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じつは治せる“おなかの弱い人”の胃腸トラブル

2016.07.17 公開 ポスト

リア充男子に増えているおなかのトラブル。薬に頼らない治療法とは。江田証

「おなかが弱いのは体質だから…」「こんなことでわざわざ病院に行くのは恥ずかしい」など、おなかの不調に慣れてしまい放置している、"おなかの弱い”あなた。
胃がん・大腸がんなど大きい病気を見過ごしてしまうかもしれないというリスクもそうですが、胃腸にトラブルがある・ないでは日々の生活の質も雲泥の差。きちんと治療をすることが大事です。
 胃がん発生に重要な働きをしている特定の遺伝子がピロリ菌感染胃粘膜に発現していることを世界で初めて発表し、毎日全国からの患者さんを診察している消化器内科医、
江田証さんによる著書『専門医が教える おなかの弱い人の胃腸トラブル』より、よくあるおなかの不調の原因とその治療法を紹介します。


<高学歴、高収入の若い男性に多い過敏性腸症候群>
    過敏性腸症候群。実はこの病気、地球規模の健康問題となっている現代病です。下痢、お腹のゴロゴロ、張り、痛み……。日頃から腸の調子がすぐれないという日本人は多くいます。過敏性腸症候群とは、大腸内視鏡などの検査を行っても目で見える異常がないにもかかわらず、下痢、腹痛などの症状に悩まされる病気。主にストレスや幼少期のトラウマなどに原因があると考えられてきた病気で、日本人の実に13.1%は過敏性腸症候群です。
    アジア全体では全人口の9.6%を占め、地球規模の健康問題となりつつあります。特に都市に住む人に多く、世界的な都市化の波によるストレスやPM2.5などの環境汚染物質が腸の炎症を悪化させることを反映しています。
    この病気の特徴は、プレッシャーやストレスが関係し、社会的に地位が高い人、高収入、高学歴の都会暮らしに多いことがわかっています。

 逆に言えば、「できる男」はなんとかこれを工夫して乗り越えて生きているということ。過敏性腸症候群の具体的な対策をしているのです。

 過敏性腸症候群は、文字通り腸が過敏になることで、下痢、便秘、腹痛をはじめ、全身にさまざまな症状が起こる病気です。
 感受性が強くストレスを受けやすい世代10~30代の若い人に多く、入学・入社・異動の時期に、とくに発症しやすいといわれています。

 過敏性腸症候群の治療には、薬以外にも、抱えているストレスを明確にしたり、思考の歪みを捉え直し修正したり、からだをリラックスさせたりすることで改善させていく方法があります。
 ここでは、薬に頼らない4つの治療法をご紹介します。

①ストレスを言葉に直して、まずは自己開示
アメリカ心身医学会で有効と発表された方法で、ネガティブな記憶を、週3回、20分間程度の短い時間でいいので紙に書き出す。心の奥にしまい込んだ気づかないストレスを知り、状況を改善させるヒントが得られる。過敏性腸症候群の治療は順番が大切なことがわかっています。まずはネガティブな思考をぶっちゃける。ポジティブ思考に切りかえていくことはその後です(江田証医師)。

②リラクゼーションで骨格筋をゆるめる
腹式呼吸などのリラクゼーションで、全身の力を抜いてリラックス。
とくに骨格筋を弛緩させることが重要だということがわかっている。

③認知行動療法で思考を変える
医師との面接やホームワークなどで、日頃のものの考え方や受け取り方を客観的に捉え直し、思考の歪みを取り除いていく。

④毎日、食べたもの・排便の記録をつけておく
①~③とともに低FODMAP食も実践。実践したこと(①~③)、食べたもの、排便の状態や回数を記録していく。
※低FODMAP食については、連載1回目「【腸の新常識】よくおなかをこわすのは糖質が原因かも?」を参照ください。
 


 ストレスは過敏性腸症候群を直接的に引き起こします。ストレスを受けると、腸管に神経伝達物質のセロトニンが過剰に分泌されるのです。
 セロトニンと聞くと、脳内の神経伝達物質という印象を抱く人もいるでしょう。ところが、体内のセロトニンの9割以上が、腸管内に存在しています。ストレスで腸管内のセロトニン分泌が盛んになりすぎてしまうと、腸の運動リズムが変調し、下痢や腹痛を引き起こすのです。
 リラクゼーション法や、ものの考え方を変えていく認知行動療法を実践すると、ストレスを受けにくくなり、症状もおさえられていきます。


<寝る前にゆっくり10回。おなか呼吸でリラクゼーション>

寝る前にゆっくり10回腹式呼吸をしてリラクゼーションすることも有効です。
からだの力を抜いて、全身を布団に預け、深く呼吸すると、心が落ち着くだけでなく、骨格筋をゆるめることができ、過敏性腸症候群に有効であることがわかっています。
 

