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じつは治せる“おなかの弱い人”の胃腸トラブル

2016.07.20 公開 ポスト

20年前のなんと2倍!日本民族に忍び寄る胃酸の脅威
江田証

「おなかが弱いのは体質だから…」「こんなことでわざわざ病院に行くのは恥ずかしい」など、おなかの不調に慣れてしまい放置している、"おなかの弱い”あなた。
胃がん・大腸がんなど大きい病気を見過ごしてしまうかもしれないというリスクもそうですが、胃腸にトラブルがある・ないでは日々の生活の質も雲泥の差。きちんと治療をすることが大事です。
 胃がん発生に重要な働きをしている特定の遺伝子がピロリ菌感染胃粘膜に発現していることを世界で初めて発表し、毎日全国からの患者さんを診察している消化器内科医、江田証さんによる著書『専門医が教える おなかの弱い人の胃腸トラブル』より、おなかの不調の原因とその治療法を紹介します。


<日本人に急増中!胸焼け&吐き気、喉に違和感は要注意>

逆流性食道炎に悩む日本人が増えています。
日本民族全体として胃酸が出る体質に変わってきているのです。 日本人の胃酸分泌能は、20年前の日本人と比べてなんと2倍になっています(1970年代から1990年代にかけて増加)。これは若い年齢層でのピロリ菌感染率の低下と、成長期に脂肪分の多い食事をすることで胃酸が出やすい体質になることが原因です。

 特に胸焼けや吐き気などの症状が、週に2回以上ある場合は治療が必要です。
 逆流性食道炎の多くは胃酸の過剰分泌が原因。
 基本的には脂肪分の多い食事を抑えるなどの食生活の改善をし、必要なら胃酸の分泌をおさえる薬をのみます。

 医療機関では、プロトンポンプ阻害薬(PPI)が処方されます。プロトンポンプ阻害薬は、しっかり胃酸を抑えることができ、症状を速やかに改善します。
 ほかにもH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)や胃酸中和薬、漢方薬などを使います。  
 これらの薬を4週間ほど使っても症状が改善しない場合には、ストレスが原因の可能性もあります。抗不安薬や抗うつ薬などを併用することもあります。

 逆流性食道炎を放置すると、バレット食道という食道がんの元となる粘膜が出現し、バレット食道→食道腺がんに進行することもあるので胸焼けを甘く見ないように

 また、黒い便が出たり、吐血などがあった場合は、すぐに医師に伝えてください。逆流性食道炎ではなく、食道潰瘍や胃や十二指腸からの出血など別の病気の可能性があります。薬物療法とともに、食生活や生活リズムの改善、運動をして肥満を防ぐといった生活習慣の改善も行います。

<まず、薬で胃酸の分泌をおさえ、4週間様子を見る>

胃酸分泌をおさえる薬を服用し、それで変化が見られないときには、胃の運動を改善する薬や抑うつをとり除く薬を併用することもあります。

◆胃酸の分泌をおさえる薬をのむ
胃酸分泌抑制薬を服用(内臓知覚過敏による機能性ディスペプシアでとられる処方と同じ)。医療機関ではプロトンポンプ阻害薬やH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)を服用する。

↓経過観察 約4週間で効き目がないときは……

◆胃運動改善薬・抗不安薬・抗うつ薬をのむ
ストレスが原因となって、食道の粘膜の感受性が強まり、過敏になっている可能性がある。胃の運動を改善する薬や、不安や抑うつをやわらげる薬を併用する。


<中高年に急増中!逆流性食道炎 チェックリスト>
薬の服用とともに、食事内容、食事のとり方を改めましょう。姿勢がわるい、食後寝ころがるなどの知らず知らず行っている習慣も、胃酸逆流の原因となることがあります。
下記チェックリストを参考に、生活全般を見直しましょう。

運動習慣改善
□定期的に運動し、筋力をつける。
□太りすぎないようにする。
□食事中、食後に背中を曲げないようにする。

生活リズム改善
□早寝早起き、3食食べて生活リズムを整える。
□タバコをやめる。
□食後30分は横にならない。
□ストレスをためない。

食生活改善
□油もの、揚げもの類、脂肪分の多い食事は控える。
□熱いもの、辛いものは控える。
□ゆっくり時間をかけ、よく噛んでから食べる。
□腹八分目を心がける。
□オレンジジュースは酸度が高く刺激性が高いので控える。
□炭水化物制限が有効なことも多い。


<食後2時間以内にガムを噛むのがおすすめ>
 焼き肉店で食後にガムを渡されることがありますが、ガムを噛むことには口臭予防だけでなく胸焼けをおさえる効果もあります。
 ガムを噛むと唾液が多く出て、胃酸を中和してくれるのです。胸焼け予防には食後2時間以内にガムを噛むとよいでしょう。
 
次回「3つのルールをまず3日。おなかを強くする食生活。」は7月23日(土)公開予定です。

江田証『専門医が教える おなかの弱い人の胃腸トラブル』

「またおなかの調子が悪い」は治せる病気です! おなかの不調に慣れてしまっているすべての人のための、専門医が教える治療法大全!

