新年をどう迎えるかは、開運にとって、最も大事なこと!
新刊『神様と暮らす12カ月 運のいい人が四季折々にやっていること』より、神様へのお参りの仕方を、学びましょう!
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福の神様の意外なる生い立ちを知って、あなたの“推し神”を見つけよう
新しい一年という「未来の時間」をくれる年神様は福の神と言えますが、お正月にはさらに七福神めぐりなどをして一年の福を授かる風習が、全国各地にあります。なかでもえびす様と大黒様は富と福を授ける神として、人気が高い神様です。
関西地方では、年の初めに「えびす祭」というお祭りが多く行われています。七福神の一柱である戎大神(えびすおおかみ:通称えべっさん)の例祭日である1月10日を中心に行われるお祭りで、十日戎(とおかえびす)とも言われ、福笹(ふくざさ)や熊手(くまで)、箕(み)などを授かって一年の商売繁盛と家内安全を祈願するのです。
願いを叶えてくれるえびす様という神様は、可愛いおじさんの姿をしています。海の向こうのめっちゃ栄えた理想郷から、釣竿(つりざお)と鯛(たい)を持ってやってくる、いわゆる渡来神で、そのふくよかなお腹と笑顔は、福や富を表すアイコンです。「エビス」という名は異邦人や辺境に住む人を表す「エミシ」「エミス」からきていると言われ、鯛を持っている通り、もともとは豊漁の神様でした。港から経済が発達していくとともに、やがて豊漁も豊作も商売繁盛も担う福の神様となって、あっという間に全国的に広がったのだそうです。
島国に住んでいる農耕民族の私たちには、元来「海の向こうにある栄えた国から福の神がやってきて、富をもたらしてくれる」という期待がどこかにあるのですよね。
このえびす様、神道では「古事記」「日本書紀」における蛭児(ヒルコ)と同一視されることがあります。イザナギとイザナミが国土を産む時(いきなり国土を「産む」なんて言うと驚かれるかもしれませんが、「古事記」「日本書紀」では男神と女神が性交して国土を産むのです)、最初に女性神であるイザナミがイザナギに「いい男ね」と言い、次に男性神のイザナギがイザナミに「いい女だね」と言って性交して、生まれてきたのがヒルみたいなぐにゃぐにゃしたものだったので、イザナギとイザナミはこれを葦(あし)の葉っぱに包んで海に流しました。この時流されたのがヒルコです。
このあとイザナギとイザナミは声をかける順番を交代して性交し、様々な島からなる国土を生みます。流されたヒルコはその後、「古事記」「日本書紀」には登場しませんが、今の兵庫県あたりの浜に流れ着いて「蛭児大神(ヒルコオオカミ)」になったと言われています。これがえびす様だという信仰があるのです。えびす様は、海の向こうからやって来たけれど、実は日本生まれ、というわけですね。
私は二児の母になる前、流産を経験しているのですが、体調が戻ってもなかなか気力が戻らなかったとき、この神話に触れて癒されました。「流れた我が子が釣竿と鯛をたずさえ、ぽっちゃりしたおじさんの姿で帰ってきて、たくさんの人に福をもたらす神様になる」なんてほっこりする物語は、自分では到底思いつかないですから。
自分の体に起きたことは、人間の体という自然物に起きた自然現象であり、それ自体が尊いことであるということを、この神話は教えてくれているように思いました。
ところで、七福神の中で、日本生まれはえびす様だけです。えびす様とペアになっていることが多い大黒様(大黒天)は、インドのヒンドゥー教の神マハーカーラが日本にわたって大国主命と(おおくにぬしのみこと)習合した神様ですし、
財宝と武勇の神の毘沙門天(びしゃもんてん)も、同じくインドのヒンドゥー教の神クベーラが起源で、仏教の世界でも、四天王の一柱(ひとはしら)として活躍しています(神様を数える単位は「柱」です)。福禄寿(ふくろくじゅ)と寿老人(じゅろうじん)は、中国道教の神様。布袋(ほてい)は中国の禅僧、此契(かいし)が起源です。
七福神唯一の女神である弁天様(弁財天)は、インドのヒンドゥー教の女神サラスヴァティーが起源です。私がインド生まれだと知った氏子さんから、「ほんならあんたは、ここの弁天さんやな!」と言われてうれしかったのを覚えています。何と言っても弁天様は、芸術、学問、弁舌の神様で、そのお姿は、腕に琵琶(びわ)をかかえた、水もしたたるいい女ですから……。
七福神の概念は、室町時代に生まれましたが、メンバーが今の七柱に固定されたのは江戸時代と言われています。国籍も宗教も異なるバックグラウンドを持つ神様たちが、それぞれの個性を発揮しているのが七福神なのです。私はえびす様と弁天様推しですが、七福神は宝船に乗っていますから、全員をグループとして応援する箱推し、ならぬ「船推し」も楽しそうですね!
神様と暮らす12カ月 運のいい人が四季折々にやっていること
古(いにしえ)より、「生活の知恵」は、「運気アップの方法」そのものでした。季節の花を愛でる、旬を美味しくいただく、しきたりを大事にする……など、五感をしっかり開いて、毎月を楽しく&雅(みやび)に迎えれば、いつの間にか好運体質に!
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神主さん直伝。「一日でも幸せな日々を続ける」ための、12カ月のはなし。
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