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実践「マネーロンダリング」講座

2003.01.15 公開 ポスト

最終回

ハリーポッターも驚く夢の国橘玲(作家)

今回で、「マネーロンダリング実践講座」も最終回になる。

 そこで最後に、高利貸しから金を借りて返せなくなったらどうなるか、という話をしよう。

 

 多くの人が誤解しているが、借金で首が回らなくなるのは、金にだらしのない奴よりも、真面目な性格の人たちである。金にだらしのない奴はわずかな借金も返そうとしないから、すぐに誰も相手にしなくなる。したがって、世間に迷惑をかけることもない(犯罪者にならなければ)。

 真面目な人間は、必死になって借金を返そうとする。住宅ローンが返せなくなればカードローンや消費者金融に手を出し、やがて闇金融の深みにはまっていく。年利2%の住宅ローンすら返済できない人間が、年利30%近い消費者金融の借金を返せるはずがない。闇金融になれば、金利は青天井だ。

 まともな知能を持っていれば、マイホームを売って借金を清算しなければ泥沼から抜けられないと気づくはずだが、たいていの場合、彼らは正常な判断力を失っている。

 日本人の多くが、「何があっても家だけは死守せよ」と説く「土地真理教」の念仏を固く信じている。この奇妙な宗教では、マイホームさえあれば、子育てや老後の生活など、人生におけるすべての問題が魔法のように解決すると信じられている。その教えに帰依した者は、マイホームを売って賃貸に戻るという選択肢がこの世に存在することすら思いつくことがない。

 そのうえ、10年を越える地価の下落で、マイホームを売却しても借金が残るケースも多い。不動産投資に失敗したのだから損失を被るのは当たり前だが、土地真理教ではマイホームの購入は「投資」ではなく「貯蓄」だとされているので、信者は損をするという現実を受け入れることができない。

 こうした人たちが、会社のリストラなどで家計のキャッシュフロー(収入)に打撃を受けると、あっという間に多重債務者に堕ちていく。

 

 もうひとつ、これも誰もが誤解していることだが、高利貸しはそれほど儲かる商売ではない。高い利息でしか金を貸せないということは、金を返してもらえない可能性が高いということだ。資金回収に失敗すれば、利息ばかりか元金まで丸損である。

 高利貸しの多くは、商売のタネ銭を別の金主から借りている。借金の取立てに失敗すれば、こんどは彼らが借金に追われる立場になる。金主の中にはその筋の人も多いので、金を返せなければシャレでは済まない。弁護士に泣きついて自己破産させてもらえばチャラになるような甘い世界ではないのだ。

 金を貸すことは誰でもできる。問題は、元金と利息を確実に回収することだ。

 

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実践「マネーロンダリング」講座

たとえば、次のような儲け話があったとする。あなたは、話くらい聞いてみようと思うだろうか?もしもしそうなら、気をつけた方がいい。
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橘玲 作家

1959年生まれ。作家。2002年、小説『マネーロンダリング』でデビュー。同年、『お金持ちになる黄金の羽根の拾い方』が30万部超のベストセラーに。06年、小説『永遠の旅行者』が第19回山本周五郎賞の候補作となる。また、『言ってはいけない』が新書大賞2017に輝く。他の著書に『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』『(日本人)』『亜玖夢博士の経済入門』『タックスヘイヴン』『ダブルマリッジ』『朝日ぎらい』『上級国民/下級国民』『女と男 なぜわかりあえないのか』『バカと無知』等がある。

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