成功と幸福を同一視しないことから始めよう。
アドラー哲学「嫌われる勇気」岸見一郎による幸福論の決定版
高校生へ語った伝説の講演「これからの人生をどう生きるか」も完全収録!
アドラー心理学の第一人者であり、大ベストセラー『嫌われる勇気』著者、岸見一郎さんによる最新刊『成功ではなく、幸福について語ろう』の発売を記念して、幻冬舎plusで反響の高かった人生相談の内容をリバイバル公開いたします。
また発売記念第2弾企画として、岸見先生へ直接悩みを相談できるイベントも実施いたします。
大切な人が重い病気にかかってしまいました。何もできない自分が情けなく、どうしたら力になれるでしょうか。(49歳女性 主婦)
とても大切な人が重い病気にかかっていることがわかりました。
その人は、末期のがんで手術の方法がないと言われたそうですが、抗がん剤治療を受けながらも、完治の可能性を探していくつかの病院をまわっています。
私は医学的な知識もなく、その人の役に立てることがなく、またどんな言葉をかけていいかもわからず、呆然とするばかりです。どうしたらいいのかわからない、そんな自分が情けなくて仕方ありません。(49歳女性 主婦)
まず、病に立ち向かっているその人のことを信頼する
その大切な方を信頼することが必要です。
その人が自分の置かれた状況にあって、自力で自分しか解決できない課題に立ち向かえる人だということを信じるということです。
だから何もしなくていいというのではありません。たとえあなたが何もできなくても、その人は病気に向き合うという課題を自力で解決できると信頼した上で、今、病気に向き合っているその人の力になりたいと思うのは当然です。
しかし、力になりたいと思っても、どうしたらいいのかわからないということはあります。何ができるかわからなければ「何かできることはないか」とたずねればいいのです。 実際、このような場合、どうしたらいいかわかる人などいないのではないかと私は思います。
何もできなくても、どんな言葉をかけていいかわからなくても、その人に会えるのなら、会いに行きたいと思いませんか。それなら会いにいって「心配なので取るものも取りあえず会いにきた」といえばいいのです。
治る見込みがない子どもの主治医に、アドラーが言った言葉
よく思い出すエピソードがあります。
病気の子どもの親に回復の見込みはないと告げた主治医にアドラーがいいました。
「どうしてわれわれにそんなことがいえるだろう。これから何が起こるか、どうしたら知ることができるだろう」
これから起こることは何も決まっていません。
先のことは誰にもわかりません。
あなたができることは、共に過ごす時間を大切にすることだけです。