ふだんから、「おなかの存在」を意識していませんか?
しくしく痛む、もたれる、はっている、キュルキュル鳴る…。
「おなかの存在」を意識する必要がなくなれば、生活の質は一気に上がります。
あらゆる胃腸のトラブルへの対処法を、専門医がわかりやすく徹底的に解説。
これさえ読めば、あなたも胃腸の悩みいらず!

江田証『機能性ディスペプシア おなかの弱い人の胃腸トラブル〈分割版〉』

『専門医が教える おなかが弱い人の胃腸トラブル』のPart2「機能性ディスペプシア」を抜粋してまとめたものです。

◆ 5人に1人、若い女性に多い。異常はないのに胃もたれ、胃痛がある
◆ 発症のキーワードは「ふくらみ」「感受性」「ストレス」
◆ 食べても胃がふくらまず、トラブルが連鎖していく
◆ 新薬アコチアミドと漢方薬・六君子湯で解消できる
◆ 内臓知覚過敏には薬のほかに唐辛子も効果あり
◆ まずストレスで胃が働かなくなり、悪循環におちいる
◆ 寝る前に食べると胃もたれするのは?
◆ “おなかの風邪”後の機能性ディスペプシア

江田証『過敏性腸症候群 おなかの弱い人の胃腸トラブル〈分割版〉』

『専門医が教える おなかが弱い人の胃腸トラブル』のPart3「過敏性腸症候群」を抜粋してまとめたものです。

◆ ストレスや腸内環境の悪化で腸の運動が変調する
◆ 下痢型、便秘型、混合型。3つの症状がある
◆ 下痢、便秘の症状にあわせて2種類の薬を使う
◆ 低FODMAP食で腸内異常発酵を止める
◆ 低FODMAP食 食品OK・NGリスト
◆ リラクゼーションや認知行動療法で改善
◆ おなかにまつわる噂のウソ、ホント

江田証『逆流性食道炎 おなかの弱い人の胃腸トラブル〈分割版〉』

『専門医が教える おなかが弱い人の胃腸トラブル』のPart4「逆流性食道炎」を抜粋してまとめたものです。

◆ ピロリ菌の感染率が低下して、中高年になっても胃酸が出すぎる
◆ 食道の筋力低下や感受性の強さも胃液の逆流を招く
◆ 長くほうっておくと食道がんになるおそれがある
◆ 胸焼け、吐き気が週2回以上あるなら治療が必要
◆ 胎児時代の飢餓感で将来、メタボに!?

関連書籍

江田証『機能性ディスペプシア おなかの弱い人の胃腸トラブル〈分割版〉』

「ディスペプシア」とは「消化不良」の意味。たびたび胃が痛くなる、胃もたれする、食欲がなくなる…といったことに悩まされていませんか? 胃粘膜に異常がなく、胃がん等の器質的な病気でもないのに、胃に症状がある状態を「機能性ディスペプシア」といいます。若い女性に多い、この症状。その原因と改善するための方法を、専門医がやさしく解説します。 ※本作品は、『専門医が教える おなかが弱い人の胃腸トラブル』のPart2「機能性ディスペプシア」を抜粋してまとめたものです。 〈目次〉 ◆ 5人に1人、若い女性に多い。異常はないのに胃もたれ、胃痛がある ◆ 発症のキーワードは「ふくらみ」「感受性」「ストレス」 ◆ 食べても胃がふくらまず、トラブルが連鎖していく ◆ 新薬アコチアミドと漢方薬・六君子湯で解消できる ◆ 内臓知覚過敏には薬のほかに唐辛子も効果あり ◆ まずストレスで胃が働かなくなり、悪循環におちいる ◆ 寝る前に食べると胃もたれするのは? ◆ “おなかの風邪”後の機能性ディスペプシア

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子供の頃からすぐ下痢をしたり、便秘になって腹痛に悩まされている…そんな人は過敏性腸症候群の疑いあり。大きな原因はストレスで、10代から始まり、20〜30代の男性ビジネスマンによく見られるトラブルです。排便すると痛みや不快な症状はやわらぎますが、たびたび起こると仕事にも集中できなくなりますね。具体的な改善方法を、専門医がわかりやすく解説します。 ※本作品は、『専門医が教える おなかが弱い人の胃腸トラブル』のPart3「過敏性腸症候群」を抜粋してまとめたものです。 〈目次〉 ◆ ストレスや腸内環境の悪化で腸の運動が変調する ◆ 下痢型、便秘型、混合型。3つの症状がある ◆ 下痢、便秘の症状にあわせて2種類の薬を使う ◆ 低FODMAP食で腸内異常発酵を止める ◆ 低FODMAP食 食品OK・NGリスト ◆ リラクゼーションや認知行動療法で改善 ◆ おなかにまつわる噂のウソ、ホント

江田証『逆流性食道炎 おなかの弱い人の胃腸トラブル〈分割版〉』

中高年に急増中! 胸焼け、吐き気、喉に違和感、酸っぱいものがこみ上げてくる…出すぎた胃酸が食道のほうに逆流すると、こうした症状が起こります。若い時から、ファストフードなど脂肪分の高いモーニングセットをよく食べたり、深夜寝る直前に食べすぎている人に出やすい症状です。不快感を取り除くにはどうしたらいいのでしょうか。専門医がくわしく解説します。 ※本作品は、『専門医が教える おなかが弱い人の胃腸トラブル』のPart4「逆流性食道炎」を抜粋してまとめたものです。 〈目次〉 ◆ ピロリ菌の感染率が低下して、中高年になっても胃酸が出すぎる ◆ 食道の筋力低下や感受性の強さも胃液の逆流を招く ◆ 長くほうっておくと食道がんになるおそれがある ◆ 胸焼け、吐き気が週2回以上あるなら治療が必要 ◆ 胎児時代の飢餓感で将来、メタボに!?

江田証『医者が患者に教えない病気の真実』

胃がんは感染する!? 風呂に浸からない人はがんになりやすい!? 低体温の人ほど長生きできる!? 鮭やエビを食べれば視力が回復する!? 毎日200人の患者を診察するスーパードクターが、ダイエットやアンチエイジングから、がんや認知症予防まで最新の「健康長寿のヒント」72項目を徹底解説。今日から実践すれば、あなたの健康と未来は輝きます! 【本文内 FODMAPに関する補足】 豆乳は、乳製品の中では、低乳糖(低ラクトース)であるため、乳糖不耐症だけならば飲用しても大丈夫です。 ただ、豆乳には種類があり、中にはオリゴ糖をたくさん含むものとそうでないものがあります。 豆乳には「大豆から作られた」ものと「大豆抽出物から作られた」ものがあります。 「大豆から作られた」豆乳には、ガラクトオリゴ糖(GOS)が豊富に含まれるため 過敏性腸症候群の人は避けるべきでしょう。 これは大豆にガラクトオリゴ糖(GOS)が豊富に含まれますので当然のことと言えます。 一方、「大豆抽出物から作られた」豆乳には、FODMAPの成分である、 ガラクトオリゴ糖(GOS)、フルクタン、ポリオール、ラクトースも含まれていません。 つまり、豆乳は、大豆から作られたものではなく、大豆抽出物から作られたものを選ぶことが重要なのです。 すべての豆乳が高FODMAP食ではないので、乳製品が飲みたい人には救いです。 「豆乳(大豆から作ったもの)」は避け(高FODMAP食)、「豆乳(大豆抽出物から作ったもの)」は 食べても大丈夫(低FODMAP食)と覚えておいてください。

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じつは治せる“おなかの弱い人”の胃腸トラブル

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江田証

1971年、栃木県生まれ。医学博士。自治医科大学大学院医学研究科修了。江田クリニック院長。日本消化器病学会奨励賞受賞。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。米国消化器病学会(AGA)インターナショナルメンバーを務める。毎日、国内外から最新の治療法を求めて来院する、お腹の不調をかかえた患者を胃内視鏡・大腸内視鏡で診察し、改善させることを生きがいにしている。著書に『医者が患者に教えない病気の真実』『病気が長引く人、回復がはやい人』『おなかの弱い人の胃腸トラブル』『腸内細菌の逆襲』(すべて幻冬舎)などがある。

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