2000年の歴史を持つ中国伝統医学では「食こそ薬」、食材のすべてに薬効があると考えます。年齢、体の状態や体質、季節、病気の種類によって、何をどう食べたらよいのか、何を食べないほうがよいのかをアレンジするのが「薬膳」。
「難しそう」「面倒くさそう」と思うかもしれませんが、実は、薬膳は、スーパーやコンビニで売っているありふれた食材で、簡単に始められます。
56歳、不健康のきわみだった男性が、半信半疑で薬膳生活を始めたら、心と体にどんな変化が起きたのでしょうか?
阪口珠未さんの新刊『老いない体をつくる中国医学入門――決め手は五臓の「腎」の力』からご紹介します。
(記事の終わりには阪口珠未さんの講座のご案内があります)
野菜は嫌い、酢の物も果物も食べられなかったのが…
加藤さんは、私がコンサルティングをさせていただいているフードサービス会社の統括マネージャーで、56歳です。
初めてお会いしたのは5年前。スタッフのみなさんと焼き肉を食べに行ったときには、肉をほかの人のために焼くばっかりで自分はほとんど食べない、顔色の悪い男性という印象でした。
そんな彼が、今は薬膳を毎日食べるのが当たり前という生活になったそうです。
なぜ薬膳を始めたのか、それにより心身にどんな変化が起きたのかについて、お話ししてもらいました。
――5年前は、どんな生活でした?
1日にアイスコーヒーなら2リットルぐらいは飲んでいました。タバコは1日20本。野菜は嫌いでほとんど食べない。酢の物も果物もNG。食べる芋類はフライドポテトだけでした。
――なぜ薬膳をとり入れることにしたんですか?
会社で阪口先生の薬膳をとり入れることになり、販売企画室で試作調理を任されていたから、レシピを現場向けに試作して、試食をしないといけなくなったんです。でも薬膳なんて、まずいんちゃうのと思ってました。
――まずかったですか?
ところが、実際食べてみたら、案外いけるやんと思った。長芋のフライドポテトとか、黒ゴマでケーキを作るとか、僕が思っている薬膳のイメージと違っていた。
それで、家に本を持って帰って、「会社で薬膳やってるねん」って奥さんに話したら、家でもやってみようかということになって、家で作ってくれるようになりました。
夏だとウリ科やナス科の、薬膳でよく登場する食材が出てきました。「うわー食べられるかな」と思いましたが、出されたものを残すとケンカになるから、最初は仕方なく食べていたら、だんだん慣れてきて、まんざらでもないなという感じになりました。
――2年半ぐらいたった頃に、タバコを止めましたよね?
頭痛と歯痛があって、ほぼ毎日鎮痛剤を飲んでいたから、タバコを止めてみようと思い立ちました。
口が寂しいので、食事に野菜が出てきても、残さずに食べるようになりました。そしたら、今まで毎日1袋食べていたスナック菓子も自然に食べなくなった。タバコとコーヒーを減らしたら太ってきたので、ジムに通い始めて、ときどき汗を流すようにもなりました。
――ここ1年ぐらいで変化はありましたか?
阪口さんにすすめられてもどうしても苦手だったドライフルーツやレーズンが、不思議とおいしく感じられるようになってきました。果物や酢の物も今は食べますね。梅干しと納豆以外は、何でも食べられるようになったことに、自分でもびっくりしています。
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