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脳はあきらめない!

2016.09.19 公開 ポスト

第4回

認知症の主な原因は、糖尿病、肥満による動脈硬化瀧靖之

認知症は予防することができます。そのひとつが睡眠です。脳内に蓄積するアミロイドベータたんぱくなどの有害物質が、睡眠によって洗い流されている可能性が高いことがわかりました。

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加齢だけが認知症の要因ではない

 最近、認知症が増えているのは、高齢化が進み平均寿命が延びているためです。

 加齢というのが大きな要因ですが、それに輪をかけてリスクを上げているのが糖尿病、肥満が引き起こす動脈硬化です。

 脂質異常症、高血圧、糖尿病、肥満を生活習慣病と言います。これらを発症すると血管壁にコレステロールがたまり、血液の流れが悪くなり、さらに重症になると血栓がつまり、血管をふさいでしまいます。これが動脈硬化です。

 高血圧などの生活習慣病を放っておくと、静かに体の中で動脈硬化が進行し、ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞が起こり、取り返しのつかない事態を招いてしまうというわけです。

 そして、最近では生活習慣病の一つ、糖尿病によって認知症を引き起こす人が増えているのです。

 糖尿病が生じる主たる原因は、やはり偏食や運動不足、過度のストレスなど生活習慣がきちんとしておらず、乱れていることにあります。

 

認知症は予防できる

 認知症は、認知症サミットなどでも、一次予防で発症を抑え、二次予防で早期診断、早期診療、三次予防でそれ以上悪くならないよう進行を防ぐことが、可能な疾患だととらえられています。

 一次予防としては、生活習慣病にならない生活習慣を実践するのが何よりも大切です。

 フィンランドの研究では運動や旅行などの趣味を行うことが、認知症のリスクを下げるという結果も出ています。

 数年前から、アルツハイマー型認知症の予防や治療に関して希望の光となる数々の研究報告が発表されています。

 一つは、認知症の症状が事前につかめるようになったということです。先ほども少し触れましたが、はっきり症状が現れた時点からさかのぼって5年くらい前から、実は脳の形が変化し始めることがわかったのです。

 さらに先ほどもお伝えしましたが、15年前にはすでに脳の中に異常たんぱくの、アミロイドベータたんぱくが凝集し始めていることが判明しています。

 その兆候はPET(陽電子放出撮影法)と呼ばれる検査の画像やMRI画像を見ればわかります。これによってかなり早い段階に認知症発症を予測し、対応できるようになったわけです。

 2013年にはアメリカで、脳内に蓄積するアミロイドベータたんぱくなどの有害物質が、睡眠によって洗い流されている可能性が高いことが明らかになりました。これが本当であれば、睡眠によって認知症の進行を抑えたり遅らせることができることになります。

 日本では2014年の調査で、脳梗塞の再発を防ぐ薬が、アルツハイマー型認知症の進行を抑えると報告されていますし、アメリカではアルツハイマー病にかかると、脳がブドウ糖をエネルギーとして取り込むことができない、糖尿病の症状が起きていることもわかりました。

 さらに、糖尿病治療で使われるインスリンが、認知機能の低下を抑えることも実証されています。

 一般の薬で認知症リスクを下げられるという報告もあります。認知症は脳の中で起きている神経の炎症というとらえ方もあり、それをいかに抑えるかが大事だと言われていて、消炎鎮痛剤や血管の炎症を抑える薬などでも、どうも認知症にも効果があるのではないかと言われています。

 とはいえ、もちろん、炎症を抑えたらすべて解決するというわけではないので、認知症リスクを食事の改善や運動によって下げることの方が先決です。

 そこに薬を投与することで、より効果的になるととらえた方が良いでしょう。

 

関連書籍

瀧靖之『脳はあきらめない! 生涯健康脳で生きる 48の習慣』

日本人の平均寿命は世界一で84歳。だが、長生きだけが我々の願いではない。実際、健康寿命は74歳。亡くなる前の10年も自立した生活が送れないのだ。大きな原因のひとつに認知症がある。認知症にはアルツハイマー型、レビー小体型、脳血管性があり、特にアルツハイマー型が高い割合を占める。その要因は脳の萎縮や血管障害。それらの予防には「睡眠」「運動」「知的好奇心」の3つが重要だ。脳が生涯健康であるための習慣を、16万人の脳画像を見てきた著者が、脳の発達としくみからわかりやすく解説。

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瀧靖之

東北大学加齢医学研究所教授。医師。医学博士。1970年生まれ。東北大学大学院医学系研究科博士課程修了。東北大学加齢医学研究所機能画像医学研究分野教授。東北大学東北メディカル・メガバンク機構教授。MRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究に従事。著書に『生涯健康脳』『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える「賢い子」に育てる究極のコツ』がある。

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