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シンギュラリティ・ビジネス

2017.06.13 公開 ポスト

なぜすべての技術は儲からなくなるのか?齋藤和紀

最初は誰もが失望し、裏切られる

 指数関数のグラフは、初期段階ではほとんど上昇しません。しばらくは、ほぼ横軸と平行に近い形で推移します。直線的な成長をイメージする人にとっては、期待を下回るレベルにしかならないのです。

 これが、「6D」の2番目に起こる「潜行」にほかなりません。私は直線的な成長予想を下回るという意味を込めて「潜行」と表現していますが、英語の「Deception」は「欺瞞(ぎまん)」「詐欺」が本来の意味です。デジタル化によって派手なイノベーションが起きると思っていた人々が、詐欺師に騙(だま)されたような気分になる。「裏切られた」という感覚にも近いかもしれません。

 エクスポネンシャルな成長は、当初は誰も気づかないほど小さなレベルで進行します。デジタルカメラの画素数でいえば、0.01一メガピクセルを倍にしても0.02メガピクセルにしかなりません。比では2倍でも、差はわずか0.01メガピクセル。さらに倍々で進化しても、0.04、0.08とケタが変わらないので、誤差の範囲のようにしか感じられないでしょう。

 しかしエクスポネンシャルな進化は、やがて次の段階を迎えます。当初は横軸と平行に推移していたグラフが徐々に上向きになり、あるポイントで直線的な成長予想を突破する。最初は「大したことないじゃないか」と失望していた人々が、「これは思っていたよりもすごい」と気づく瞬間です。

 ディアマンディスはこの段階を「破壊」と呼びました。そこで破壊されるのは、既存の市場です。デジカメをオモチャとしか考えていなかったコダック社は、ここで市場からの撤退を余儀なくされたわけです。

 デジタル化、潜行、破壊。エクスポネンシャルな進化のグラフを見ると、この「3D」でひと区切りつくようにも思えます。しかし、これで終わりではありません。破壊というブレークスルーを果たした後も、次の「3D」が待っています。

 ディアマンディスは「破壊」に続く4番目のDとして「非収益化(Demonetization)」を挙げました。破壊的なイノベーションを果たしたのだから、その商品は大きな収益を上げるはずなのに、なぜ「非収益化」なのでしょう。

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シンギュラリティ・ビジネス

2020年代、AIは人間の知性を超え、2045年には、科学技術の進化の速度が無限大になる「シンギュラリティ」が到来する。そのとき、何が起きるのか? ビジネスのありかた、私たちの働き方はどう変わるのか?

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齋藤和紀

1974年生まれ。早稲田大学人間科学部卒、同大学院ファイナンス研究科修了。シンギュラリティ大学エグゼクティブプログラム修了。2017年シンギュラリティ大学グローバルインパクトチャレンジ・オーガーナイザー。金融庁職員、石油化学メーカーの経理部長を経た後、ベンチャー業界へ。シリコンバレーの投資家・大企業からの資金調達をリードするなど、成長期にあるベンチャーや過渡期にある企業を財務経理のスペシャリストとして支える。エクスポネンシャル・ジャパン共同代表、Spectee社CFO、iROBOTICS社CFO、Exoコンサルタント。

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