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叱らない、ほめない子育ての極意

2016.10.19 公開 ポスト

スマホゲームに夢中な子ども。どうやったら勉強するようになる?岸見一郎

ミリオンセラー『嫌われる勇気』をはじめ数々の著書を通じて、「アドラー心理学」を日本中に広めた岸見一郎さん。
 実は、岸見さんがアドラー心理学と出会ったのは、子育ての悩みがきっかけでした。
当時2人のお子さんの保育園の送り迎えをしていた岸見さんは、大人の思い通りに動かない“子ども”という存在に、戸惑い試行錯誤していたそうです。そんな時、まだ日本語に翻訳されていなかったアドラーの著書を友人から借り、実行してみたところ、自身の子どもに対する考え方が大きく変化しました。

 ウィーンに世界で初めての児童相談所をつくるなど、教育に強い関心を寄せていたアルフレッド・アドラー。そのアドラーの哲学を凝縮、現代の子育ての悩みを踏まえた上で、どう「実践するか」を書いた一冊、『子どもをのばすアドラーの言葉 子育ての勇気』から、<叱らない、ほめない子育て>の極意を抜粋して紹介いたします。

即効性を求めていませんか?
ゲームに夢中になるのは可能性の中で生きるため

ゲームする、しないは子どもの課題です


もしもゲームをしなければもっといい成績が取れたのに!?

 子どもがスマートフォンのゲームにはまり、少しも勉強しないという相談をよく受けます。親がゲームに夢中になることをいけないことだと思っていたら、子どもはゲームをすることが親をイライラさせたり、怒らせるのにもっとも効果的であることを学んでしまいます。

 親は子どもにゲームばかりしていないで勉強するようにと叱れば、子どもが改心してゲームをしなくなるのではないかという希望を捨てることができないので、叱ったところで甲斐がないことを知っていても、叱ることをやめられません。もっと叱ればやめるのではないかと思います。しかし、それでも子どもがゲームをするのをやめないのは叱り方が徹底していないからではなく、叱るという方法に改善の余地があると考えるのが論理的です。

 一つの考え方としては、ゲームをするもしないも子どもが自分で決めることなので、ゲームばかりして勉強がおろそかになって成績が下がっても、子どもが自分でなんとかするしかなく、親は静観すればいいのです。

 率直にいって、親は子どもを信頼できていません。親が何もいわなければ、きっといつまでもゲームばかりし続けるに違いないと思っているのです。親が家でゲームをしている時に、いい加減にして早く寝なさいというようなことを子どもにいわれたら嫌だと思うのですけどね。普段、親からゲームをするのはやめなさいとばかりいわれている子どもは、親が「私はゲームをしているのではない、これで仕事をしているのだ」と反論してみても聞く耳を持たないでしょう。

 他方、ネット犯罪などに巻き込まれることがないように、親は子どもに注意しなければなりません。大人は子どもに適切な使い方を教えなければなりません。しかし、その時、親子関係がよくなければ、子どもは親のいうことを聞かないでしょう。

 ゲームをする、しないは、本来子どもの課題ですから、ゲームのことで子どもと話したい時は親と子どもの共同の課題にする手続きを踏む必要があります。そこで、「ゲームのことで一度話し合いをしたい」というふうに話をし、子どもが共同の課題にしてもいいといえば、親子で話し合うことができます。力ずくで取り上げたらいいではないかと思う人もあるかもしれませんが、そうすることは後々の親子関係をこじらせることになります。アドラーの方法は手間暇がかかりますが、即効性を求めないことが大切です。

 ゲームに子どもが夢中になるのは、親をイライラさせたり、怒らせたりすることで親の注目を引くためですが、子ども自身の問題としては、こんなにゲームばかりしているから勉強ができなかったと成績がよくないことの理由にしたいということがあります。もしもゲームをしていなければ、もっといい成績を取れたのにという可能性を残すことができるのです。

 親はこのような子どもに、ゲームばかりしていないで勉強しなさいというような正論をいって子どもの反発を買い、いよいよ勉強しなくなることを避けたいですし、「あなたは勉強さえしたら本当は頭がいいのだからいい成績を取れる」というようなことをいって、可能性の中に生きることを助長するようなことがないように気をつける必要があります。

次回、「メダルを取れなかったら謝るのか?」は、10月23日公開です。

関連書籍

岸見一郎『子どもをのばすアドラーの言葉 子育ての勇気』

親子関係に効くアドラー哲学 アドラー心理学研究の第一人者にして大ベストセラー『嫌われる勇気』著者・岸見一郎氏による、 子どもとよりよい関係を築くためのアドラー哲学が凝縮された一冊。 もくじ 第1章 叱らない、ほめない子育て られてばかりのスケールの小さい子 誰もがやさしい言葉をかけてくれるとは限らない 親とて子どもの人生を決められない ありのままの子どもを見よう 子どもが失敗した時は子どもが責任を取る いつか親のもとを離れていく子どもたちへ 見ている人がいるからゴミを拾うのか? 無視されるよりられた方がまし 子どものことは親が一番よく知っているという思い込み 「悪い親」がいるのではない、「下手な親」がいるのだ 体罰に正義など何もない 第2章 勉強ができる子、できない子 知らないことを知る喜び 勉強がつらいとやめてしまう子、続けられる子 たしかに入試は競争だが、仲間もつくれる 医学部の勉強は入学してからが本当に大変 明日からダイエット! そんなセリフは聞き飽きた? 勉強は家事の手伝いより大切か? 受験生だからといって家族の中で特別視しない 子どもを上から目線で見ない もしもゲームをしなければもっといい成績が取れたのに!? 子どもにイライラしたら見ないようにする 教科を教えるのではなく、教科で教える 第3章 一生強く生きられる勇気づけ 自分にはできないと思い込まない 援助は受けるだけでなく与えてこそ喜びとなる メダルを取れなかったら、謝るのか 神に呼ばれたシュバイツァー 子どもの長所に光を当てよう 自分には価値がある、と思えるか 尊敬される十一歳の偉大な指揮者 劣等感は今の自分より前に進む原動力 地道な努力をしない成功は、すぐ失われる 子どもが自分自身の判断で、子どもの人生を決める

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叱らない、ほめない子育ての極意

ミリオンセラー『嫌われる勇気』をはじめ数々の著書を通じて、「アドラー心理学」を日本中に広めた岸見一郎さん。
実は、岸見さんがアドラー心理学と出会ったのは、子育ての悩みがきっかけでした。

アドラーの哲学を凝縮、さらに自身の子育てを通じて学んだことをもとに、どう「実践するか」を書いた一冊、『子どもをのばすアドラーの言葉 子育ての勇気』から、「叱らない、ほめない子育て」の極意を抜粋して紹介いたします。

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岸見一郎

1956年、京都府生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋古代哲学史専攻)。著書に『アドラー心理学入門』(KKベストセラーズ)、『幸福の哲学』(講談社)、『人生を変える勇気 踏み出せない時のアドラー心理学』(中央公論新社)、『老いた親を愛せますか?それでも介護はやってくる』『子どもをのばすアドラーの言葉 子育ての勇気』『成功ではなく、幸福について語ろう』(幻冬舎)訳書にプラトン『ティマイオス/クリティアス』(白澤社)などがある。共著『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)はベストセラーに。

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