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美智子さまという奇跡

2019.04.18 公開 ポスト

令和の天皇皇后両陛下には「皇室の当事者研究」をお願いしたい斎藤環(精神科医)/矢部万紀子(コラムニスト)

宮中祭祀の見直しほか、レジリエントな皇室を

矢部 平成という時代に、天皇の存在感が薄くなったのだとしたら、その延長で新しい時代の天皇と皇后は、災害の時にだけ存在感を示すくらいでいいのでは、となりますね。

斎藤 まさにそれでいいと私は思っています。とにかく肉体的負担が大きすぎるし、ブラック企業みたいな皇室の状況を緩和していただかないと。

矢部 お休みもないし。

斎藤 余暇も少ない。ちょっとでもセレブ的な暮らしをすると、叩かれる。

矢部 ミシュランの星付きレストランに行こうものなら、ひどかったですよね、雅子さま。皇室は禁欲とセットであれというような。

斎藤 そういう制度はもう持たないだろうと、天皇はどこかで思っていらっしゃるんじゃないですか。そう私は思います。だって、どう考えてもね、これから嫁いでくる人が出てくるとは思えない(笑)。

矢部 悠仁さまが次世代のたった一人の男子で、その人に嫁ぐ勇気のある女性がいるとは、私にも思えません。イギリス王室のように、女優を辞めても嫁ぎたくなるようになるにはどうすればいいのやら。

斎藤 セレブ的な生活をしてもらっても、別にいいと思うんですけど。日本の皇室は道義的規範の体現者のようであることが求められて、日本で最も窮屈な立場じゃないですか。象徴天皇になって、それが加速している。

矢部 せめて、宮中祭祀はやめないと、なんて。

斎藤 祈ることは祭祀でなくてもできると思いますが、まずは祭祀のあり方を見直したらいい。身を清めるだの何だの、手順が多すぎるのをぐっと簡略化して。そうすれば続けやすくなる。

矢部 簡略化しても、外には見えないですしね。

斎藤 新しい時代には、いろいろ改革を起こしていってほしいですね。そうだ、思いつきですが、お二人のテーマの一つとして、皇室の制度設計はどうでしょうか。

矢部 それはいいですね。政権に任せておいても、まじめに検討などしませんから。

斎藤 当事者性がないから、政権はダメです。当事者研究をしていただくんです。宮中祭祀を含め、皇室の機能は何なのか、を。

矢部 それが皇室の存在意義につながりますよね。

斎藤 制度疲労を自覚した上で、存続しやすい制度設計はどうするのがいいのかと、考えていただく。

矢部 制度改革ができれば、日本の少子化も解決できるということになるかもしれませんね。

斎藤 なると思います。状況を変えればいろいろな可能性が見えてくるということがわかるだけでも、違うと思いますから。盤石な天皇制にも自由の要素が取り込まれるなら、可能性は広がりますよね。

矢部 嫁ぎたい人続々。そんな皇室になるような。そのための制度改革ですね。

斎藤 私も参加したいという人が出てくれば、言うことなしですよね。変化を示せるかどうかが焦点だと思います。変化して生き残る。レジリエントな皇室というテーマが見えてきました。

矢部万紀子『美智子さまという奇跡』

1959(昭和34)年、初の民間出身皇太子妃となった美智子さま。 その美しさと聡明さで空前のミッチーブームが起き、 皇后即位後も、戦跡や被災地を幾度となく訪れ、ますます国民の敬愛を集められます。 美智子さまは、まさに戦後の皇室を救った“奇跡”でした。 ですが、奇跡は、たびたび起こることがないから、奇跡と言われます。 今私たちの目に映るのは、雅子さまの心の病や眞子さまの結婚問題等、 次の世代の方々が、世間にありふれた悩みを抱えている姿です。 美智子さまの退位と共に、皇室が「特別な存在」 「すばらしい家族」である時代も終わるのでしょうか? 皇室報道に長く携わった著者が「奇跡の軌跡」をたどる、等身大の皇室論です。

 

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美智子さまという奇跡

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斎藤環 精神科医

1961年、岩手県生まれ。医学博士。筑波大学医学医療系社会精神保健学教授。専門は思春期・青年期の精神病理学、病跡学、精神分析、精神療法。「ひきこもり」ならびに、フィンランド発祥のケアの手法・思想である「オープン・ダイアローグ」の啓蒙活動に精力的に取り組む。漫画・映画などのサブカルチャー愛好家としても知られる。主な著書に『戦闘美少女の精神分析』『ひきこもりはなぜ「治る」のか?』(以上、ちくま文庫)、『アーティストは境界線上で踊る』(みすず書房)、『「社会的うつ病」の治し方』(新潮選書)、『世界が土曜の夜の夢なら』(角川文庫)、『承認をめぐる病』(日本評論社)、『人間にとって健康とは何か』(PHP新書)、『オープンダイアローグとは何か』(医学書院)などがある。

矢部万紀子 コラムニスト

1961年三重県生まれ。コラムニスト。83年朝日新聞社に入社し、記者に。宇都宮支局、学芸部を経て、「アエラ」、経済部、「週刊朝日」に所属。94年、95年、「週刊朝日」で担当したコラムをまとめた松本人志『遺書』『松本』(ともに朝日新聞出版)がミリオンセラーになる。「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理をつとめたのち、書籍編集部で部長をつとめ、2011年、朝日新聞社を退社。シニア雑誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長となる。17年に株式会社ハルメクを退社し、フリーランスで各種メディアに寄稿している。著書に『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)がある。

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