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移住サバイバル

2019.12.29 公開 ポスト

終章(後編)

どんな逆境でも生き延びるために必要なこと山本圭一

「50点」の意味

私の移住は成功なのか失敗なのか。

点数をつけるなら、50点といったところだろうか。成功でも失敗でもなく。

「移住観」はいろいろだ。居ついたところでずっと暮らすのが、移住の本来の在り方だと思う人も多い。私も当初はそのように思っていた。

しかし私は、移住した土地を出ていこうと考えている。この地で、私はたしかに貴重な経験をたくさんした。でも、それにしがみつきたくはない。目標を見失った抜け殻のまま生きていくぐらいなら、リスクがあっても、新天地、新事業で挑戦したい。それは私の存在証明なのかもしれない。

 

そして私は幸いにも、また別の地、新たな目標へと向かって進むチャンスを得た。だから50点。進むことも戻ることもできずに停滞するのではなく、前進することができたのだから。

私の移住した三陸沿岸部は、自然が豊かで、仕事も選ばなければそれなりにある。のんびりと生きていくには、とてもよい場所だ。しかし、今の私には、ここで生きていく意味を見つけることができない。隠居生活のような日々を送るのはまだ早い。そう思った瞬間から、心はもう別の場所へと向かっていた。

この3年で2軒の小屋を建てた。僕の力だけで建てた家。台風にも何とか耐えた。

生きる「理由」があればサバイバルできる

この連載では、移住先で生き延びてきた私の考えや経験を、「サバイバル」というテーマでお伝えしてきた。

当初私は、移住したら、そこで最後まで粘り強く生きていくことが正道だと考えていた。しかし移住生活を続ける中で、無目的に生活するのでなく、何かの目標に向かってノビノビと生きていくことが、私にとっての移住なのではないかと思うようになった。

つまり必要なのは、ここで生きていくための「理由」。移住した当初は、漁業に挑戦したり、町おこしのイベントを主催したりと、生きる理由が明確にあった。しかし今はない。

「漁師を辞めて、他の新しいこと、新しい場所へと進んでいきたい。自分の命をもっと世の中の役に立てたい。自分が生きた証を残したい」

妻に正直に話をすると、心が向かう場所へと進むのが、あなたの生き方なんじゃないと言ってくれた。

また一から人間関係を築いたり、苦労をしたりするのなんて嫌だと思う人もいるだろう。だが、私は、ただ生きているだけの存在になることのほうが、ずっと怖い。

私たち夫婦には子どもがいない。子孫という証を未来に残せない分、自分がこの世に生きた証を別のかたちで少しでも残したいと願うのは、決して我儘なことではないと思う。そんなことを夫婦で一晩話し合った。

まだ明かせないが、今挑戦しているプロテイン事業がひと段落したら、人生最後のミッションに取り組んでみたいとも考えている。

関連書籍

山本ケイイチ『仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか』

いま体を鍛えるビジネスマンが急増中。経営者や金融マン、クリエイターなど、常に成果を求められる人ほど、トレーニングに時間とお金を投資している。筋肉を鍛え維持することは、もはや英語やITにも匹敵するビジネススキルなのだ。本書では「直感力・集中力が高まる」「精神がタフになる」など、筋トレがメンタル面に大きな変化をもたらすメカニズムを解説。続けるための工夫、効果を高める食事・睡眠、ジムの活用法など、独自のノウハウも満載した画期的トレーニング論。

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移住サバイバル

東日本大震災を機に宮城県石巻市に移住した山本圭一さん。家なし、知り合いなし、文字通りゼロから始まったサバイバル生活の記録。

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山本圭一

()プロテイン工房代表。中学生時代に独学で筋トレを始め、高校で本格的な筋トレと禅に取り組む。 高校卒業後はトレーニングを極めるべく自衛隊に入隊。初級偵察教育では隊長賞を受賞。 その後フィットネス業界に転身し、パーソナルトレーナーとして独立。独自のトレーニングメソッドがビジネスマンや経営者に支持され、予約のとれないトレーナーになる。2008  5 月に『仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか』を出版。13 万部を超えるベストセラーに(その他著書多数)。 また企業フィットネスのアドバイスやジム経営、フィットネス通販事業なども手掛ける。2011 年からは、鍛錬家を名乗り活動を開始。 トレーニングを「心を磨く」行為として捉え、体づくりと社会貢献についてセミナーなども行う(個人活動として勧善道場を主催)。同年、東日本大震災の直後から、宮城県石巻市雄勝町にて炊き出しや学習支援を行ったことをきっかけに移住。漁業をしながら新しい街づくりに奔走する。地域PRのために主催してきた「三陸・雄勝 海の幸トレイルランニング」(20112018)を業界でも有数の大会に成長させた。2018年に小ロット対応のプロテインOEMメーカー「プロテイン工房」を設立し、フィットネス消費よる社会貢献の拡充を目指す。

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