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気持ちのいいことが、好き。「“官能”と“快楽”の回路を開くために」

2014.01.19 公開 ポスト

特集<気持ちのいいことが、好き。>

第2回 気持ちのいいことになぜ、罪悪感を抱くのか?植島啓司/湯山玲子

日本男子はオナニーパワーで世界にハバタク!?

湯山 アートの世界の話で面白いのはね、日本人は、クールジャパンで世界に出てるじゃないですか。ジブリアニメもそうですよね。そのつくり手は日本の男子。あの妄想力、オナニーパワーっていうんですかね、これが売り物になってるの。関係性じゃないんですよね。鴨長明みたいな。

男子のオタクパワーの元祖といえるかもしれません

植島 ああ、『方丈記』ね。

湯山 四畳半に住みながら、心は千里を駆けるって、これ、妄想力ですよ。妄想の力が強いんで、やっぱりアニメとかつくらせたら、とてつもないですよね。

植島 日本の文化って、そういう妄想パワーっていうものが強過ぎるんだね。吉田兼好もそうだし、松尾芭蕉もそうだし。ないものをダーッとつくり出していく。海外でのジャパンデーとかジャパンエキスポとかが人気なのもそこなんだよね。

湯山 すごく面白い例があってね、私、クラブミュージックに39歳でハマって、世界のクラブをいちばん踊った40代なんですね(笑)。本も一冊書いちゃって。その時にスペインのバルセロナにある、ソナールミュージックフェスっていうエレクトリックミュージックの祭典があって、聞きに行ったんです。そこで、コーネリアスって有名なバンドのライブがあったわけ。女性のナイスグルーヴのドラマーがいて、ものすごい細かいパッセージを、全員がバッと合わせるっていうことをやるバンドで、クラブっぽく自由に聞こえてくるんだけど、実際のプレーを見ると、うわっ、よくこの間(ま)を合わせてるなって驚くくらい、ものすごく難しいことをやってるの。ワンアンドオンリーのすばらしい作曲世界で私も大ファンです。
その彼らのステージは、各国にファンも多いし盛り上がったんだけど、その時一緒に見てた現地の知り合いのデザイナーが、おもしろいことを言った。何を言ったかというと、「彼らはおもしろいけど、フェアじゃない」と。たしかに、クラブミュージック以降の音楽は、DJもそうなんですけど、発信者と受け手という二項対立ではなく、全員でこの場をつくっている。一緒にシェアしていこうといグーグル的な発想を体現している。そういうことを僕たちは共有してきたのに、戻しやがったってことなんだと思う。それは、ナチズムの話にも似ていて、受け手を圧倒する支配的な美って、感動し、ひれ伏しやすいんだよね。私も、その圧倒的なものを見せつけられて、つい感動しちゃった。でも、そういうものを日本人はつくりがち。彼がまた、「日本車の魅力のなさと似てる」と言った。

植島 魅力のなさと?

湯山 シェアだったりコミュニケーションだったり、さっき言ったクラブカルチャー的なものがわからない限り、これからの日本製品は海外でどんどん孤立するって思いますね。ちょっといま、アートの話をしましたけども。

植島 アートの話好きだから、いくらでもいいんですけども、今日は「官能」だから(笑)。

湯山 アートはまた別の話。

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植島啓司

1947年東京生まれ。宗教人類学者。東京大学卒業。東京大学大学院人文科学研究科(宗教学専攻)博士課程修了。シカゴ大学大学院に留学後、NYニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチ客員教授、関西大学教授、人間総合科学大学教授などを歴任。著書に『快楽は悪か』(朝日新聞出版)、『男が女になる病気』(朝日出版社)、『賭ける魂』(講談社現代新書)、『聖地の想像力』、『偶然のチカラ』、『世界遺産 神々の眠る「熊野」を歩く』、『生きるチカラ』『日本の聖地ベスト100』(いずれも集英社新書)、『熊野 神と仏』(原書房、共著)、監訳『図説 聖地への旅』(原書房)など。

湯山玲子

著述家、プロデューサー。日本大学芸術学部文芸学科非常勤講師。自らが寿司を握るユニット「美人寿司」、クラシックを爆音で聴く「爆音クラシック(通称・爆クラ)」を主宰するなど多彩に活動。現場主義をモットーに、クラブカルチャー、映画、音楽、食、ファッションなど、カルチャー界全般を牽引する。著書に『クラブカルチャー』(毎日新聞社)、『四十路越え!』(角川文庫)、『女装する女』(新潮新書)、『女ひとり寿司』(幻冬舎文庫)、『ベルばら手帖』(マガジンハウス)、『快楽上等!』(上野千鶴子さんとの共著。幻冬舎)、『男をこじらせる前に 男がリアルにツラい時代の処方箋』(KADOKAWA)などがある。

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