「ルパンの娘」の原作者に聞く、最新刊『彼女たちの犯罪』の事情
乱歩賞作家、横関大さんの最新刊は『彼女たちの犯罪』は医者の妻、美人のキャリアウーマンなど、一見「幸せそう」な女性たちを主人公した一気読みミステリ。ドラマ化で話題になった「ルパンの娘」の原作者である著者に、”彼女たち”に焦点をあてたミステリについてお話をうかがいました。
Q1 乱歩賞でデビューされてから、様々なタイプのミステリをお書きになっている横関さんですが、今回、女性たちを中心としたミステリを書こうと思われたきっかけを教えてください。
編集者からダークな作品を書いてほしい、とのオファーを受けたからです。ここまで女性ばかりの作品になるとは思ってもいませんでしたが。
Q2 登場する様々なタイプの女性陣が魅力的です。女性の数だけ、パワハラ、セクハラ、不妊や姑問題や、夫の浮気など女性の悩みが溢れていて、それが彼女たちの”犯罪“と繋がる展開が絶妙です。ある種の”女性応援小説”とも感じましたが、女性たちが抱えている社会的問題や悩みについて、横関さんがそれを材料に選ばれた理由や、女性読者に向けて意識されたことなどありましたら教えてください。
やはり女性の発言力というものが、この後ますます増していく時代になっていくものと思われます。この作品は女性に向けて書いたミステリであると同時に、男性読者に関しても「女性あるある」的な小説になっていると個人的には思っています。
Q3「女同士は敵か味方か」といった女性ミステリのスタイルとは違った「女性たちの絡み、関係性」が印象的でした。どのように意識されて書かれましたでしょうか。
やはり僕は男性なので、女性のことはわかりません。男性にとって重要なことでも、女性にとっては些末なことだったり、またその逆もあります。ただ、一応物書きの端くれとして、これまで女性たちを観察してきたつもりです。彼女たちはこんなことを考えているのではないか。こんな行動をとるのではないか。そういうことに想像力を働かせました。
Q4 一人の女性の死体が発見される記事から始まって、女性の心情が彼女たち目線で書かれた一章(「彼女たちの事情」、刑事が事件を追う二章(「彼女たちの嘘」)、真相が明らかになる三章(「彼女たちの秘密」)と物語がどんどん形を変えていく構成は一気読みです。ラストの”おまけ“的でもあるどんでん返しも含めて、ノンストップミステリである今作の構成で一番苦戦されたところはどこでしょうか。
構成は割と初期の段階から決まっていましたが、最後のオチを思いつくまでが苦戦したように思います。第2部ラストのどんでん返しと同等、もしくはそれ以上のものを持っていきたいと思っていたので。
Q5 今作も含め、横関さんといえば「どんでん返し」などめくるめく展開の名手、というイメージがあります。横関さんがミステリを書くにあたって大切にされていること、こだわられていることなど教えていただけますでしょうか。
僕自身はどんでん返しが必須とは思ってはいません。ただできるだけ読者に飽きさせないように、あれこれと手を尽くしているつもりです。影響を受けている作家さんを挙げるのは難しいですが、強いていえば赤川次郎さんの設定の妙は、十代の頃から感心して拝読しておりました。
Q6 最近ではドラマ化された「ルパンの娘」のシリーズが大ヒットです。書店での展開から火がつき、ドラマ化され人気シリーズになったことで、ご自身が感じられたことなどありましたら教えてください。
新規読者の増加に関しては、素直に喜ばしく思っています。ドラマ化情報解禁前から熱く展開していただいた書店の関係者様には感謝しております。ドラマは僕も一視聴者として皆様と同じように、あれこれ突っ込みながら観ていました。非常に楽しい体験ができたと思います。
Q7 今後どんなミステリが書いてみたいなど、これからの執筆活動について教えてください。
夜、「あと一ページでやめておこう」と思いつつ、ページをめくる手が止まらない、そんなミステリを書いていきたいと思っています。
日頃、仕事に家庭に子育てに……とストレスが溜まっている頑張る女性たちにぜひ読んでいただきたい『彼女たちの犯罪』。どんどん続くどんでん返しが気持ちい一気読みミステリで、ストレス発散はいかがでしょうか。(文:編集部)
横関大:
1975年静岡県生まれ。武蔵大学人文学部卒業。2010年『再会(受賞時「再会のタイムカプセル」を改題)で第56回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。著書に『グッバイ・ヒーロー』『チェインギャングは忘れない』『偽りのシスター』『沈黙のエール』『K2 池袋署刑事課神崎・黒木』『スマイルメイカー』『マシュマロ・ナイン』『仮面の君に告ぐ』『いのちの人形』、ドラマ化された『ルパンの娘」や同シリーズの『ルパンの帰還』『ホームズの娘』などがある。
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