すべてが次につながる
もちろん、この移住生活が無駄だったなどと言うつもりはない。震災のタイミングで流れついた私に、家族のように接してくれた心優しい地元の方々。多くの善意ある人に支えられて私は生き延びてこられた。人は一人では生きていけない。
多くのことを経験し学び、仲間ができた。
夜空に輝く満点の星空。
地球を目覚めさせる力強い朝日。
何時間もの労働の後に食べるカップヌードルのうまさ。
凍えて帰ってきたときに感じる家の温もり。
自然は打ち勝つものではなく、受け入れ調和するもの。
飾る必要はない、今の自分で勝負しろ。
余計な説明はいらない、単刀直入でいい。
事実を正確に観察すること。
作業は無駄なく迅速かつ正確に。
待つことの大切さ。
自分が納得するまでやること。
人を許すこと。
仲間を信じること。
思いはきっと伝わること。
津波で浸水した廃墟を直して暮らしていた3年間、毎日風呂を貸してくれた地元の気のいいトラック乗りの青年。彼も被災して窮屈な仮設暮らしだったのに、家族のように接してくれた。私は彼を地元一の親友と思っている。
震災関連の情報発信やイベントで使うウェブサイトなどを、震災後からずっと無償で作り続けてくれた東京の仲間。今もプロテイン事業でお世話になっている。
まったくのド素人の私を見捨てず面倒をみてくれた漁師のおじいさんと親方、そして先輩方。漁業を通じて、体を鍛え、直感を磨き、考えるよりも体が反応できるようになった。きっとこの力は他の場に行っても役に立つと思う。ここまで育ててくれて感謝の言葉しかない。
被災地という特殊な場所で開催してきた海の幸トレラン。たくさんの方々に支えられ、人の優しさ、チームの強さを知り、また全国の方々とつながることができた。海の幸トレランは終了したが、今は石巻登山マラソンという大会に名を変え、その血脈は生きている。
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移住サバイバル
東日本大震災を機に宮城県石巻市に移住した山本圭一さん。家なし、知り合いなし、文字通りゼロから始まったサバイバル生活の記録。