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生き方3.0

2013.11.27 公開 ポスト

特集 生き方3.0 よしもとばななインタビュー

どん底で希望をつかむために(第2回)よしもとばなな

大切なのは、体の声に耳を澄ませること 

 また、家族との付き合い方、その距離感は月日が経てば変化していくもの。よしもとさんは子供が10歳になった時に早くも、子離れを考えるようになったという。

「いつまでも小さい時のように接していたら子供だって鬱陶しいと思うんですよね。それに、子供が15歳ぐらいになった時、『飯なんていらない! 行ってきます!』みたいな態度を取られたら自分は寂しいんだろうなって思って。そういう時まだ子供を離せないでいると、母親の側がすごい執着してしまう気がしたんです。だから、すがっていくよりは、少し早めに切り上げて自分を確立した方がいいやと思って、10歳で切り上げてみました。そうしたら、意外と切り替えられた。早く切り替えた方がかえって子供が追いかけてきてくれるような気もします(笑)」

 エッセイの中の言葉でも、取材での言葉でも、よしもとさんの言葉には理屈抜きに納得させられるような力がある。その理由のひとつに、彼女が頭だけでなく、全身で感じ、考えているということがあるように思う。だから、すとんと腑に落ちるのだ。

「人にすごく勧められたものや場所でも、体がそっていかないってことはわりと多いんですよね。内臓的な感覚というか、腹で感じるというか、そういうところで判断したことが結局あっていたりする。だから、そういう時は自分の感覚を大事にしようと決めていますね。私の場合、そういう感覚が磨かれたのは、紙一重の場面をいっぱい切り抜けてきたからだと思います。わりと洗脳しようとする人とかによく会うので (笑)。怖いし、絶対無理って思うわけですけど、それを最初から前面に出してたら向こうに何されるか分からない。だから、『ほんとですねー!』ってその場の空気にある程度応じた上で、最終的に逃げるってことを繰り返してきたら、段々分かってきたのかもしれませんね。そういう時、本当に逃げるには、肉を切らせて骨を断つというか、ぎりぎりまでいって『いや、違う!』ってところを見つけないといけないので。そういうことを繰り返していたら、体のサインにきちんと気づけるようになりました。人はどうしても頭で考えるから、『あと10分いたら楽しくなるんじゃないか』とか自分を騙して、その場をしのごうとしたりする。でも、体の声に耳を澄ませることが、生きていく上で、結構大切なのかなって自分では思っています」

(取材・文:小山田桐子 写真:小嶋淑子)

※このインタビューは全3回です。次回は12月2日(月)に掲載予定です。

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よしもとばなな

1964年東京都生まれ。「キッチン」で海燕新人文学賞を受け、デビュー。「TUGUMI」で山本周五郎賞、「アムリタ」で紫式部文学賞、「不倫と南米」でドゥマゴ文学賞を受賞。著書は世界各国で訳され、イタリアでスカンノ賞、カプリ賞受賞。著書に『さきちゃんたちの夜』『スナックちどり』など多数。

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