中国医学では、人間の体は、加齢によっていろいろなところの流れが悪くなったり、不要なものを出せなくなったりして、「自家製の毒」を溜めていくと考えます。
さまざまな体の不調や、肌のシミ・しわ・くすみなどの原因にもなる「毒」をデトックスするにはどうすればいいのでしょうか?
阪口珠未さんが新刊『老いない体をつくる中国医学入門――決め手は五臓の「腎」の力』の中から解説します。
(記事の終わりには阪口珠未さんの講座のご案内があります)
老けない体づくりの秘訣は「食べ過ぎない」
腎精=若さの素は、先天的な精、つまり、生まれ持ったエネルギーとして腎が蓄えているものです。では、もともと生まれ持った「腎精」バッテリーの容量が少なければ、健康でいられないし、長生きもできないのでしょうか。
もちろんそんなことはありません。その鍵を握っているのが「脾(ひ)」です。
「脾」は腎にエネルギーを与え続けている臓器です。腎が「先天の精」を宿す場所と言われるのに対し、脾は、「後天の精」を作る場所、「後天の本」と言われます。脾の働きは、食べた固形物や水分を消化し、エッセンスを作り出し、それを気のエネルギーと血の栄養に換え、体の器官を養うというものです。胃や小腸の消化する機能、すい臓の消化液を作る機能、脾臓の血を作る機能という、消化まわり全体の働きを含むのが、「脾」なのです。
先天的な力が弱かったとしても、お腹を大切にし、消化に負担のかからない食事を心がけて気や血を作れるようにすれば、間接的に腎精をチャージすることができます。
「消化器を重視する」のは、世界中のいろいろな養生法、健康法で、共通していることでもあります。たとえば、江戸時代の養生家・貝原益軒さん。江戸時代のベストセラー『養生訓』でも、もっとも大切にされているのは、脾を大切にする食べ物と食べ方です。とくに、「お腹を温めること」と「お腹いっぱい食べてはいけない」ことを強調しています。
私の薬膳の先生も、老けない体づくりのモットーは、「食べすぎない」でした。
「学会の後などの宴会でごちそうを食べた日の夜は、お腹を温めるネギとショウガのスープを飲んで寝てしまうんだよ。そうすると次の日には、お腹がすっきり空っぽになっていて、また元気に仕事ができる。若い人のように、3食きちんとお腹いっぱい食べていたら、今頃、私の寿命は尽きてるよ」
と言っていたのを思い出します。
食べたものが栄養となるためには、条件があります。それは、食べたものが消化できていることです。消化できたものは、気のエネルギーと血の栄養となって、体のあちこちへ送られ、腎にも送られて精として、チャージされます。
しかし、食べすぎて消化しきれなかったものは、体に溜まり、血を汚し、エネルギーの流れをせき止める「毒」となってしまいます。
中国医学では、このような未消化物質のことを、一時的なものは「食積(しょくせき)」と呼び、慢性化して重症化したものを、「痰(たん)」と言います。どちらも糖尿病や循環器系の疾患のもとになります。食積や痰は腎にとって負担になるため、食べることでかえって腎精エネルギーを消耗することになってしまうのです。
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