日本男子はオナニーパワーで世界にハバタク!?
湯山 アートの世界の話で面白いのはね、日本人は、クールジャパンで世界に出てるじゃないですか。ジブリアニメもそうですよね。そのつくり手は日本の男子。あの妄想力、オナニーパワーっていうんですかね、これが売り物になってるの。関係性じゃないんですよね。鴨長明みたいな。
植島 ああ、『方丈記』ね。
湯山 四畳半に住みながら、心は千里を駆けるって、これ、妄想力ですよ。妄想の力が強いんで、やっぱりアニメとかつくらせたら、とてつもないですよね。
植島 日本の文化って、そういう妄想パワーっていうものが強過ぎるんだね。吉田兼好もそうだし、松尾芭蕉もそうだし。ないものをダーッとつくり出していく。海外でのジャパンデーとかジャパンエキスポとかが人気なのもそこなんだよね。
湯山 すごく面白い例があってね、私、クラブミュージックに39歳でハマって、世界のクラブをいちばん踊った40代なんですね(笑)。本も一冊書いちゃって。その時にスペインのバルセロナにある、ソナールミュージックフェスっていうエレクトリックミュージックの祭典があって、聞きに行ったんです。そこで、コーネリアスって有名なバンドのライブがあったわけ。女性のナイスグルーヴのドラマーがいて、ものすごい細かいパッセージを、全員がバッと合わせるっていうことをやるバンドで、クラブっぽく自由に聞こえてくるんだけど、実際のプレーを見ると、うわっ、よくこの間(ま)を合わせてるなって驚くくらい、ものすごく難しいことをやってるの。ワンアンドオンリーのすばらしい作曲世界で私も大ファンです。
その彼らのステージは、各国にファンも多いし盛り上がったんだけど、その時一緒に見てた現地の知り合いのデザイナーが、おもしろいことを言った。何を言ったかというと、「彼らはおもしろいけど、フェアじゃない」と。たしかに、クラブミュージック以降の音楽は、DJもそうなんですけど、発信者と受け手という二項対立ではなく、全員でこの場をつくっている。一緒にシェアしていこうといグーグル的な発想を体現している。そういうことを僕たちは共有してきたのに、戻しやがったってことなんだと思う。それは、ナチズムの話にも似ていて、受け手を圧倒する支配的な美って、感動し、ひれ伏しやすいんだよね。私も、その圧倒的なものを見せつけられて、つい感動しちゃった。でも、そういうものを日本人はつくりがち。彼がまた、「日本車の魅力のなさと似てる」と言った。
植島 魅力のなさと?
湯山 シェアだったりコミュニケーションだったり、さっき言ったクラブカルチャー的なものがわからない限り、これからの日本製品は海外でどんどん孤立するって思いますね。ちょっといま、アートの話をしましたけども。
植島 アートの話好きだから、いくらでもいいんですけども、今日は「官能」だから(笑)。
湯山 アートはまた別の話。
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