柏井壽さんの『京都の路地裏』が京都ガイド本大賞・リピーター賞を受賞しました。「私は京都好き」と言いたいあなたのために、本当は内緒にしておきたい(←編集者の本心!)、とっておきの名所・名店を紹介します。
観光地として人気の寺社は、概ね目立った場所にあります。しかし、見過ごしてしまいそうな路地裏にも、数多の神社があり、小さなお地蔵さんがいて、これらを静かに愛することができるのが、京都通というものなのです。
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地図に載らない京都の寺社
京都の寺社の中で、絶大な人気を誇るところは、概ね目立った場所にある。清水寺や金閣寺、平安神宮など、航空写真でもすぐに判別出来るほど、広々と伸びやかな空間にその境内を広げている。無論それらの寺社は見るべきものもたくさんあり、京都を訪れたなら、一度は足を運んでおきたい。
その一方で、見過ごしてしまいそうな路地裏や、名も無き細道の奥にひっそり佇(たたず)む寺社もまた、京都ならではの魅力を湛(たた)え、そっと手招きしている。グーグルマップを最大限まで拡大しても、緑の小さなエリアだけが表示され、寺社の名前など、まったく記されていない。そんな小さな神社や寺が、京都の街中に、無数にあると言ってもいい。地図には載っていなくても、近所に住む都人なら、誰もがその存在を知っている。
世界遺産でもなく、著名なパワースポットではないものの、古くから都人に愛されていたり、不思議な謂いわれを持つ寺社など。路地裏細道の神さま仏さまの幾つかをご紹介しよう。
京の街角のあちこちにいる地蔵さま
あの世には極楽と地獄がある。ということになっている。誰もそれをたしかめたわけではないので、断定は出来ないが、どうもそのようになっているらしい。
閻魔大王の判決を受けて様々な責苦に遭うよりは、叶うならば、麗しい花が咲き乱れ、鳥たちが鳴き声を競う極楽に行きたいと願う。だが、生前に犯した罪ゆえか、極楽浄土に往生の叶わない衆生は少なくない。
自らの行いを省みれば、地獄へ堕ちるのは仕方がないとして、それでも何とか少しでも苦を和らげてくれないものだろうか。そんな、ささやかな願いを叶えてくださるのが地蔵菩薩さまである。
そういうわけで、よほど京都には極楽浄土へ往生出来なかった衆生が多かったのだろうか。洛内の至るところに地蔵菩薩が祀まつられている。京言葉でいうところの〈お地蔵さん〉。
ずっと京都に住み続けてきて、孟母三遷ではないが、住まう場所を変えること十度あまり。幼子の頃から、老いの域に入った今日まで、その都度お地蔵さまと一緒に過ごして来た。
八月一五日の盂蘭盆を過ぎ、夏の終わりが近付いてきたら地蔵盆が始まる。主役は子供たちだ。
町内には必ずと言っていいほど、地蔵菩薩を祀った祠ほこらがあり、地蔵盆になると、その周りに集って、先ずは念仏を唱え、子供たちの無事と成長を願う。同じ町内に住まう年寄りと子供たちが他愛のない遊びに興じ、福引などの余興を共に愉しんで一日を過ごす。
京都に住む者にとって、町内の役員を引き受けることは、すなわちお地蔵様のお世話をし、地蔵盆のあれこれを計画し、実行することにあると言っても過言ではない。それほどに京都の街中で、お地蔵さまの存在感は大きいものがある。
わざわざ探すまでもない。細道から路地に入って、その奥を覗きこめば、必ずや、小さな祠の中にお地蔵さまがいらっしゃる。花を供え、前掛けを新調し、線香を手向ける。町衆が守り続けるお地蔵さまに手を合わせる。そこから、路地裏細道の神さま仏さま巡りを始めるのが常道なのである。
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次回「都伝説、奇妙・奇怪な逸話の数々 & 首振り地蔵――地蔵さまの頭をぐるりと一回転させて願掛け」は10月21日(水)に公開します。お楽しみに!
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