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2019.03.28 公開 ポスト

今回の改元はなぜ「革命」と言えるのか【片山杜秀×白井聡】片山杜秀

天皇から神という性質をなくす革命

白井 本当にそんなに上手くいくものだろうかという疑問はさておくとして、安岡理論によれば、天皇のお言葉が表に出ちゃうのは大変なことですよね。これはまさに天皇自らによる革命にほかならない。

片山 安岡思想で言えば、官吏も大臣も天皇の意思が徹見できなくなっちゃったわけですよ。官吏が地に落ちたがゆえに、天皇自らが革命の言葉を発しなければならない状況になった。ところが国民のほうも徹見能力が低すぎて反応が鈍い。

白井 そうなんですよ。あまりにもあのお言葉への反応が鈍いので、私は著書の中で自分なりの解釈を書いたんですけど、あれは徹見の努力だったのか(笑)。

片山 広い意味では白井さんも安岡の徒かもしれない(笑)。

一世一元について言えば、崩御による改元と代替わりというシステムは、戦後民主主義になっても継続しました。昭和天皇のときは、深夜にNHKをつけるとずっと二重橋が映っていて、まるで戦前のような雰囲気でしたよね。天皇の病状が刻々と伝えられて、「いつ崩御するんだ」という緊張感と、ある種の異常な興奮があった。元号が天皇の死によって改まり、それによって新しい時代が訪れるのは、神なる性質に基づく仕掛けです。

今上天皇のお言葉は、そういう改元の性質を完全に変えてしまうメッセージでした。天皇の代替わりによって元号が変わるという意味での「一世一元」は今後も続きますが、崩御を伴わない改元は、天皇から神という性質をなくすという意味でひとつの革命でしょう。それを安倍内閣も飲まざるを得ず、あのビデオメッセージが発せられたわけです。

しかもそれに加えて、もしかしたら闇に葬られたかもしれない問題もあったわけですよ。

白井聡『国体論 菊と星条旗』

いかにすれば日本は、自立した国、主体的に生きる国になりうるのか? 鍵を握るのは、天皇とアメリカ――。誰も書かなかった、日本の深層! 自発的な対米従属を、戦後七〇年あまり続ける、不思議の国・日本。 この呪縛の謎を解くカギは、「国体」にあった!  「戦前の国体=天皇」から「戦後の国体=アメリカ」へ。 気鋭の政治学者が、この国の深層を切り裂き、未来への扉を開く!

 

関連書籍

片山杜秀『平成精神史 天皇・災害・ナショナリズム』

度重なる自然災害によって国土は破壊され、資本主義の行き詰まりにより、国民はもはや経済成長の恩恵を享受できない。何のヴィジョンもない政治家が、己の利益のためだけに結託し、浅薄なナショナリズムを喧伝する――「平らかに成る」からは程遠かった平成を、今上天皇は自らのご意志によって終わらせた。この三〇年間に蔓延した、ニヒリズム、刹那主義という精神的退廃を、日本人は次の時代に乗り越えることができるのか。博覧強記の思想家が、政治・経済・社会・文化を縦横無尽に論じ切った平成論の決定版。

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片山杜秀

1963年、宮城県生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学。思想史家、音楽評論家。慶應義塾大学法学部教授。専攻は近代政治思想史、政治文化論。『音盤考現学』『音盤博物誌』(ともにアルテスパブリッシング、吉田秀和賞とサントリー学芸賞受賞)、『未完のファシズム』(新潮選書、司馬遼太郎賞受賞)、『「五箇条の誓文」で解く日本史』(NHK出版新書)、『平成史』(佐藤優氏との共著、小学館)など著書多数

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