鼻から息を吸い込む
ゆっくりと、鼻から息を吸い込み、鼻に息が通ることを感じる。

胸に息を送り込む
息が鼻から胸に送り込まれ、横隔膜が広がるのを感じる。広がるイメージを持つことが重要。

③おなかがふくらむのを感じる
胸から息が送り込まれたとき、おなかがふくらむのを感じる。

④おなかをへこませ、口から息を吐く
おなかをへこませて、胸、口へと息を吐き出す。吸ったときの
倍時間をかけて息を吐ききる。

 次回「20年前のなんと2倍!日本民族に忍び寄る胃酸の脅威」は7月20日(水)公開予定です。

江田証『専門医が教える おなかの弱い人の胃腸トラブル』

「またおなかの調子が悪い」は治せる病気です! おなかの不調に慣れてしまっているすべての人のための、専門医が教える治療法大全!

ふだんから、「おなかの存在」を意識していませんか?
しくしく痛む、もたれる、はっている、キュルキュル鳴る…。
「おなかの存在」を意識する必要がなくなれば、生活の質は一気に上がります。
あらゆる胃腸のトラブルへの対処法を、専門医がわかりやすく徹底的に解説。
これさえ読めば、あなたも胃腸の悩みいらず!

江田証『機能性ディスペプシア おなかの弱い人の胃腸トラブル〈分割版〉』

『専門医が教える おなかが弱い人の胃腸トラブル』のPart2「機能性ディスペプシア」を抜粋してまとめたものです。

◆ 5人に1人、若い女性に多い。異常はないのに胃もたれ、胃痛がある
◆ 発症のキーワードは「ふくらみ」「感受性」「ストレス」
◆ 食べても胃がふくらまず、トラブルが連鎖していく
◆ 新薬アコチアミドと漢方薬・六君子湯で解消できる
◆ 内臓知覚過敏には薬のほかに唐辛子も効果あり
◆ まずストレスで胃が働かなくなり、悪循環におちいる
◆ 寝る前に食べると胃もたれするのは?
◆ “おなかの風邪”後の機能性ディスペプシア

江田証『過敏性腸症候群 おなかの弱い人の胃腸トラブル〈分割版〉』

『専門医が教える おなかが弱い人の胃腸トラブル』のPart3「過敏性腸症候群」を抜粋してまとめたものです。

◆ ストレスや腸内環境の悪化で腸の運動が変調する
◆ 下痢型、便秘型、混合型。3つの症状がある
◆ 下痢、便秘の症状にあわせて2種類の薬を使う
◆ 低FODMAP食で腸内異常発酵を止める
◆ 低FODMAP食 食品OK・NGリスト
◆ リラクゼーションや認知行動療法で改善
◆ おなかにまつわる噂のウソ、ホント

江田証『逆流性食道炎 おなかの弱い人の胃腸トラブル〈分割版〉』

『専門医が教える おなかが弱い人の胃腸トラブル』のPart4「逆流性食道炎」を抜粋してまとめたものです。

◆ ピロリ菌の感染率が低下して、中高年になっても胃酸が出すぎる
◆ 食道の筋力低下や感受性の強さも胃液の逆流を招く
◆ 長くほうっておくと食道がんになるおそれがある
◆ 胸焼け、吐き気が週2回以上あるなら治療が必要
◆ 胎児時代の飢餓感で将来、メタボに!?

関連書籍

江田証『機能性ディスペプシア おなかの弱い人の胃腸トラブル〈分割版〉』

「ディスペプシア」とは「消化不良」の意味。たびたび胃が痛くなる、胃もたれする、食欲がなくなる…といったことに悩まされていませんか? 胃粘膜に異常がなく、胃がん等の器質的な病気でもないのに、胃に症状がある状態を「機能性ディスペプシア」といいます。若い女性に多い、この症状。その原因と改善するための方法を、専門医がやさしく解説します。 ※本作品は、『専門医が教える おなかが弱い人の胃腸トラブル』のPart2「機能性ディスペプシア」を抜粋してまとめたものです。 〈目次〉 ◆ 5人に1人、若い女性に多い。異常はないのに胃もたれ、胃痛がある ◆ 発症のキーワードは「ふくらみ」「感受性」「ストレス」 ◆ 食べても胃がふくらまず、トラブルが連鎖していく ◆ 新薬アコチアミドと漢方薬・六君子湯で解消できる ◆ 内臓知覚過敏には薬のほかに唐辛子も効果あり ◆ まずストレスで胃が働かなくなり、悪循環におちいる ◆ 寝る前に食べると胃もたれするのは? ◆ “おなかの風邪”後の機能性ディスペプシア

