1. Home
  2. 読書
  3. アルパカ通信 幻冬舎部
  4. 南杏子『いのちの波止場』/森沢明夫『桜が...

アルパカ通信 幻冬舎部

2024.11.30 公開 ポスト

南杏子『いのちの波止場』/森沢明夫『桜が散っても』- 人生とは。家族とは。痛いほど刺さる感動の2作!アルパカ内田(ブックジャーナリスト)/コグマ部長

幻冬舎営業部 コグマ部長からオススメ返し
森沢明夫『桜が散っても

美しい自然を持つ桑畑村を「第二の故郷」と
思っていた山川忠彦。しかし、初めて訪れてか
ら数年後、自身の勤務先が桑畑村の再開発
を進めていることを知る。忠彦は親友の檜山
浩之に会いに桑畑村へ向かうが、そこで人生
を揺るがす出来事に遭遇してしまい……。

そしてこちらも感動に包まれる傑作小説。

冒頭、桑畑村という山村で老人の死体が発見される。地元の巡査によって、その男は住民の山川忠彦であることが判明。一部からは「よそ者」「変わり者」と言われていたらしいが、巡査には忠彦の「穏やかで淋しげなまなざし」が印象として残っていた。

そして舞台は一転して過去に。まだ30歳になったばかりの忠彦は釣りが目的で訪ねた桑畑村で、地元の住人の檜山浩之に出会う。同世代の二人はすぐに意気投合し、忠彦は村の自然にも魅了されていく。そんな折、浩之から忠彦の会社が村内でリゾート開発を半ば強引に進めていると知らされる。そして現在。都内に住む還暦をすぎた麻美とその子供たち。苦労しながらも整体院を切り盛りする麻美、歳が離れた男との不倫をする娘、仕事にやりがいを感じられずにいる息子、それぞれの日々……。

2つの時代と場所を縫いながらストーリーは進む。徐々に明らかになる登場人物たちの過去への思いと葛藤。著者の巧みな筆は彼(女)らの心の空白が埋まっていく過程を丁寧に描き切る。長い年月は家族それぞれが抱いた思いを薄めるのではなく、濃くするのだ。

2024年もいよいよ大詰めになった今、こんな目玉作品に出会えた奇跡に感謝したい!

{ この記事をシェアする }

アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。

幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!

バックナンバー

アルパカ内田 ブックジャーナリスト

内田剛(うちだたけし)。ブックジャーナリスト。約30年の書店勤務を経て2020年2月よりフリーランスに。NPO法人本屋大賞実行委員理事で創立メンバーのひとり。文芸書をメインに各種媒体でのレビュー、学校や図書館でのPOP講習会などを行なっている。これまでに作成したPOPは6000枚以上で著書に『POP王の本!』『全国学校図書館POPコンテスト公式本 オススメ本POPの作り方(全2巻)』あり。無類のアルパカ好き。
Twitter @office_alpaka

コグマ部長

太田和美(おおたかずみ)。幻冬舎営業本部で販売促進を担当。本はミステリからノンフィクションまでノンジャンルで読みまくる。アルパカ内田(内田剛)さんとは同学年。巨人ファン。
Twitter @kogumabuchou

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP