「おなかが弱いのは体質だから…」「こんなことでわざわざ病院に行くのは恥ずかしい」など、おなかの不調に慣れてしまい放置している、"おなかの弱い”あなた。
胃がん・大腸がんなど大きい病気を見過ごしてしまうかもしれないというリスクもそうですが、胃腸にトラブルがある・ないでは日々の生活の質も雲泥の差。きちんと治療をすることが大事です。
胃がん発生に重要な働きをしている特定の遺伝子がピロリ菌感染胃粘膜に発現していることを世界で初めて発表し、毎日全国からの患者さんを診察している消化器内科医、江田証さんによる著書『専門医が教える おなかの弱い人の胃腸トラブル』より、おなかの不調の原因とその治療法を紹介します。
<日本人に急増中!胸焼け&吐き気、喉に違和感は要注意>
逆流性食道炎に悩む日本人が増えています。
日本民族全体として胃酸が出る体質に変わってきているのです。 日本人の胃酸分泌能は、20年前の日本人と比べてなんと2倍になっています(1970年代から1990年代にかけて増加)。これは若い年齢層でのピロリ菌感染率の低下と、成長期に脂肪分の多い食事をすることで胃酸が出やすい体質になることが原因です。
特に胸焼けや吐き気などの症状が、週に2回以上ある場合は治療が必要です。
逆流性食道炎の多くは胃酸の過剰分泌が原因。
基本的には脂肪分の多い食事を抑えるなどの食生活の改善をし、必要なら胃酸の分泌をおさえる薬をのみます。
医療機関では、プロトンポンプ阻害薬(PPI)が処方されます。プロトンポンプ阻害薬は、しっかり胃酸を抑えることができ、症状を速やかに改善します。
ほかにもH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)や胃酸中和薬、漢方薬などを使います。
これらの薬を4週間ほど使っても症状が改善しない場合には、ストレスが原因の可能性もあります。抗不安薬や抗うつ薬などを併用することもあります。
逆流性食道炎を放置すると、バレット食道という食道がんの元となる粘膜が出現し、バレット食道→食道腺がんに進行することもあるので胸焼けを甘く見ないように。
また、黒い便が出たり、吐血などがあった場合は、すぐに医師に伝えてください。逆流性食道炎ではなく、食道潰瘍や胃や十二指腸からの出血など別の病気の可能性があります。薬物療法とともに、食生活や生活リズムの改善、運動をして肥満を防ぐといった生活習慣の改善も行います。
<まず、薬で胃酸の分泌をおさえ、4週間様子を見る>
胃酸分泌をおさえる薬を服用し、それで変化が見られないときには、胃の運動を改善する薬や抑うつをとり除く薬を併用することもあります。
◆胃酸の分泌をおさえる薬をのむ
胃酸分泌抑制薬を服用(内臓知覚過敏による機能性ディスペプシアでとられる処方と同じ)。医療機関ではプロトンポンプ阻害薬やH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)を服用する。
↓経過観察 約4週間で効き目がないときは……
◆胃運動改善薬・抗不安薬・抗うつ薬をのむ
ストレスが原因となって、食道の粘膜の感受性が強まり、過敏になっている可能性がある。胃の運動を改善する薬や、不安や抑うつをやわらげる薬を併用する。
<中高年に急増中!逆流性食道炎 チェックリスト>
薬の服用とともに、食事内容、食事のとり方を改めましょう。姿勢がわるい、食後寝ころがるなどの知らず知らず行っている習慣も、胃酸逆流の原因となることがあります。
下記チェックリストを参考に、生活全般を見直しましょう。
運動習慣改善
□定期的に運動し、筋力をつける。
□太りすぎないようにする。
□食事中、食後に背中を曲げないようにする。
生活リズム改善
□早寝早起き、3食食べて生活リズムを整える。
□タバコをやめる。
□食後30分は横にならない。
□ストレスをためない。
食生活改善
□油もの、揚げもの類、脂肪分の多い食事は控える。
□熱いもの、辛いものは控える。
□ゆっくり時間をかけ、よく噛んでから食べる。
□腹八分目を心がける。
□オレンジジュースは酸度が高く刺激性が高いので控える。
□炭水化物制限が有効なことも多い。
<食後2時間以内にガムを噛むのがおすすめ>
焼き肉店で食後にガムを渡されることがありますが、ガムを噛むことには口臭予防だけでなく胸焼けをおさえる効果もあります。
ガムを噛むと唾液が多く出て、胃酸を中和してくれるのです。胸焼け予防には食後2時間以内にガムを噛むとよいでしょう。
次回「3つのルールをまず3日。おなかを強くする食生活。」は7月23日(土)公開予定です。