江田証『過敏性腸症候群 おなかの弱い人の胃腸トラブル〈分割版〉』

子供の頃からすぐ下痢をしたり、便秘になって腹痛に悩まされている…そんな人は過敏性腸症候群の疑いあり。大きな原因はストレスで、10代から始まり、20〜30代の男性ビジネスマンによく見られるトラブルです。排便すると痛みや不快な症状はやわらぎますが、たびたび起こると仕事にも集中できなくなりますね。具体的な改善方法を、専門医がわかりやすく解説します。 ※本作品は、『専門医が教える おなかが弱い人の胃腸トラブル』のPart3「過敏性腸症候群」を抜粋してまとめたものです。 〈目次〉 ◆ ストレスや腸内環境の悪化で腸の運動が変調する ◆ 下痢型、便秘型、混合型。3つの症状がある ◆ 下痢、便秘の症状にあわせて2種類の薬を使う ◆ 低FODMAP食で腸内異常発酵を止める ◆ 低FODMAP食 食品OK・NGリスト ◆ リラクゼーションや認知行動療法で改善 ◆ おなかにまつわる噂のウソ、ホント

江田証『逆流性食道炎 おなかの弱い人の胃腸トラブル〈分割版〉』

中高年に急増中! 胸焼け、吐き気、喉に違和感、酸っぱいものがこみ上げてくる…出すぎた胃酸が食道のほうに逆流すると、こうした症状が起こります。若い時から、ファストフードなど脂肪分の高いモーニングセットをよく食べたり、深夜寝る直前に食べすぎている人に出やすい症状です。不快感を取り除くにはどうしたらいいのでしょうか。専門医がくわしく解説します。 ※本作品は、『専門医が教える おなかが弱い人の胃腸トラブル』のPart4「逆流性食道炎」を抜粋してまとめたものです。 〈目次〉 ◆ ピロリ菌の感染率が低下して、中高年になっても胃酸が出すぎる ◆ 食道の筋力低下や感受性の強さも胃液の逆流を招く ◆ 長くほうっておくと食道がんになるおそれがある ◆ 胸焼け、吐き気が週2回以上あるなら治療が必要 ◆ 胎児時代の飢餓感で将来、メタボに!?

江田証『医者が患者に教えない病気の真実』

胃がんは感染する!? 風呂に浸からない人はがんになりやすい!? 低体温の人ほど長生きできる!? 鮭やエビを食べれば視力が回復する!? 毎日200人の患者を診察するスーパードクターが、ダイエットやアンチエイジングから、がんや認知症予防まで最新の「健康長寿のヒント」72項目を徹底解説。今日から実践すれば、あなたの健康と未来は輝きます! 【本文内 FODMAPに関する補足】 豆乳は、乳製品の中では、低乳糖(低ラクトース)であるため、乳糖不耐症だけならば飲用しても大丈夫です。 ただ、豆乳には種類があり、中にはオリゴ糖をたくさん含むものとそうでないものがあります。 豆乳には「大豆から作られた」ものと「大豆抽出物から作られた」ものがあります。 「大豆から作られた」豆乳には、ガラクトオリゴ糖(GOS)が豊富に含まれるため 過敏性腸症候群の人は避けるべきでしょう。 これは大豆にガラクトオリゴ糖(GOS)が豊富に含まれますので当然のことと言えます。 一方、「大豆抽出物から作られた」豆乳には、FODMAPの成分である、 ガラクトオリゴ糖(GOS)、フルクタン、ポリオール、ラクトースも含まれていません。 つまり、豆乳は、大豆から作られたものではなく、大豆抽出物から作られたものを選ぶことが重要なのです。 すべての豆乳が高FODMAP食ではないので、乳製品が飲みたい人には救いです。 「豆乳(大豆から作ったもの)」は避け(高FODMAP食)、「豆乳(大豆抽出物から作ったもの)」は 食べても大丈夫(低FODMAP食)と覚えておいてください。

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江田証

1971年、栃木県生まれ。医学博士。自治医科大学大学院医学研究科修了。江田クリニック院長。日本消化器病学会奨励賞受賞。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。米国消化器病学会(AGA)インターナショナルメンバーを務める。毎日、国内外から最新の治療法を求めて来院する、お腹の不調をかかえた患者を胃内視鏡・大腸内視鏡で診察し、改善させることを生きがいにしている。著書に『医者が患者に教えない病気の真実』『病気が長引く人、回復がはやい人』『おなかの弱い人の胃腸トラブル』『腸内細菌の逆襲』(すべて幻冬舎)などがある。

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