強力な個性を持ったご家族やご友人、下ネタに事欠かない夫とのエピソードなどを赤裸々につづった大人気連載『結婚はつらいよ!』。その書籍化を記念して、著者の今村三菜さんが大ファンという、辛酸なめ子さんとの対談が実現しました。波瀾万丈な今村さんの日常が、エッセイよりもさらに赤裸々に、全4回にわたって明かされていきます。最終回の今回は、浮気をしたご主人に対して、今村さんがした壮絶な「お仕置き」を告白。男性読者のみなさん、これを読んだら浮気なんて二度とできないと思いますよ。(写真:谷口巧 文:幻冬舎編集部)
そして妻は捜査を始める……
辛酸 それにしても、堂々と浮気の電話を家でしていたっていうのは。
今村 それは一応、隠していたつもりのようです。私、幻冬舎の方に途中で相談したんですよ。「これは、夫は隠しているんでしょうか、公開しているんでしょうか」って、資料集を見せてね。そうしたら、「隠しているんじゃないでしょうか」って。ただ脇が甘いだけだと思うんです。私のことを夫は、ものすごく、べろなめに、なめていたので、ぼおっとしたバカな女だと思っていたと思うんです。でも私は、夫が本当に浮気をしていると知った途端、なんかこう……ピカーッと頭がひらめいたっていうか、急に頭の中がクリアになって、身体にも力がみなぎってくるのがわかりました。
辛酸 捜査のシーンとか、本当にすごくハラハラして。すごくスリルがありました。
今村 すっごい、生きてる感がありました。ずーっとね、死んだように生きていたんですけど。
辛酸 伝わってきましたね。じゃあ逆に、生き甲斐ができたぐらい。
今村 ええ、すごく。
辛酸 スクラップされたり、証拠物を封筒にしまったりとか。
今村 はい。当時はすごく生きている感じがありましたね。90%は、苦しくて悲しかったんですけど、残りの10%で「すごい、これからどうなるんだろう」とか、「何するつもりだろう、この男」とか、「忘れちゃいけない、書こう」とか。
辛酸 メモを取っていらっしゃったんですよね。
今村 はい。もうね、記憶の洗面器から一滴も漏らすまいと、聞き耳を立てて。(聞き耳を立てていた2階の夫の部屋の前から)
すぐ、さあっと下におりて、布団の下から母校のノートを出してメモるんですよ。楽しかったです。
辛酸 写真をコピーに取りに行ったりされていましたよね。(そのときご主人は)寝ていて、気づかなかったんですよね。
今村 はい、寝ている夫の横を通り抜けて、すぐ近くのサミット(編集部注:主に首都圏にある食品スーパー「サミットストア」のこと)に走ったんです。そしてカラーコピーを、なんか知らないけど念のためとか思って2枚(笑)。
辛酸 記念に(笑)
今村 そういうのがあると、友だちに話すときもそうでしたが、リアル感があるというか。
辛酸 ご主人はパソコンの検索履歴も全部残したままで、相手の女性の家の地図まで出てきたんですよね。
今村 なんかこう、矢印が付いていて。
辛酸 お迎えに行くための?
今村 そう。もうね、いろいろ知らない言葉を知ってしまいました。「同伴」とか知らなかったんですよ。「同伴」とか、「アフター」とか。全部、インターネットを調べると出てきますでしょ。なるほどねえ……と思って。
辛酸 本当に夫のほうも、今村さんのことを世間知らずのお嬢様みたいに思って、ぜんぜんばれないだろうと思っていたんですね。
今村 ええ。もう、めっちゃめちゃ、私のことをなめてたと思うんです。
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