ファッション・ブランドに限らず、あらゆるジャンルの小売店も同様で、だから、マンハッタン内には6店舗もアップル・ストアが存在し、5番街には24時間営業のアップル・ストアまである。
その結果、ニューヨークでは、そうしたファッション・ブランドの支持者の間で、常に、何かしらの物事が流行っている状態になっている。あまりに多すぎて、その全てを把握することはほとんど不可能だ。
しかも、ここ1~2年は、自分らしく生きる姿の美しさへの評価の高まりから、「プラスサイズ」(やや太め)の女性モデルへの認識に大きな変化が出てきて、ニューヨークに世界初の「プラスサイズ」専門のファッション・モデル事務所も登場。このように、よくよく観察してみると、新たな流行どころかこれまでのファッション業界の常識や価値観を根底から覆す気配すら感じさせる新しい事例まで見られる。
他にも、まだまだある。
「衣食住」という観点から、「食」と「衣」に続いて「住」についても見てみると、近年、ニューヨークでは、住民の生活の質を高める公園やパブリック・スペースの再開発や新たな建設が極めて盛んだ。
昔から親しまれてきたセントラル・パーク、ブライアント・パーク、マディソンスクエア・パーク、ワシントンスクエア・パークなどの公園は大幅にリニューアル。廃墟になっていた古い列車の高架を空中公園に再開発したハイライン(2014年完成) や、イースト・リバー沿いのブルックリンのブリッジ・パーク(現在も建設中) のように新たに作られる公園も多い。
2009年以降、タイムズスクエア地区の中心を走る大通りのブロードウェイは、車道を潰して常設の歩行者天国となり 、ブロードウェイ沿いのマンハッタン内の主要エリアには、車道を潰した類似のパブリック・スペースがいくつも作られている。
しかも、こうした公園やパブリック・スペースの中には、地域住民や地元企業の社会貢献活動の一環として、NPO団体やボランティアによって維持・管理されているものも増えている。空中公園ハイラインにいたっては、そもそもの建設企画や初期のプロセスが近隣住民や地元企業からのボランティアや寄付によって進められた。現在も、フレンズ・オブ・ハイラインという民間NPOが維持・管理を行っている。
この手の社会貢献活動は、近年のニューヨークで急速に普及し、完全に新たなトレンドになった。
公園の建設や維持・管理は、もっぱら公共事業と考えられている日本とは、根本的な考え方から大違いだ。
このようにニューヨークでは「衣食住」様々な分野で、多くのトレンドが生まれている。企業はトレンドの起点としてニューヨークを選び、さらに社会貢献活動などとも結びついて生まれる新たなトレンドもある。次回では社会貢献活動の観点をもう少し掘り下げてご紹介する。
ニューヨーク在住の日本人マーケティング・コンサルタントが語る「日本のビジネスに本当に必要なこと」
2004年から10年以上、ニューヨーク情報に特化したブログを書き続けてきた筆者が、「多様性の街」、ニューヨークの魅力や特徴を語り尽くす。グローバル時代を生きる日本人のための、ビジネスに役立つニューヨークのトレンド情報が詰まった連載。特に、海外事業担当者やマーケティング担当者は必読。