「ダサい」ほうが残りがちな日本
速水 僕、本を読んでいて一箇所でも面白いと、「この本勝ちだ」と思うんです。僕は本を書く側だから思っていることでもあるんだけど、この本で最高のフレーズはここです。「あまりNPOなどを悪く言いたくはないのだが、町おこしを目指すNPO主体のショップやイベントの「ダサい率」の高さには頭を抱えてしまう」。これもうほんとに拍手でしたよ(拍手)。
中沢 あ、ありがとうございます(笑)。
速水 尻馬に乗りますが、商店街によくある地元の活性化なんとかセンターとか、ちょっとしたカフェをつくってたりしますけど、空間としてよくできていたためしがないですよね。
中沢 そう、ためしがない(笑)。だけど、「一所懸命やっているからいい」とジャッジされがち。
速水 自分たちの社会をよくしようとか、社会起業とかもそうだけど、理念でやっているものであればあるほど、かっこよくなきゃだめだと思うんですよ。
中沢 私もそう思っています。例えばグリーンズのように、おしゃれなNPOも増えているから、だんだん変わってくるでしょうね。
速水 変わってきた。オーガニックも、始めは意識高い系の人たちというか、本当のヒッピー的なものだったじゃないですか。
中沢 もともとはすごくダサいものだったでしょ?
速水 ナチュラルハウスの店舗とか。
中沢 ナチュラルハウスがずっと一番おしゃれだったぐらいだったから。
速水 もともと、「オーガニック=ダサくてもしょうがない」だったのが、そうじゃなくなったから、「VERY」とかが食いつくわけじゃないですか。そこ努力しないと、というのは共感です。読みながらうちで拍手しました(笑)。これだけ毒を持っているのに……。
中沢 え、それ毒なのかなあ。
速水 だって、「ダサい率の高さには頭を抱えてしまう」って、毒以外のなにものでもないでしょ(笑)。
中沢 私は毒のつもりじゃなくて、「一所懸命やってらっしゃると思いますけれど、ダサいことによって広がっていませんよ」ってお伝えしたい気持ちがあって(笑)。
速水 けど、今日の話で言うと、すごく難しいのは、ダサいものが勝つ、あゆが宇多田に勝ってしまう時代を僕らはどう受け止めていかなきゃいけないのかなって。たぶん、なんの疑問もなく「いや浜崎一択でしょ」となっていく可能性があって、その時代をどう受け止めていかなきゃいけないのかって。
中沢 それがやっぱりみんな好きってなると、それこそ頭を抱えてしまうな……。
速水 けど、世の中は基本的に、やっぱり上から下に流れているのは、間違いない気がしますね。
中沢 そこは間違いないはずだろうと思います。そろそろ時間が来たので、最後に。『埼玉化する日本』で私が言いたかったことは、日本中の消費の現場がよりよくなるにはどうしたらいいのかな、という問題を、ボトムから、あらゆる消費の現場をちゃんと見ることから考えたいなってことなので、そこを受け取っていただけると、ありがたいです。決して埼玉あるある本ではないですし、埼玉ディス本でもありません。買い物好きが考える、これからの消費の現場のあり方の一提案というつもりです。今後予定している本も消費について考える内容になると思いますが、商店街やモールの現場にいる方々と何らかの形で連携していけたらいいな、と思います。ショッピングセンター協会の皆さん、ぜひ私にも声をかけてください(笑)。
速水 街づくりと消費って、実は男女で最も大きな差が生じる分野かもしれないって思いました。その分野で中沢さんみたいな人が出てきて、いや、そこそうじゃないって言ってくれたりするのは、非常に心強い。しかも、お世辞じゃなくて知見が二つと、キラーフレーズがある。NPOをdisるところ、もう一回読んでもいいぐらいなんですけど(笑)。
中沢 それ褒めてるのかなあ(笑)。
速水 いろいろ批判はしましたが、ものすごく響いた本ではありました。
中沢 あはは、ありがとうございます(笑)。今日は楽しかったです!
(了)