片田 だからその辺りの負担が、女性ばかりにかかる構図になっているから、不満が出てしまうのは当然ですね。
それに加えて、先にも言いましたが、基本的に女性は「母の代理」ですから、男性の側には、お母さんがやっていたように育児も家事もやってほしい、という願望もある。お母さんにできていたことが、どうしておまえはできないんだ、という意識ですね。
——でもそういう経済全体が上り坂の時代の、夫が一家の大黒柱で、妻は専業主婦でやっていけたパターンと比較されてしまうと、いまの女性にとってはかなり辛いです……。
片田 そうよね。やっぱり今はもう、妻が家事に専念できるほど経済的に恵まれてて、朝早く起きて夫の食事を完璧につくって送り出したら、家のことをしっかりやって、子供のお菓子も全部手作りで……なんていうのは無理ですね。
それこそフルタイムで働いている女性もたくさんいます。それでがんばって育児も家事もやっていたら、くたくたになってしまって、鬱になって心を病んでしまう人もいるわけです。だからそこは、旦那さんと交渉しないと。
——母親の時代と比較されて、同じことを妻に要求してくる旦那さんには、どう接するのがいいのでしょうか。先ほどの「男はみんなマザコン」ということをふまえると、「あなたのお母さんは専業主婦だったからいいわよね!」なんて言ったら、もう大変なバトルになりそうですし。
片田 やっぱり経験もふまえて言いますと、夫のお母さんをけなすようなことを言うと、男性は激怒するからそれはいけませんね。あなたも相手の男性から、自分の親をけなすようなことを言われたら、カッとくるでしょう。
——そうですね。
片田 だからそこはある意味、下手に出て、「私はあなたのお母さんみたいにきちんとできないから、そのあたりをあなたに少し助けて欲しい」というようにするのはどうでしょうか。女性はとにかく1人で抱え込まないで、旦那さんに助けを求めたほうがいいです。
——確かに、1人で抱えている女性も多いかもしれません。それで男性が、意外に女性の大変さを気づいていない可能性だってありますね。一緒にいるんだからわかるだろう、と女性は思っていても、のんびりした旦那さんだと、実はわかっていないとかありそうです(笑)。
片田 そうですよね。やっぱり人間というのは、自分が相手にやってあげていることは過大評価するし、相手が自分にやってくれていることは過小評価する傾向がどうしてもありますから、そこは気をつけないといけません。
——なるほど。悶々としている女性は多い気もしますから、言うときは工夫しながらもちゃんと言うと。
片田 そこはちゃんと交渉する。根本的にはわかりあえない部分も出てくると思いますけど、男と女の間には大きな壁のような、川のようなものがあって当然なんです。わかりあえなさがあるということも認識して、そのことを受け入れた上で、ちょっとでも手伝ってもらえるように、ちょっとでも自分がラクになるようにうまく交渉しましょうよ、ということですね。
——一緒に生活しているんだから、お互いの気持ちがなんでもわかって当然、という意識がある人は、あらためたほうが良さそうですね。
片田 そうですよ。男女のコミュニケーションというのは誰もが悩んできた道です。わかりあえなさはあるものだ、という認識を持つことが、男女が歩み寄る第一歩だと思いますね。
——いろいろ勉強になりました。どうもありがとうございました。
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