ねてウマいものをたらふく食う。これこそ作家冥利である(遊んでいるわけではない)。
さて、この日の軌跡を地図上でなぞってみた。千葉県の公認キャラクター、チーバくんと同じシルエットに(当たり前だ)。
実質的に房総半島一筆書きの旅。
房総は安くて美味しい食堂や鮨店が多い。関東近隣の他のエリアと比べても、格段に安いと思う(個人の感想です)。私のように駆け足ではなく、特定のエリア、港町を訪れるのはいかがだろう。
(注=チーバくん)
勝手に!裏ゲーテ 街場の旨いメシとBar
食い意地と物欲は右に出るものがいない作家・相場英雄が教える、とっておきの街場メシ&気取らないのに光るBar。高いカネを出さずとも世の中に旨いものはある!
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